苦しんで生きている私達に、生きる意味を問う異色の名作ドラマ - それでも、生きてゆくの感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

それでも、生きてゆく

4.674.67
映像
4.67
脚本
4.50
キャスト
5.00
音楽
4.33
演出
4.17
感想数
3
観た人
5

苦しんで生きている私達に、生きる意味を問う異色の名作ドラマ

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

ドラマ「それでも、生きてゆく」は、ドラマ上の架空のある少年事件の被害者家族と加害者家族の姿を描いたドラマである。少年Aの妹と、少年Aに自分の妹を殺された兄を中心に描かれていく。「少年A」が中学生時代に、小学生の女児を殺害した・・・という設定は、1990年代に神戸で起きた児童殺傷事件を彷彿とさせる。実際の少年Aには、男兄弟が2人いたそうだが、このドラマの設定では、男兄弟でなく、満島ひかり演じる妹を加害者家族の中心に描くことで、実際の事件から少し距離が取れていて、見ていてそれほど殺伐とした思いにはならなかった。

このドラマの何が秀逸かというと、この重いテーマを取り上げてドラマ化してくれたフジテレビと協賛しているCMの会社に、まず賛辞を送りたい。テーマ自体が重すぎると、なかなかドラマ化が難しいところがあるが、よく許可を下してくれたなフジテレビ!といった思いである。

そのテーマの重さに引きずられて沈むパターンもあるだろうが、そこは名脚本家・坂元裕二が、最後まで視聴者を引き付けて離さないドラマ構成がなされている。

そして、何といっても、主演の瑛太と満島ひかり、2人の本気の演技が、本当に良い。またその脇を固める役者も、いい役者を揃えてきている。被害者家族の父親に、時任三郎、母親に風吹ジュン、加害者家族の父親に柄本明、母親に大竹しのぶ。これだけ名わき役が揃ったことに対しても拍手を送りたい。そして少年A役の風間俊介も難しい役どころを、語りすぎることない演技で表現していて、違和感なく見ることができた。

最後は、結ばれることのない加害者家族の満島ひかりと、被害者家族の瑛太だが、被害者家族と加害者家族、周囲からの目線は全く違うものの、実は同じ船に乗っているようなもので、心境は似ているのではないか・・・という表現がされているところも、ハッとさせられるところがある。

私は、自分が苦しい状況に置かれているときに、このドラマを見たが、こんな風に苦しんでいる人も世の中にはいるのだ・・・と知ることで、何か、自分が生きていく支えになったことを思い出す。視聴者に、ただ単なる希望とか、そんなものではない、少しの生きる力を与えてくれる、そんな、不思議な魅力をもった、異色の名作ドラマだと思う。


あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

恋愛感情のリアル

被害者側と加害者側とこの物語は被害者の兄である洋貴と加害者の妹である双葉を中心に展開されますが、二人が出会ってからしばらくは、被害者家族としての悲しみと、以前の友人だった加害者への憎しみを抱えながら生きている洋貴が、加害者家族としての懺悔の念は少なからず感じるものの、「お兄ちゃん!」と呼びながらあくまでも兄、文哉の味方でい続けようとする双葉に対して煮え切らない思いを感じ、時折それをぶつけたりしながら進みます。ですが次第にそれが一人の異性としての視点に変わっていったのは、双葉自身深い苦しみを抱えながら必死に生きているということが伝わってきたからではないでしょうか。洋貴の母親の響子も、自分達と同じ様に苦しみを抱える加害者家族に対して次第に許しの感情を抱く様になっていきます。しかしどうやら、当の文哉本人だけはその苦しみを共有していないようです。それにより、洋貴の中で、vs加害者側から、vs文哉 に...この感想を読む

4.54.5
  • のぶさんのぶさん
  • 222view
  • 2008文字
PICKUP

社会問題

加害者と被害者家族の話です。昔起きた、子供を殺害した事件の犯人家族に満島ひかりさん。被害者家族に瑛太さん。被害者家族は、突然殺害された家族の無念を忘れず生きてきた。犯人は少年であったため、少年法に守られ、数年の少年院生活だけで既に社会復帰している。加害家族も事件の事がバレると引越しを繰り返して細細と生きてきた。偶然、お互いの境遇も分からないまま、2人は出会う。何もも知らない2人は、交流していくうちにお互いを意識し始めていく。遠く離れた土地で社会復帰して働いてたいた元少年。たまたま事件の事が、雇われる先の人達にバレてしまい新たな犠牲者が。。。キャスティングがいいです。実力派女優の満島ひかりさんはもちろん、犯人の元少年役の風間俊介さんの演技は素晴らしい。別ドラマで演じていた心が壊れたら年を思いだしました。風間さんは歳取るごとにいい俳優さんになってると思う。満島ひかりさんは、様々な映画やドラ...この感想を読む

4.54.5
  • まいぴんまいぴん
  • 206view
  • 532文字

関連するタグ

それでも、生きてゆくを観た人はこんなドラマも観ています

それでも、生きてゆくが好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ