セリフの面白さ意外でも見所がほしい
目次
カット割りが細かいのは、理由があるのか?
観ていてまず、カット割りがカシャカシャ変わるのが見辛かったですね。
よく、堤幸彦監督作品などでも、細かくカット割りをして、編集されているシーンがありますが、あれはコミカルなシーンや、特別感をもたせたい時の演出だと思うんです。
しかし、この作品では、全体的にカット割りが細かいのかな、と感じました。
なぜ、このシーンでカット割りを細かくしているのか、が観客に伝わらなければ、ただ見辛いだけになってしまうと思います。
また、石原さとみさん演じる元恋人を駅の改札まで送るシーンは、カット割りをせず、長回しで撮った方が、心情が伝わってきたのでは?と思いました。
カット割りを細かくするシーンは、視覚情報が優位になってしまうので、セリフが入ってこないと思いました。
とにかくセリフが多すぎる。心情も語らせず、演出で見せるべき
また、気になったのは、主人公の内面をセリフで処理し過ぎている点でした。
モノローグというよりは、漫画的な手法に近いですよね。
確かに少しそうしたシーンもあれば、分かりやすくはなりますが、この作品は多すぎると思います。
映画でも小説でもそうですが、その人物の心情を、どれだけセリフ以外の演出や演技で表現するかが勝負だと思うんです。
行間を楽しむというか。
そうした表現力に乏しく、情感が湧いてこないのがなんとも残念な感じを受けました。
これだったらマンガでいいですよね。わざわざ映像化する必要を全く感じませんでした。
同じように、漫才師を漫才師の視点から描き出した、又吉直樹さんの「火花」は、その辺りがきちんと表現されていて、文学的な価値のある作品になっていたと思います。
また、全体的に漫才的なやり取りが多いのも「なぜ?」と思いました。
又吉さんの「火花」では、同じように漫才のやり取りが出てきますが、ただ読者を笑わせるために、それを書いている訳ではありませんでした。
それを言っている状況や心情といったものが、より作品のテーマに肉薄するための演出であったと思います。
それに対してこの作品は、1のことを10まで漫才的なやりとりで膨らませている印象で、結局大事な部分はスカスカのように感じました。
映画の面白さの部分を、面白いやり取り、面白いセリフに頼りすぎていて、肝心のストーリーやキャラクターの魅力よりも優先されてはいないか?と感じました。
しかし、これは私の個人的な嗜好なので、この漫才の応酬のような構成で、爆笑できる人もいるのかもしれません。
龍平が素直すぎる
これは完全に私の嗜好なのですが、龍平はもっと中々笑わないようなキャラクターにした方が、面白かったのでは?と思います。
あっさり芸人になることにも承諾してしまいますし、基本的には黒沢の言うことを、全て龍平は受け入れます。
これだと見た目は刺青だらけですが、ちょっと悪いくらいの感じですよね。
また、上地雄輔さんが、あまり怖そうに見えないことや、21歳に見えないことも、残念に思えました。
多分龍平のようなコワモテが芸人になるのなら、もっと怖い感じを演出して、ギャップを出した方が、芸人として階段を登っていく上で、感動があったのではないかと思います。
どうして借金をするのか?が分からなかった
まず、この話は芸人の借金から始まっているような所があるのですが、その辺りが説明不足のように感じました。
芸人をやっている人からすれば、売れない芸人が借金を抱えるのは当然のような世界なのかもしれませんが、私は芸人ではないので、その辺りを常識のように流されてしまうと、ストーリーに付いていけない気がしました。
借金をするような人は、やっぱりだらしない人なのかなあと思いますが、黒沢も石井も真面目に見えるんですよね。
セリフでは一応ギャンブルをやって、ともありましたが、綾部さんはそういう風にはパッと見て見えないのが残念です。
実際ピースが売れていない頃、綾部さんはアルバイトで活躍していたという逸話もあるので、借金をしていたようには見えません。
視覚的にも、演出的にも、金銭的な行き詰まり感や、人間性のだらしやさなどが、説明不足のように思えました。
ロバート秋山さんと千鳥大悟さんは上手かった
この作品は、監督の品川さんのツテなのか、吉本興業の芸人さんが数多く出演しています。
正直、ほとんどの出演者が、セリフの多さに振り回されている印象を受けました。
セリフを読んではいるのですが、どういった人物設定でそれを発言しているのか?が伝わってこない方が散見されました。
本当にコントの台本というか。キャラクターよりも、突っ込みの強さやボケの間が優先されているような印象ですよね。
しかし、意外だったのは千鳥の大悟さんです。
すごく演技がうまいと思いました。
芸人大悟を引きずらず、本当にチーマーの一人に見えました。
いつもは癖の強い岡山弁ですが、一切それが感じられず、きれいな標準語となっていました。また、セリフが型にはめられた怖い人のようになっておらず、そのキャラクターの人格や、心情や迫力が伝わってきて、本職の役者のようだと思いました。
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