死にまみれながら時を止めない少年たち
エティエンヌに率いられ結成された少年十字軍の子供たちには、希望と純真に満ちている。物語には、しかし冒頭から断片的に彼らを待ち受ける過酷な運命と無惨な結末が垣間見える。盗賊と闘って命を落としたルークから凄惨な運命は始まる。テンプル騎士団の企み、ギヨームらの脱退、ミカエルの裏切りといった出来事が次々と起こる中で、イザベルやコレットなど、かれらを敬服し愛する者たちとの出会いも描かれる。少年たちはただ同じ方向をみて旅をしていたわけではない。武勲をあげるためにエルサレムをひたすら目指した子供もいれば、周りの子に合わせるようにしてぼんやりと進路を決めた子供もいる。神の子エティエンヌはどうだっただろう。彼には、心優しく信仰心の強いという面があるが、自らが強く発起してエルサレムを目指したわけではないように思える。それゆえに、仲間の死や大人からの裏切りを受けて彼は大きく揺れる。気持ちにブレが生まれる。自...この感想を読む
4.54.5