今は遠くはかなき、華麗なるアメリカの幻影が痛ましい 「華麗なるギャツビー」
この"失われた世代"の悲劇の作家、F・S・フィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」の映画化作品は、冷徹なロマンティシズムをたたえ、"整然たる構成の美"を保つ原作の良さをそのままに、乱れず、おぼれず、歌わぬ、ジャック・クレイトン監督の演出の知的な情感に、たちこめる悲しみの香気が切ない。第一次と第二次の二つの世界大戦のはざま、やがて襲う経済大恐慌も知らぬ、繁栄と頽廃の1920年代半ばのアメリカ。これは信じがたいまでに、純情無残な恋物語なのです。貧しい農家の子として生まれたギャツビー(ロバート・レッドフォード)は、8年前、陸軍少尉として駐屯した町で、良家の美しい娘デイジー(ミア・ファーロー)と恋におちる。だが愛を確かめて、フランス戦線に出征したまま、彼が帰らぬ間に、彼女は結婚してしまうのです。青春を賭けた恋を失い、奮起した男は暗黒街に身を置き、酒の密売で巨富を得て、女が富豪の夫(ブルース・ダーン)と住む高級...この感想を読む
4.04.0