悪童日記の評価
悪童日記についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が4件掲載中です。
各項目の評価分布
悪童日記の感想
父親はなぜ殺されたのかー『悪童日記』の読後感について
重たいテーマを読みやすくする、『悪童日記』独特の手法戦争はもちろん、いじめや貧困、聖職者の堕落、倒錯的な性描写(ホモセクシャル、被虐趣味、獣姦)、ユダヤ人へのホロコーストなど暗い題材が目白押しであるにもかかわらず、この作品の読後感は悪くない。なぜだろうか。『悪童日記』は第二次世界大戦中のヨーロッパ、ハンガリーと思われる国の小さな町を舞台にした小説である。とはいえ文中では具体的な描写が意図的に省かれ、実際は作品の舞台がどこなのか特定できないようになっている。読者としては時代背景、舞台を想像で補うしかないのだ。しかし作者はこの手法によって生々しくなりがちなこの時代のストーリーをどこかファンタジックで、虚構的に現すことに成功している。そのため作品は悲劇を示唆する段階にとどまっている。読者は現実で起った戦争という事実に向き合わなくてすむというわけだ。また作品は数ページ一セクションのまとまりで構...この感想を読む