肩の力を抜いてぇ~、気ラクぅ~に読みませう - 誰も寝てはならぬの感想

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誰も寝てはならぬ

3.503.50
画力
2.50
ストーリー
3.00
キャラクター
3.50
設定
3.00
演出
3.50
感想数
1
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1

肩の力を抜いてぇ~、気ラクぅ~に読みませう

3.53.5
画力
2.5
ストーリー
3.0
キャラクター
3.5
設定
3.0
演出
3.5

目次

歌劇ではありませぬ

「誰も寝てはならぬ」 はい、プッチーニの歌劇の有名なアリアですね。この作品になぜこのタイトルた付けられたのかは謎です。だって東京のとあるデザイン事務所に勤務するおっさん達の、エッセイ風日常漫画なんですから。

どうやらデザイン業界出身らしいこの作家さん、初めて読んだ「水玉生活」というエッセイ形式の漫画は、青年誌掲載ながらファッション誌に掲載されても遜色ないものでした。次いで水玉生活の雑多な登場人物を絞って設定を加え、きちんとコマ割りし吹き出し台詞をつけて、ストーリー漫画として出されたのが「大阪豆ゴハン」(これも大好きでした)。フィクションとのことでしたが、あの濃い~いキャラクター達それぞれには、明らかにモデルがいたんじゃないかと思っています。

一貫して大阪と大阪人を中心に描いた作品から気分一新、今度は舞台を東京のビジネス街・赤坂に移し、登場人物も新たに設定して連載されたのが今回の作品です。なのに物語の中心舞台となる「デザイン事務所・オフィス寺」から漂うコッテコテの大阪臭が台無しにしてんですよね(^^;) 拭い去ろうにも拭えない、いや、きっと拭う気がないこの空気、メイン主人公が大阪出身ということだから仕方ないでしょう。明言されてませんが作者さん、やはり大阪に生まれ育った方なんじゃないかしら。

シリアス漫画ではありませぬ

オフィス寺の経営方針はそれで会社倒れんのかいっ、と突っこみたくなるくらいに適当です。女グセが悪く離婚歴複数の経営者ゴロちゃんを筆頭に、大阪時代の幼馴染でイラストレーターのハルキちゃんも離婚歴あり。甘いマスクで若いころはブイブイ言わせていたようですが、ややくたびれた今では飼い猫の利休之助を愛する独り者の残念なおっさんです。この二人と同年輩のもう一人のデザイナー、ヒゲ生やらかしたヤーマダ君もやはりバツ一。しかもその年齢で実家住まいのためニート呼ばわりされるような風貌。平社員扱いの下っ端スタッフ・マキオちゃんは作風も性格も暗く、おっさん達から雑に扱われる不憫な性格。とにかくダメ男の集会所みたいな状態ながら、超有名ではないまでもそこそこデザイン業界で実績を残しているらしい描写はあるんですよね。いい加減な仕事っぷりから才能の持ち腐れな印象もありますが。

作中で大きなドラマは発生しません。むしろ日常的なダベりの延長で物語は進みます。所謂あるあるネタを盛り込んで、肩の凝らないユーモアたっぷりのエピソードが進行する技法は、水玉生活、大阪豆ゴハンからの延長線上にあるといえるでしょう。スケッチ風に描かれた登場人物は外国人寄りのルックスなのですが、これは実在のモータースポーツ選手や外国人アーティストをモデルにしているからで、名前もアテ字にして拝借されています。作者本人の個人的趣味てんこ盛りながら、独りよがりにはならず遊び心もたっぷりで、クスクスニヤニヤしながらストレスなしに楽しめるんですよ。

独身男ひしめくオフィス寺ですが、なにげに女性の出入りは多いのです。ハルキの親戚で姉御分の頼子さんは差し入れを持ってくるし、不定期に押し掛ける元アルバイトの猛者(笑)・大塩さんは、庭木と勝手に作った菜園の世話。お天気お姉さんとしてTV出演もする気象予報士・岡野さんもハルキとのちょっとした縁で。ゴロちゃん関係では取引相手として出入りする元妻・平井さん(蛇蝎の如く元夫を嫌ってますが)。街で引っ掛け…スカウトした寧々・巴姉妹は成り行きでアルバイト採用。でも長髪美人に節操のないゴロちゃんとはいえ、幽霊まで落とさせようとしたのはやり過ぎですわよ(-_-;)

オフィス外でもハルキ達の出身大学の先輩だった佐伯さんや、怪しい会員制書店主の下矢凪さんの姪っこさん等など、やたら美人が登場しますね。しかしなにしろオフィス寺のおっさん連中、優柔不断で気が多く、年齢的にも枯れ始めているせいかなかなかベタな恋愛には発展しません。いやいや、これ以上女の敵・ゴロちゃんの被害者を出してはいけませんな(-ω-)

大団円ではありませぬが…

登場人物は家柄が良かったり成功した実業家設定が多く、セレブに片足突っこんだような暮らしぶりはちょいと羨ましい。反面ブラックな表現も多いですが、ベタさがありながらクドくはなく、むしろ独特のユーモアセンスに包んでサラっと演出されています。オフィス寺設立メンバーに逃げられた話や左翼思想家で現在も公安から監視されてる下矢凪さんの武勇伝、過去作には大麻栽培で逮捕者もいましたねぇ(^-^; ちょくちょく挟まれるダークなネタさえなにやら笑えるほのぼのエピソードに転嫁されてしまう、そういう作風が支持されて、気が付けば8年くらい連載されていたんですよね。

最終話ではそれまで決着つかなかったおっさん達の恋愛模様に、やや方向性が付けられた形で綺麗に締められました。ハルキはオカちゃんといい感じになりそうだし、ヤーマダ君はなにやら佐伯さんと進展あり?いやこれは何かの間違いでしょう。マキオちゃんも巴ちゃんにちょっとだけ構ってもらえるようになった様子(ま、進展するかはともかく)。とかく男運のなかった寧々ちゃんはやっと相愛の相手をゲットした模様。登場人物それぞれに良い兆しが現れるという納め方は読後感が大変良いですね。え?ゴロちゃん? あのおっさんのことはどうでもいいんですよ。


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