使いこまれた物語を上手に活かしてある - 7月の魔法使いの感想

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7月の魔法使い

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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使いこまれた物語を上手に活かしてある

3.53.5
画力
5.0
ストーリー
3.0
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
3.0

目次

魔法をかけられたい!「7月の魔法使い」

短編集ですが、なんて雰囲気のある絵でしょうか。寺田くんの髪結いとメイク技術が優秀すぎてすごいです。きっとみんなに広められたら、私も私もと言いながら、みんな列を作ってメイクしてもらって、髪を結ってもらえそう。寺田くんはくたくたになっちゃいそうですが、学園祭のテントで女の子向けにメイク教室開いてほしいです。女の子は誰でもかわいくなれるんだよ。誰でもシンデレラなんだよって言ってもらっているみたいです。だから勇気を捨てないで、少しでも前に進んでねと後押しをしてもらっている漫画です。田中メカさんの漫画は、少しのアイディアで普通の日常を取り入れてお話を作るのが上手です。「お迎えです。」「天然パールピンク」でも活かされています。現実的にはなさそうな日常ですが、それはそれで素敵です。寺田くんに会わなかったら、日向花織さんは違う方向に無駄に突っ走っていたなぁと思います。どうしたら、効率よく自分がきれいになれるのか、一瞬にして見抜く瞳にはすごいものを感じます。途中でちゃんと魔法使いに惹かれた理由もあって、風がマニキュアの塗り方の教本を飛ばしてしまったときにすごい高さをジャンプして取ってくれた彼。それまでにも勉強を教える名目で会ったり、きれいになるための交換条件で少しずつ惹かれあっていったのでしょう。レン様のためにきれいになったのに、いつか気持ちが入れ替わっていることにぎりぎりまで気がつかない彼女にハラハラさせられます。王子様ではなく、自分を美しくしてくれた魔法使いに恋をする。シンデレラでは、王子様はこちらから会いにいかないと来てくれないけど、魔法使いは心やさしい娘のもとに来てくれるんです。まさしくこの漫画の魔法使いも心やさしいけど、不器用な娘のために(偶然ですが・・・)、来てくれるシーンはシンデレラのストーリーと重なります。上手にシンデレラのストーリーと重ね合わせて、最後には王子様とではなく、魔法使いと着地させてくれました。プリティウーマンやエバー・アフターなど映画でも漫画でもシンデレラのアイディアは使われ、もうシンデレラでアイディアはでないでしょうと思っているところに田中メカさんです!うーん。まだまだ使えるのかも?

やっぱりかっこいい「王子様11月のユウウツ」

7月の魔法使いでも活躍するレン様の物語です。「バカだね。そこでグッと抱きしめちゃえばいーじゃん」って言っていた彼。なぜか憎めない存在だなと思っていたら!きました!主役の座がきましたよ~。前回も王子役だったはずなのに魔法使いにお姫様をかっさらわれたあのレン様です。前回は行いが悪かったわけですけど、今回も悪い王子全快です。やっぱりおとぎ話から塔に閉じ込められているお姫様といえば、ラプンツェル。今度はお姫さまではなく、魔女が主役。自分で塔に閉じこもった魔女の設定ですね。それを王子が扉をこじ開けるお話。ラストでレン様が悪い生徒になる場面で、獣だ!きゃーっ!先生をも襲ってる!禁断設定にうきゃーでした。レン様はどの男子よりも美しくちゃんと描いてあります。人の心がどう動くのかを計算して動いている男です。嫌な奴のはずなのに、今の彼になってしまった過程も描いてあるので、最初の彼女でてこーい!縛り上げてやる!と言いたくなるほど、彼は人の心に敏感な人です。小説とかよく読むだろうと予想します。人の心を先に察するには、やはりそれなりの量の小説とか読んでいると、結構敏感になってきます。感覚が鋭くなってきます。人の心のなかが読めるとまではいかなくても予想できるのです。そうなると、空気がちゃんと読める人になります。レン様は、レン様のイメージのままに振る舞って動いていたら、今の軽薄な彼ができてしまった。その過程も短いながら描かれていて、同じ年齢の女子では本当の彼の姿を発見することはできなかったかもしれない。年齢を重ねた先生だからこそ、彼の痛みがわかったのかもしれないと思いました。

男前すぎる不器用な女の子「10月の女王と僕」

男前な女の子のお話。メンタル強すぎる!すごい。こんな女の子になりたかった!憧れてしまうほどの精神面の強さ、きっとお姉さまたち、いちか、ふたば、みつば3名にすごい遊ばされ方した結果、強い女の子になった。そんな感じの子です。すぐ下は男の子で、元気いっぱいな弟に振り回されたのではないかなと思います。でも、女王と呼ばれるだけあって、美脚です。新体操やっているから、ほどよく筋肉がついていて、だからきれいなんだろうなと余計な邪念が入ってしまうほどの美脚です。その辺りもちゃんと描き分けられているのがすごいです。短編集ってある意味で結構大変な部分があると思います。描き分けの問題とか、別々のストーリーを考えなきゃいけないとか。連載もので、一度世のなかに出したキャラクターをまた描くのなら、細かい設定は決まっているので楽とまではいかないけど、ストーリーを考えるだけで済む。だけど、キャラクター、ストーリーも同時進行で進めないといけないとなると、かなりしんどい気がします。短編集は物語が途切れる感じがして、嫌いな人もいると思います。それに関連性をつけて、次々に読ませるのも技術がいると思います。それをやってのけるのが田中メカさんです。連載も短編も楽しみな漫画家さんです。

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