3人の女子が過去の自分と決別する『エンパイアレコード』 - エンパイア レコードの感想

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3人の女子が過去の自分と決別する『エンパイアレコード』

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.0

目次

エンパイアレコードは一見すると、男性がいっぱい登場するので、男性中心の映画に見えるかもしれません。

しかし、3人の女子店員はすべてキャラ分けされていて、3人とも現状に不満があります。

この映画は、そんな3人の成長物語とも言えるので、実質の主役は女性なのではないかと筆者は考えました。

  • デブラの場合

鼻ピアスが特徴のデブラは、いきなりスキンヘッドになってしまいます。

見た目はイケているのに、他の2人の女子店員と違って、タトゥーにパンツルックで、女性らしさを拒否したかのような服装のデブラ。
自殺を図ろうとした詳しい事情は紹介されていませんが、女だからという理由で、何か嫌な目にあったのかもしれないな、と思いました。

筆者も20代のころ自分に自信がなく、洋服の色は黒がメイン、ショートパンツやロングパンツを履いて、ミニスカートはほぼ履かない、という時期がありました。

さすがにOLだし、そこまで度胸もなく、頭の形も良くないのでスキンヘッドにはしませんでしたが、その当時多少はやっていたショートヘアの後ろを刈り上げていました。

ほぼこの映画の登場人物と同世代で、バブルの時代だったので、コリー系のお嬢様がいっぱいの会社では、かなり浮いてたと思います。

でも、女性女性した雰囲気はなんか自分らしくなく、違和感を感じていたので、そんなファッションをしていました。男に媚びている感じも、なんか嫌でした。

なので、女性陣の中では、一番デブラに共感できます。

3人の中では、一番見た目が過激で、言葉遣いも荒いデブラですが、実は一番純粋なのだと思いました。

純粋でなければ、周りからいろいろ突っ込まれたりする地雷を、わざわざ踏むようなことはしないと思います。

自分の葬儀のデモンストレーションで、自分が嫌いだったとみんなの前で告白したことで、デブラは自らの殻を破ります。

この映画を見ていくうちに、実は自分に真剣に向き合っている、生きることにまっすぐな子はデブラなんじゃないのかな、と思いました。
真面目過ぎて、誰にも迷惑をかけたくなくて、何でも自分で解決しようとする苦労人のような気がします。

だから映画でも、彼女の本当の悩みははっきり表現されませんでした。誰にでも相談できる悩みは軽いけれど、彼女の悩みはそれだけ深く重いものなのだと思います。

この映画の後に、デブラが相談できたり、頼ったりできる人が現れると良いな、と願わずにいられません。

  • コリーの場合

スタイル抜群で、リア充なコリー。ハーバード大への入学を目指すほど、勉強もできます。

そんなパーフェクトのようなコリーですが、入学前から父親に総代になることを期待されることがプレッシャーで、薬物に頼るように。

この映画の舞台は、「東のハリウッド」と言われる、ノースカロライナ州のウィルミントン。ハーバード大のあるボストンまでは飛行機でも4時間以上かかり、確実に1人暮らしになります。

コリーは往年のアイドルに憧れ、彼の前で下着姿になりますが、ブラは赤、パンティーは白、と、うぶな感じが出てしまい、からかわれ、恥ずかしい思いをします。

しかし、なぜ彼女のような、男子は誰でも選び放題に見える子が、紫色のシャツを着て、もみあげをはやした中年男性にせまるのか、一見すると理解ができません。

でも、それはファーザーコンプレックスの裏返しなのではないかな、と勝手に解釈しました。

一見すると普通の優等生のようですが、実は一番大胆で行動的なのはコリーのような気がします。レストランで赤いブラをはずしたりもしますし。

店長のジョーに「レックスの食事を運ばせて」と迫ったシーンやジーナに裏切られ、ジョーが励まそうとしたところ逆切れするシーンなど、彼女のちょっと強引で勝気な性格が垣間見えます。

実はこういう激しい部分を持っていたから、ハーバード大も目指せたし、昔からのアイドルを一途に思い続けることもできたんじゃないかな、と思います。

それは彼女が素晴らしい容姿を持ち、お金持ちの家庭で何不自由なく過ごし、おまけに勉強もできることが関係していると思います。それらをあわせ持ったことで、揺るぎない自信が生まれたのだと思います。

自分の激しい部分を開放した結果、コリーは、友達のような同僚のAJと、自然体で恋愛できるようになりました。

  • ジーナの場合

コリーと仲の良いジーナは、裸にエプロン姿になったり、いろんな人と関係を持つなど、大胆で、自分を開放しているように見えます。

しかし、実は完璧なコリーと比較してしまい、自分は臆病で、思いっきり歌うことも、コリーのように他の場所に行くこともできず、母親のようになってしまうのかな、と将来を心配しているのです。

何をとってもふつうでつまらない、小心者の自分。そんな部分をカモフラージュするために、ジーナは悪ぶったり、自分を遊び人のように見せていたのかもしれません。

コリーとは友達だけれど、女同士の友情は少しライバル的な部分もあって、なかなか複雑です。いつもコリーに引け目を感じていたジーナは、けんかをきっかけに、コリーに思いのたけをぶつけます。

友達でなければこのまま喧嘩別れする可能性もありましたが、2人の友情は本物だったため、本音を見せることで、お互いの仲はより深まりました。

映画の最後のほうでジーナが歌う「シュガーハイ」は、パワフルで、思いっきり自分らしさを出していて、すがすがしさを感じました。

これからは、ジーナは人目を気にせず、恥ずかしがらずに、個性を表現していくことができるのでしょう。

この映画の後、デブラ、コリー、ジーナを演じた3人は、いずれも有名になりました。

マニアックな音楽知識が随所に散りばめられ、ちょっとハチャメチャなミュージカルとも見える『エンパイアレコード』ですが、3人の女性の成長に注目して見てみると、より楽しめるかもしれません。

1995年、と少し古めの映画ですが、女性ならば、きっとこの3人の中の誰かに共感できるはずです。

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