こどもの体温の評価
こどもの体温についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に漫画を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
こどもの体温の感想
口に出せない思いをこまやかに描く、珠玉の短編集。
作家・酒井高紀とその息子・紘一を中心とした、周囲の人間模様を描く連作。酒井の妻はすでに他界していて、他の登場人物たちは紘一の(母方の)祖父母、紘一のGF、同級生など。とくにおすすめするのは「ホームパーティ」と「僕の見た風景」の二編です。「ホームパーティ」は、亡き妻の実家へ行った酒井親子のお話。紘一が寝静まった夜中、ひょんなことから高紀は舅と二人で翌日のホームパーティ用の料理をはじめます。それらはすべて、亡き妻の得意な料理でした。お互いに主語をかわさず、料理の話をしながら妻を、娘を思う流れのなだらかさに、ぐぐっときてしまう作品です。「僕の見た風景」は高紀の大学の後輩の話。自動車事故により1人が死亡、1人が脊髄損傷の重傷を受け、運転していた男を「一生こき使ってやる」と恨みながら、同居をはじめる…という話。陰にうかびあがる愛情を描いた、こちらも名作と思います。