SFの中にあるユートピアの姿
この作品の舞台設定は2019年だが、予想以上にすぐそこの未来であることに驚く。 作品の中の衣服や小道具や乗り物は、思ったほど未来というわけでもなく、我々が今生きているこの現在から地続きな未来というものは、こうなんじゃないかと思わせてくれる。 それもそのはず、主人公は『世界は大気汚染で人々がまともに住めなくなった』と理解させられていたが、本当はその隔離された施設の外側に、ちゃんと人々のクラス世界が存在していたのだ。 主人公が何故この施設で暮らしているかは、ストーリーを追ううちに明らかになる。主人公たちは安全だが退屈な毎日を送り、そして地上最高の楽園『アイランド』へ行く抽選に当選することだけが楽しみだ。 この地上最高の楽園、という表現はつまりユートピアの具現化だと思われるが、ユートピアを語る上で必ず対になるのはディストピアの存在である。退屈だが安全な施設の暮らしこそがディストピアなのか、それとも他に対象となる世界があるのか。その構造論を考えながら見ても面白い作品だ。
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