現代にも通じる人間ドラマ
舞台は宇宙大学受験会場、そして冒頭には宇宙歴概略と、SFにあまり馴染みがない読者にとっては小難しく、とてもとっつきにくい印象を与える作品です。しかし読み進めるうちに、その印象は覆されていきました。作者がこの作品で表現したかったのは、今の世にも通じる、人と人とのつながりだったのではないでしょうか。その根拠の一つが登場人物たちの背景です。彼らは様々な星から試験のためにやってきた若者で、その文化も、能力も、試験に臨む目的も様々です。さらに性別すら曖昧な人物もいます。当然すぐに彼らがまとまることもなく、裏切者がいるかもしれないという疑いが持ち上がることでさらに疑心暗鬼になり、衝突していきます。この様子はまるで今の世の中の、LGBTやジェンダーの問題、イスラム教徒や国家間の対立をも暗示しているように思えます。実際、2話目の『続・11人いる!』は、国家の陰謀と対立をテーマとした作品になっており、人間たち...この感想を読む
4.04.0