テーマ性
人の身でありながら縁結びの神となり奮闘する主人公の恋愛やら何やらが起きる物語。
主人公に神としての役目を与えた先代の神は、主人公が人だからこそ出来る・理解出来ることがあり、それが主人公の強みであると物語中に言ったのが非常に印象に残っている。
神話などで語られる神とは日本だけでなく世界のどの国でも大体気まぐれで人とは感性が異なっています。つまり根本的に神が人をきちんと理解することはない(恐らくするつもりもない)のだと世のほとんどの人は前提としており、そのため神と人をテーマにした漫画の多くでこの問題は取り上げられています。上記の台詞はそんな問題にしっかりと触れたもので、絶対の正解のないこの問題に作者がどんな答えを提示するのか非常に期待しました。
その後、主人公が(私情混じりながらも)人と妖怪のカップルを応援する時や、そのカップルに横槍を入れる妖怪に(成り行き上)思い遣りを教える時に「人の身でありながら神である」ことの強みを発揮していく姿が見られたのですが……現在終盤に差し掛かったこの漫画、「人の身でありながら神である強み」という一つのテーマが「人と妖怪という寿命の違う生き物同士の恋愛」というテーマに完全に押し潰されていると感じました。
主人公が「人の身でありながら神である強み」を発揮したのは人と妖怪のカップルを応援する時と、当初から姿をちらちら見せていた主人公の「お相手妖怪」の「因縁の相手」の時のみと言ってもいいです。「因縁の相手」との問題が解消した現在、主人公は神としての役目を放棄しようとしています。どうやら私が一番印象に残っていた先代の神の台詞はただの踏み台だったようです。人の身でありながら神であるということへの悩みも左程なく、作中で取り上げられるのは「お相手妖怪」との寿命の差ばかり。残念ながら、「絶対の正解のない問題」への答えは見られないお話だと感じました。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)