呪われた財宝に翻弄される登場人物たち
トーリン・オーケンシールド
王の石である「アーケン石」を探すために飲まず食わずで、城の地下にこもっています。ドラゴンが長い間財宝を抱えていたため、財宝も呪われているようで、トーリンはすっかり人が変わってしまいます。先代のスライン王もこの「アーケン石」への所有欲のために政治を狂わせたようです。いくら探しても見つからない「アーケン石」に、手に入れる前から執着心が強いトーリンですが、次第に仲間たちの心も離れていきます。ビルボに「アーケン石」が見つかったら落ち着くのだろうかと相談されたバーリンには余計に執着はひどくなるため、このまま見つからない方がいいとまで言われてしまいます。援助してくれたら財宝をわけると約束した人間たちにも、「金貨一枚わける気はない」と言い放つ状態です。それでもビルボに対する信頼はまだ少しは残っていたらしく、仲間の中に裏切者がいて「アーケン石」を盗んだと思っていると自分の気持ちを打ち明けたりしています。そのビルボに対しても「アーケン石」を盗んだ裏切り者として城から落そうとし、ガンダルフの怒りをかってしまいます。
しかし、次第に離れていく仲間に以前自分が言っていた言葉が蘇ります「先代とは違う」。また自分が不意に口にした言葉も「オーケンシールドではない」。その言葉たちが呪いを解くカギになったように「アーケン石」と財宝の呪いに打ち勝ちます。そして自分が加勢にと頼んだいとこのダインがオーク軍におされているなか、門を壊し参戦していきます。最後は宿敵アゾクと相打ちになる形で死んでしまいますが、トーリンは最後の最後でビルボに対し山でのことを謝罪できたこと・呪いに打ち勝ちドワーフの誇りを守れたことで思いを果たせたようでした。
調子のいい腰ぎんちゃくアルフリド
ここまで権力に弱く、お金にきたなく、弱いものには威張るといったわかりやすいキャラクターもないでしょう。統領に捨てられたあと町の人には、町を捨てないでと懇願したのに聞いてもらえなかったなどとわかりやすい嘘を言い、統領だけを悪者にして町の人に寝返ります。バルドからは夜警を、ガンダルフからはビルボを見張るように命じられますが、エルフの軍勢に囲まれていたり、ビルボには逃げられたりと見張りにも役立ちません。最初ガンダルフを浮浪者と間違えて暴言を吐く始末です。バルドからオークとの戦いのときに、女・子ども・老人を教会に逃がしたら戦いに戻ってこいと言われても、女装して隠れています。女たちも戦おうと武器を持ったときは、金貨の壷を見つけ下着に詰め込んで持ち逃げします。アルフリドは最初から最後までクズ役のままでした。
「闇の森のエルフ」の王スランドゥイル
「裂け谷のエルフ」とは違い、財宝や権力に弱いエルフです。エルフといえば(勝手な想像ですが)欲にはあまり縁のない種族のように思えますが、スランドゥイルは財宝のためだったら戦も仕掛けます。一番の目当ては「白い財宝」で、先代のドワーフ王スライリンと争うもととなった品です。スランドゥイルは妻のためにこの品をドワーフに作らせましたが、財宝に目がくらんだスライリンが渡さなかったため争いとなったようです。
オーク軍が「はなれ山」についたとき、オークと戦おうとするダインの軍に加勢しようとしませんでした。それはトーリンの加勢に来たダイン軍がオークにやられてしまったら、トーリンの加勢軍がいなくなると思ったからでしょうか。結局協力して戦うことになりますが、たくさんのエルフが犠牲となり撤退することを決めます。
財宝に惑わされないもの
ガンダルフは「はなれ山」の財宝は近くにいるものに対し強い執着心を抱かせる呪いがかかっていると言っています。しかし、ビルボやほかのドワーフ、バルドにはそれは効かないようです。ビルボはホビット族ということもあり、もともと財宝等に執着が薄いようです。王の石である「アーケン石」を持っていても、惑わされないのはやはりホビットだからなのでしょうか。ほかのドワーフはあれだけ執着心をあらわにしたトーリンをみて、ひいてしまう気持ちの方が強かったのでしょうか?そのため財宝に執着する気が失せたのかもしれません。バルドは金貨は欲しいと思っていましたが、金貨などの財宝に呪いがかかっていることは十分承知していました。そのため町を再建する分だけの宝を分けてくれればいいと思っていたようです。
このようにいくら呪いがかかっていたとしても、強い意志などを持っていればその魅力にはとりつかれないようです。現にトーリンは自力でこの呪いを解いています。ビルボとバルドに関しては争い事をしたくないという気持ちが勝っていたようです。ビルボはもっていた「アーケン石」をスランドゥイルとバルドに渡し、これを返す代わりに財宝の分け前をもらいたいといえば財宝をわけてくれるだろうと言っていましたが、みごとに裏切られます。バルドもドワーフに財宝を分けるよう説得するので戦いを待つようにいいますが、トーリンとの交渉は決裂してしまいました。このときのトーリンは執着という呪いの方が勝っていて、財宝を分けるなんて考えは少しもなかったのでしょう。
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