現代人よ見よ、最低ないい加減さと最高に自由な魂を持つヒデヨシの強さを。
作者のますむらひろしが長年描いているライフワークのような作品がアタゴオルシリーズで、この「ギルドマ」はそのサイドストーリーのような位置づけにあります。とてつもなくいい加減で強欲で最低だけど最高に自由な猫の「ヒデヨシ」が主人公です。ギルドマジャングルに起きた異変(それも世界が破滅するかもしれないような!)をヒデヨシが持ち前の自由な精神・生き方で解決するというか解決させる方向に進んじゃう、というお話です。
ますむら漫画を読んでいると、常にそこに描かれているテーマの一つは「精神の自由さと強さ」だと感じます。アタゴオルシリーズもそうですが、ヒデヨシを描くことこそがライフワークになっていると思います。ギルドマでもヒデヨシの自由な様子が存分に描かれています。
ヒデヨシの生き方や考えは捉えようによってはいい加減極まりない面があります。しかし、他人の考えや常識の枠組みに囚われないその自由な姿は、社会の規律の中で生きることを選びつつも自分の価値を十分に認めることができない現代人にとっては、憧れにも近い思いを抱かされます。「生きているといつの間にか、たいていの奴は今をきざむ時刻しか持てなくなってしまう」「規律の外に出るってことは怖いことなんだよ。規律の中に入っていれば『自分』などなくてもいいから」といった作中のセリフにも作者の思いが表れています。
世界を揺るがす悪者が現れても、ヒデヨシは悪者に取り入ろうとしたり、悪者が罠として作り出した大好物を食べ逃すことに泣いたりします。周りのキャラクターも読者もそんなヒデヨシに時々(しょっちゅう)困惑させられながらも、ヒデヨシが自由に生きトコトン生きることを楽しんでいる姿に、他にはない強さや輝きを見出すのです。そして、悪者が抱く世界への憎しみに打ち勝つものは、ヒデヨシが持ち続ける生きる喜びや微笑みの中にしかなく、それがギルドマを救うというエンディングに最後にホロリとさせられます。
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