男の目線、思考回路 - いとしのニーナの感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,135件

いとしのニーナ

4.004.00
画力
4.25
ストーリー
4.25
キャラクター
4.00
設定
4.50
演出
4.00
感想数
2
読んだ人
2

男の目線、思考回路

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

男の根底を見てしまった感

一番最初に手にしたときは、一巻で挫折しました。あまりにも不快だったので。ひとの親切心を仇で返すし、何よりも男の力で女をどうにかしようとする最初の設定でアウトでした。吐き気がする。いくえみ作品で初めて心の底から憎みましたね。よくもこんなものを手に取らせたな、と。その頃私はいろいろあってか、少し男性恐怖症のようになっていて男性が苦手でした。だから余計に、どうしても勝てないという弱いところをついて男が女を支配しようとする始まりに嫌悪感が生まれたのだと思います。男性が皆一様に同じことをするとは思いませんが、しようと思えばできてしまう能力差が怖かったです。自分が女で生まれたことを呪いました。自分でも呆れるくらい自意識過剰ですが、でもそれも作品の世界に入り込みすぎてしまう癖のせいでしょう。物語の始まりで、我が身に降りかかったような恐怖心が生まれてしまったために、私は続きを読むことができなくなりました。

スーパーマリオ

数年のときを経て、私は最後まで読むことができるようになったわけでありますが、でもやはり不快感は大小あれど抱きました。

そして、どうしたら思いつくのだろう、どうしたらそんなにも異性の感情を描けるのだろうと思いました。3人の男子高校生のそれぞれの愛情表現が屈折していたり、歪んでいたり、面白いくらい真っ直ぐだったり、ひとりの女子高生に対して恋情を燃やします。拉致監禁したマサ、その状況からニーナを助けたあっつ、暴力で他人を支配する牛島。結果はヒーローポジションを掴んだあっつ。一瞬クッパにさらわれたピーチ姫をマリオが助ける映像が頭の中に流れました。そうであったなら良かったのにと思います。状況があり得そうだから、リアルだから、そして高校生という時期だから、余計に生々しく恐ろしく、どう最後を迎えるのさ、と読んでいて落ち着かなかったです。

男の人はこんなにも素直に、短時間で気持ちの切り替えができるのか、と男性の思考回路の一つの例として読みました。惚れた弱みもありますし、何よりニーナの負った傷を丁寧に癒そうとするあっつの姿は好感が持てました。男らしい許容もあって、男同士の喧嘩もして、ぼろぼろにやられても自分の姿勢を変えない。友人だと思っていたマサに友人じゃ無いと貶められても助けちゃう。あっつのヘタレながらに優しさ溢れる青年像はとても好きです。男の子は喧嘩してなんぼ、というイメージが勝手にあるため、こんなに殴り合うものなのかと不思議ですが、きっと見えないだけで実際は日常にあるんでしょうね。主人の話を聞いても、喧嘩したことは何度もあると言っていましたし、男の子の世界は女とは違うタフさが無いと生き抜けないな、と思いました。何度も失敗してやられても、いつかスターを見つけて無敵になることもあるのかな。男の世界に力が必要なのだとわかりました。でも、それを女に向けることに、殺意に近い憎悪の念を抱きます。私は山田さんの意見に一票を投じます。

高2と高3の違い

最終話で一気に高校2年生から3年生のクリスマスまで時が経つのですが、あっつの携帯を握りしめる横顔がイケメンすぎて、どきっとしました。高校2年生と3年生でこうも顔つきが変わるのかと、いくえみ男子登場に最終話でときめきを覚えました。ニーナは一つ歳が上なので短大へ進学するのですが、あっつは大学へ行くんでしょうか?高校3年生のクリスマスだとまだ受験は終わっていないですよね。推薦だとわかりませんが。今後復縁するかのような終わり方だったので、その気持ちが実るといいなあと見守る気持ちで本を閉じました。

きっと初めから合コンや普通に出会うことができれば別れることもなかったのでしょうけど、でも事件があったからこそニーナはあっつを必要とし、あっつはニーナに必死になったんだと思うので、一度白紙に戻して再度、という結末には納得がいきました。ハッピーエンドを書ききらないあたりがいい演出だなあと、読者の想像を駆り立てるいいシーンだったと思います。高校生という多感な時期に、あれほどの事件に巻き込まれれば嫌でも強烈な刺激を受けるでしょう。幸い、ニーナにトラウマは残らなかったのですが、あっつとの恋は随分と色の濃い思い出として記憶に残っていると思います。ポーカーフェースのニーナさんなので何を今どれくらい思っているか読み取れません。そこがまた可愛らしいのですが、最終話でもやはり表情一つ変えず合コンで再会したあっつと言葉を交わします。そして、一年経って大学へ進んでも連絡先を消していなかったあたり、自分の気持ちの整理をつけたかったのかな、とも思いました。こんな出来事があったせいで錯覚しているのでは無いか、本当は好きではないんじゃないか。自問自答を繰り返すうちに自分にまっすぐ向かってくるあっつに対して少なからず罪悪感は持っていたと思います。堂々と振り回して自由奔放に付き合えるほどしたたかではないニーナは、あっつを大事にしてあげたかったんだと思います。でも、記憶が邪魔をして、する気はないのに八つ当たりをしてしまったり振り回して、自分のせいで疲弊していくあっつも、そうさせてしまっている自分にも疲れたんだと私は思いたいです。

心が優しいからこそ2人は別れ、お互いが少し大人になることで落ち着いて相手のことを見れる。そういう時期を待っていたんだと思います。それが、巡り巡って高校3年生になったあっつとの再会を実現させたんだと私は信じます。幸せになってほしいです。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

関連するタグ

いとしのニーナを読んだ人はこんな漫画も読んでいます

いとしのニーナが好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ