僕は"普通"とは違う だから隠さなければならない
神山樹
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GOTHは、作家乙一の小説を、漫画家の大岩ケンヂがコミックス化した作品である。小説版は、「夜の章」「僕の章」「モリノヨル」の三冊が刊行されているが、漫画版ではこの中から「リストカット事件」「暗黒系」「土」「記憶」の4つのエピソードだけが描かれている。 人間の暗黒部分に強く惹かれる主人公の僕と、その親友の森野夜。この二人が、奇妙な因縁で猟奇的な犯罪に遭遇していく。連日マスコミを賑わせている連続殺人事件に関係すると思われる犯人の手帳を偶然拾った森野夜は、僕と一緒に未発見の死体を見つけようとするのだが… 漫画版は、原作に忠実に描かれており、原作ファンからの評価も高い。原作は、2003年の「このミステリーがすごい」で2位にランクされており、ミステリーとしての評価も高い作品である。 コミックス版は、2003年5月30日に刊行され、2011年11月02日には読者からの要望にこたえる形で電子書籍化もされている。
作家、乙一さんの小説が原作の暗黒漫画です。なので、好みがはっきり分かれてしまう作品だと思います。普段の生活の中では見ることのないような、しかし、実は隣合わせで潜んでいてもおかしくないような「人間の狂気」が滲み出ています。小説のイメージをなかなか上手く漫画化されているな、と感じました。クラスメイトに合わせて普通を装っている「僕」と、普通を装わない「夜」が紡ぐ物語。身の回りで起きる奇妙な事件に二人が徐々に入り込んでいく様を見ていると人間は本当に恐ろしい生き物だな、と思います。事件を間近で見ても動揺しない「僕」が一番、人間離れしていて怖い存在かもしれません。漫画が面白いと感じた方は是非、小説も手に取っていただきたいです。グロテスク耐性の無い方は間違っても覗かないようにして下さい。
神山樹
冒頭3ページ、友人と遊びに行く際に回想するシーンで神山がこう述べている。 誰もが違う部分を持っているが自分が違うのではなく、異常である事を暗に示している一言。