タイにおける子供の人身売買の現状を生々しく表現 - 闇の子供たちの感想

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闇の子供たち

3.503.50
映像
3.67
脚本
4.00
キャスト
3.83
音楽
3.67
演出
4.00
感想数
3
観た人
3

タイにおける子供の人身売買の現状を生々しく表現

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
4.5

目次

映画開始直後からの衝撃の映像

中年のフランス人男性が、まだ10才前後と思われる少年を犯しているという衝撃のシーンから始まるこの映画。実際の撮影現場では子供と大人が実際に裸で触れ合うことが無いよう、別々に撮影したとされていますが、映画のこのシーンは非常に生々しい。フランス語を習ったことがある人なら、偏見になってしまうかもしれないですが、フランス語が嫌いになりそうになるほどです。

タイで行われていると思われる、子供の人身売買を扱ったこの映画は、出演が日本の豪華な俳優陣で固められています。フィクションではあるものの、現実にタイで行われている人身売買や子供を利用した性産業の現状が生々しく描かれているのではと感じさせます。映画では明示されていませんが、その性産業に無理やり従事させられる売られた子供たちは、原作では10才に満たない子供も多くいるとされていて、映画が始まった瞬間から胸が痛くなってきます。そのような幼い子供に無理やり性行為をした場合、彼らの体に何が起こってしまうのか、それもしっかりと映画の中では表現されています。原作では、まだ幼い少年・少女をどのようにして大人の性行為に対応できるようにするのか、ペドファイルと言われる幼児性愛者に売れるよう子供の体に細工をして写真を撮る様子などが本当に生々しく表現されています。こんなことはあってはならないと、映画冒頭から強く感じさせます。

エイズで使い物にならなくなった少女は捨てられる、という悲惨な場面

売春させられるうちにエイズにかかり、使い物にならないと判断された少女が、黒いゴミ袋に入れられてゴミのように捨てられる、という悲惨すぎるシーンがあります。その子は自力でゴミ袋からはい出し、這いながら故郷まで帰ります。道のりを這っていくうちに少女は黒い塊のようになり、母親が見つける時、初めは自分の娘だと分からないほどです。真っ黒な塊になるほど、必死に這って行った少女は、どんな気持ちだったのだろうかと胸が痛くなります。どんなに体が辛くても故郷まで帰ろうとした意志の強さは、どこからくるのだろうと感じます。しかし、故郷に帰っても、命は風前の灯です。彼女は家の中ではなく外の檻のようなところに入れられ翌朝を迎えますが、すでに虫が湧いています。こんなに必死に帰っても、優しく介抱してもらうことすらできないのかと感じます。原作ではその少女の父親はこの少女をお金のために売り、貧しさのために売ったはずなのに、自分はお金ができると別の女のところに行きます。父親とはこんなものなのか、男とはこんなものかと、またまた偏見かもしれませんが、男性が嫌いになりそうになります。その少女は虫も湧いてどうしようもできないことから、まだ生きているのに燃やされてしまします。これが家族のために身を売ってきたものにする仕打ちなのだろうかと、憤りをおぼえるシーンです。

生きている人間の臓器を売ることなどあってよいのか?

生きている人間の臓器売買などという恐ろしいことが起きていたとしたらと、恐ろしくなります。日本人ジャーナリストが、その人身売買の現場を捉えようと奮闘します。臓器売買に利用されようとする少女が取引される先は、驚きの日本です。日本で病気に苦しむ自分の子供に臓器移植を受けさせようとしている母親が出てくるシーンがあります。母親が必死に、自分の子供を守るために臓器売買に手を出し、その正当性訴えていますが、やはりそれはいけないことだ、と観ている人の中の正義を再確認するシーンでもあります。しかし、自分の子供の命が危機的状況にある時、誰しもが助けたいと不正な方法に手を出したくなるものかと、そちらにも考えが及びます。しかしやはり、どう考えても健康に生きている人の臓器を金で買い、その人の命を奪ってまで自分の子供の命を救うのは間違っている、と心の中で正義の葛藤がおきるでしょう。

人身売買現場を追っていたジャーナリストの正体を知る衝撃のラスト

人身売買の現状を暴こうと奮闘する日本人ジャーナリストや、人身売買の現場から救い出した子供を保護する施設の日本人職員は、この映画の中では正義側にいる人間だと、映画の後半の方まで思い、この見ていて辛くなる映画を観る中で少し心救われる存在でもあるはずです。しかし、原作とは違い、映画ではラストに衝撃のシーンがあります。ペドファイルの人たちの記事を貼ってある江口洋介演じるジャーナリストの部屋の壁に、実はその本人の写真も貼ってあり、映像では子供の手を引いていくシーンが出てきます。この人もペドファイルだったのかと、とても心に衝撃がくるシーンです。正義側の人間が実は反対側にいたとのかと知る、最後に、観る人の心大混乱させるシーンを映してこの映画は終わります。このシーンから、正義や不正義の境界線は簡単に越えられ、自分ですら正義側の人間でいられるかは紙一重なのだと、示唆しているように感じます。ちなみに、原作では、子供たちを救う施設の職員の女性が子供たちを守っていくことを強く決意するシーンで終わるので、少し心の救いようがあるかと思います。

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