悪あがきのすすめ - ヤング≒アダルトの感想

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悪あがきのすすめ

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
4.0

目次

高校時代の元カレに会いに行く

ベタに周りとの比較をし、バチ1独身で仕事もなくなりそうな状況に焦るところから物語はスタートするわけですが、よくある展開とすれば婚活パーティーに参加する、または身近な人と恋に落ちるなどがありますが、この映画のぶっ飛んでいるところは、高校時代の元カレ、(しかも子供が産まれたばかり)とよりを戻せばいいと考えるところです。

高校時代の元カレに会いに行くだけでもなかなか痛々しいのですが、車の中で思い出の曲をかけて歌いながら地元に帰る様子は、「主人公がこの手があったじゃない」いわんばかりです。シャーリーズ・セロンでなければ、とんでもなくホラーに見えていたかもしれない程の始まり方です。

おしゃれは完璧に

はたから見ればどうかしていても、本人は人生をかけて臨んでいるのでTPOに合わせて服だけでなく、メイク、ネイル、髪型を変えていくシーンはそれだけインスタなどにアップして欲しいくらい見応えがあるのと同時に、「プラダを着た悪魔より」も参考になります。

しかし、主人公が現実を直視しづらい要因がこの点にもあると考えます。美人でも、ダサかったり、それなりに老けていればそれが自己を振り返るきっかけになると思いますが、こうもきっちり仕上げられると周りも指摘しづらいですし、本人も自覚するの難しいと思います。

現実は違っても見ないようにする

すぐに元カレとよりを戻せると思ったのに、実際は軽く世間話をして終わってしまったことへのショックを、彼は本当は幸せじゃない、我慢していると勝手な解釈をして自分を勇気付ける思考は、ストーカーそのものです。

また、高校時代は見向きもしていなかったクラスメイトに、自分から連絡をし会いに行って話を聞いてもらうシーンが何度かありますが、毎回、元カレに会った後です。この辺で、私は昔の私と違うんだと思っても良さそうですが、主人公目線でみると、みんなの憧れである私がクラスメイトに会ってあげているという考えなのは、遠慮のない態度からも明らかです。どんな状況でも振り回す相手を見つけるところはさすがと言えます。

甘めの話ならここから、主人公とクラスメイトの恋に発展しそうですが、残酷な方に進むところに監督のシビアさを感じます。

良き友の助言は聞かない

あの手この手でアプローチするも、泥酔した元カレとキスくらいしかできないのですが、高校時代のジャージの匂いを嗅いで羽織ったり、昔の車に乗ったりして自分を鼓舞します。本当に危ない人です。そのことは、クラスメイトも指摘して、You need move on といいこと言ってくれてます。でも主人公は逆ギレして、やけ食いして突き進みます。ホームパーティーに誘われたことを、自分が必要とされているんだと曲解するとは、どこか向こう側にいってしまっています。

打ち砕かれる

そんな大暴走も、元カレ家族のホームパーティーで大声で悪態をついて、狙っていた元カレからもその他大勢の人たちからも白い目で見られたことで、ようやく止まります。クラスメイトのところに駆け込んでヌーブラとストッキングだけになるシーンは、主人公が現実を受け入れた瞬間で比喩表現として素晴らしいです。

服装での比喩表現で思い浮かぶのは「シングルマン」ですが、シングルマンでは冒頭のスーツ姿からクライマックスの裸で海へダイブだったので、青春の1ページがごとく美しかったのですが、それに引き換えヤング≒アダルトの生々しさといったらありません。

また、余談ですがヌーブラとストッキングというみすぼらしい姿になっても、スタイルいいなと思ってしまうシャーリーズ・セロンの美しさも圧巻です。

そして蘇る

高校時代は見向きもしなかったクラスメイトと一夜を共にした翌朝に、その妹からの数々の羨望と賞賛の言葉を聞いていくうちに、そうだそもそも私にはこんな田舎向かない、私はここが嫌だったんだと初心を取り戻し、主人公は蘇ります。蘇ったことは、書いてるティーン小説の内容からもわかりますが、より主人公らしさを感じるのは、蘇らせてくれた妹に対して「あなたはここにいなさい」というセリフです。このたった一言に、あなたにはこの田舎が似合っている、都会には向いてないわよ、という辛辣な意味を含ませています。ティーン小説とバカにされていても、物書きとしてのセンスが光っています。

そして、主人公は私は私でしかないとでもいうように、ボロボロになった愛車のミニクーパーを雑に動かして帰って行きます。

この映画での一番の被害者は元彼の奥さんなことは言うまでもありませんが、もし、主人公が空気が読めて中途半端にわかったふりをしていたら、現実を直視するまでに相当の時間がかかったかもしれません。他人の目など気にせず、どーんとぶつかり粉々になったからこそ蘇り、未来に向かうことができました。

主人公を表面的に捉えれば、自分勝手で傲慢と言えますが、裏を返せば、堂々している、オープンである、みんなに好かれようとしない、とも言えます。性格の良し悪しに関わらず、一生懸命な姿には心を打たれます。

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4.04.0
  • れんれん
  • 159view
  • 1100文字
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