コレラの時代の愛の評価
コレラの時代の愛の感想
道理を踏み抜く愛
諦めない、ということは果たして正しいことなのか。ましてや、人に愛される事を諦めないということは。一人の男の人生が、一人の女性を愛することのみに使われた。空回り、空回りを続け、ただ一人、愛した美しい女が歳を重ねていく様を覗き見る事に男は一生を捧げた。無為と情熱の狭間で人生を紡いだ男は只々機会を待ち続けた。常識では終わった筈の愛を、取り戻し様の無い愛を抱き、男は歳を重ねた。人生の黄昏時、機会は訪れ、狂人にも似た情熱で男は愛を語った。驚いた事に、愛は受け入れられる。本来に於いて、愛し合うべき二人だったのだ。ラストシーン、行き場の無い船と周囲の理解を得られそうもない愛を重ね、行けるところまで行くのだと吐き捨てる男。実に感動的な小説である。