原作無視の実写化はやめてほしい
「笑う大天使(ミカエル)」を視聴した感想です。
久しぶりに観てはいけないものを観てしまったような気持ちになりました。
これは酷い。相当酷いです。
漫画原作の映画の実写化は、ひどいひどいと言われがちですが、これは…。
恐らく一番酷いんじゃないですかね。
原作の改悪に次ぐ改悪。原作へのリスペクトが微塵も感じられない作品でした。
どうしてこうなったのか…。
この作品は、白泉社の人気漫画家、川原泉さんの同名のマンガを実写化したものです。
私もこの作品だけでなく、ほぼ全ての単行本を集めるほどの川原泉先生のファンです。
川原先生といえば、一見して正統派の少女マンガのような絵柄ながら、少女マンガらしからぬ設定や独特のノリで長く読者に愛されています。
また、文学を感じさせるような台詞回しや、博学なキャラクターから、ファンの間では「教授」の愛称で親しまれています。
この「笑う大天使」はそんな川原教授の最高傑作なのではないか、と私は思っています。
友情や家族愛、冒険やファンタジー、そして恋愛などの要素が盛り込まれながら、川原教授の真骨頂である、ゆるいコメディと朗らかな語り口で、最初から最後まで楽しむことのできる作品です。
それをよくもこんな出来にできたな、と思ってしまいます。
なぜ原作に忠実に作らないのでしょうか?
主人公のキャラクターも、舞台設定も、全て改悪されています。
原作のテイストのままやっていれば、それなりの出来になっていたと思うのに、なぜダメな方へダメな方へ行ってしまうのか。
星を一つもつけたくない
この作品は、全体的に「観客はどのように感じるか?」という目線や配慮に欠けていたと思います。
まず、主人公の司城史緒。
なぜ関西弁にしてしまったのか?全く意味が分かりません。
聖ミカエル学園の設定も、なぜか孤島に建てられていることになっており、意味が分かりませんでした。
そんな所に通いますかね?良家のお嬢様が。
一番酷いと思ったのは、聖ミカエル学園の制服です。
なんであんなに胸と背中がガバッと開いたワンピースなんですかね?
かがむと胸が見えてしまっていました。
良家のお嬢様云々ではなく、どう見ても学校の制服ではないでしょう。
あんな格好、良家のお嬢様はしないですよね。
体操着もくノ一のようでした…。
また、お茶会のシーンですが、なぜみんな髪型が爆発していたのでしょうか。
良家のお嬢様ですよね?
アメリカのセレブ風なんでしょうか?台風の後にしか見えませんでしたが…。
ドレスも全くかわいくありませんでした。
この映画、服と髪型のセンスがおかしいですよね。
ましてや、昭和の時代の少女マンガが原作なのです。
その世界観の、可愛らしさや可憐さが全く無かったのが、ただただ残念でした。
また、櫻井厚子様が史緒にネックレスをプレゼントするシーンでは、「こんなの初めて。高いんだろうな」というセリフが入っていましたが、どう見てもプラスチックなんですけど…。
製作者がお金持ちの世界をイメージ出来なかったのは伝わりました。だったらもっと実在のお金持ちの方に、取材した方が良かったんじゃないでしょうかね…。
そして執拗なチキンラーメンを食べるシーン。提供なんですかね?
お茶会で他の生徒にも食べさせていましたが、何のために?という感じでした。
また、原作ではさらっと終わった三人の大立回りのシーン、長かったですね。
なぜ不必要な所を長く撮ったのでしょうか?
作品のテイストも変わって来ますし、アクションマンガじゃないんですけど…。
なんだか結局、原作の実写化というよりは「原作のアイディアを借りてやりたいことをやった」というように見えました。
監督は本当はアクション映画を撮りたいし、スタイリストは前衛的なファッションを作り出せることを、映画を利用して主張したいのでしょうね。
観客の娯楽に全く結び付かない。これがプロの仕事なんだろうか。
これは、原作ファンの人は相当ガッカリすると思いますよ。
説明不足な印象。原作を読まないと繋がらないところも
原作の設定を変えてもいいんですが、だったら面白くしてほしい。
原作を知らない人が見ても、意味不明な演出が多いですし、面白いとは思えないんじゃないでしょうか。
和音と柚子のバックボーンについても分かりづらいですよね。
柚子はなぜ豪華な家に住みながら、庶民のような感覚を持っているのか?
和音はどういう家に育ち、なぜ親との関係が稀薄なのか?
この辺りが原作を読んでいないと、説明不足だったのではないかな?と思いました。
あと俊介が和音を竹刀で叩きまくっていますが、普通に痛いですよね。
さすがに丸腰の女相手にこんなことしないですよね。ましてやお嬢様なんで…。
そういう所も雑だなと思いました。
また、所々に入るアニメーションも煩わしかったですし、ナレーションも入れるなら入れる、入れないなら入れない。忘れた頃に一言喋るくらいなら、止めてしまったほうが良かったですね。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)