あまりにも大人び過ぎた謎のラスト
「ベルばら」で有名な池田理代子先生の手によるこの作品。
超絶に華麗な絵柄と中身の濃いストーリーで数十年前に描かれたとは思えない程瑞々しい魅力に満ちている。
しかし、そんな華麗なストーリーを展開したにも関わらず、あの物悲しいラストは何なのだろう?
薫の君と“おにいさま”が結ばれ皆に祝福されながらドイツに旅立つ。
そこで終ればハッピーエンドなのだが数年後、薫の君の訃報が届く。
そしてここで謎のモノローグが登場する。
「おにいさまへ手紙を書きました……手紙を……書きました」
韻を踏んでいるのがまた思わせ振りで、単なる薫の君への悔やみの言葉を綴った手紙にしても、何か含みがあるように思えて仕方がない。
文尾を2回繰り返すモノローグは作者の他の作品でも見られるが、これ程心に引っ掛かったものはない。
そしてこのモノローグが作品冒頭のモノローグと被り、そこに書いてある心情とは全くの別の“想い”を想像してしまうのは私だけだろうか?
「あれは、恋ではなかったのです」
そう力説する主人公だが、薫の君を失った“おにいさま”へ押さえ付けていた想いを綴った手紙を送ったのではないだろうか?
とも取れる。
そう考えると、この物悲しいラストもある意味ハッピーエンドになるのだろう。
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