ヨコハマの大河ドラマ - ヨコハマ物語の感想

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ヨコハマ物語

4.504.50
画力
4.25
ストーリー
4.50
キャラクター
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設定
4.50
演出
4.50
感想数
2
読んだ人
3

ヨコハマの大河ドラマ

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

どちらのヒロインがお好き?

この少女マンガを初めて読んだのは、もうン十年前になる。古い時代背景だからこそ、古さを感じないので何度も何度も読み返している。

『ヨコハマ物語』の登場人物、お嬢様の万里子と奉公人のお卯野。これは、お卯野が初めて、万里子の家である貿易商の叶屋に奉公に来たときに、私はきっと意地悪で高慢ちきなお嬢さんが、いたいけなお卯野をいじめまくるのかな?と思ったよ。そういうパターンは少女マンガにはよくあるから。例えばあの『キャンディ・キャンディ』(これも古いけど)なんかはイライザが使用人としてやってきたキャンディをこき使い、陰湿ないじめをくりかえす。めげないキャンディは頑張って逆境を克服し、最後には幸せをつかみ取るシンデレラストーリーでしょ。奉公人イコール辛い仕打ち、のち王子様の登場でハッピーという私のなかのセオリーを覆したのが『ヨコハマ物語』なのである。

お嬢様の万里子は一筋縄ではいかないおてんば娘。木登り大好きキャンディよろしく高いところも何のその。あ、これはもしかしたら、主人公はこっちなのかもしれないと私は思ったの。

でも、お卯野のキャラクターの前半は万里子に少し押され気味なのだけど、勉学では引けを取らないし、向上心を持ちながら万里子を理解し支えるNHKの朝ドラ「おしん」のごとき存在感を発揮する。

まさに、ダブルヒロインなのである。これはね、最初は私は万里子に肩入れしちゃうんだよね。だって何となくこれから不幸になっていく予感がするんだもの。奉公人とお嬢さんは背負っているものが違うもの。そういう意味では守らなくてはいけないものが何もないお卯野の方が自由で結果的に幸せになれるような雰囲気をにおわせていたから。

男性キャラクターも両極端

相手役の男性キャラクターもこれは好みが分かれるところなんだよなー。知性的な森太郎とワイルドな竜助。これは迷うよ。どちらもイケメンだもの。まあ、順当だけど。

万里子とお卯野と森太郎の三角関係…私は、最初から森太郎はお卯野を選ぶと思っていた。これもひとえに私が過去に読んできた少女マンガのお決まりパターンで、「男の子は貧乏でも頑張っている子が好き」という定説が刷り込まれていたから。でも、森太郎は万里子のことがずっと前から好きだったんだとさ。ここで、万里子寄りだった私の気持ちがぐぐっと、お卯野に動いていく。お卯野、かわいそうに。誰にでも優しいからなあ、森太郎は。お卯野のように優しくされたことのない女の子は絶対好きになっちゃうってば。罪な奴だよ、全く。正統派好青年だ。森太郎がお卯野に万里子への気持ちを語る場面では、キョンキョンの「せーつーなーいー片想い、あなたは気づかないー」が頭の中で流れてくるよ。いつだって耐える少女は健気なのである。

竜助のほうは、荒くれもので粗野だけれど、一本気で実は優しい。これも、少女マンガあるあるだわね。大多数の少女マンガのヒロインの相手は約80パーセントがこのタイプに該当する(私調べ)。前述の『キャンディ・キャンディ』のテリィがまさにこのタイプ。万里子もキャンディも、最初は反発しながらも最終的には夢中になってしまうのさ。そして大抵の読者もこういうタイプが好きなんじゃない?特に若いころは。女の子はちょっと不良に惹かれるの。不良が自分のこと好きっていうのも一つのステータス。周りに自慢できるし、何だか自分の知らない世界に連れ出してくれそうだもん。

恋じゃない、愛なんだ

このマンガは恋愛に関しては、万里子と竜助、お卯野と森太郎という夫婦ができあがって、めでたしめでたしなんだけど、二組が結ばれるまでの過程がもう大河ドラマにしてもいいと思うほどの事件ばかり起こる。特にアメリカで天然痘の種痘を手に入れるために奮闘したお卯野の命をかけた嵐の日が、一番のクライマックスだと私は思う。あの日があったからこそ、森太郎とお卯野の絆は確固たるものになったのさ。初恋が実って良かったねと、私は母のような気持ちで安心したよ。

万里子も自分の身を投げ出して竜助をかばった時に本当の愛を知ったのかしら。森太郎への思いは憧れだったのかもしれない。うんうん、そういうものよ。二組の物語は恋から愛になって成就したのね。

ヨコハマだから

それにしても、『ヨコハマ物語』って素敵なタイトルだこと。小説や、ドラマ、映画でもよく舞台になっているよね。絵になる街なんだ。海があって、港があるから?異国情緒があるから?

このマンガは、阿片の輸入のこととか、初めて水道を引いたとか史実を基にしてこその『ヨコハマ』なんだろうけど、他の地名だったらきっとピンと来ないと思うの。『ナゴヤ物語』『ナニワ物語』…笑うわ。(名古屋、大阪の皆様、ごめんなさいね)

カモメが飛んで、お船があって、異人館があって…いいなあ、ヨコハマ。そんなヨコハマでドラマチックな恋愛をしたかったんだけど、儚い夢だったわ。

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物語は、11歳で両親を亡くした少女・お卯野が、父親の知り合いで横浜の貿易商「叶屋商会」の主人に小間使いとして引き取られるところから始まります。お卯野は自分が小間使いとして仕える同い年のお嬢さん・万里子の見かけの美しさに似合わぬおてんばぶりにびっくり。叶屋の主人の好意で、お卯野と万里子は横浜の英語塾へ一緒に通うこととなりました。二人は共に学び、遊び、大親友になり、そして叶屋の隣りに住む医者志望の新太郎に共に恋をします。二人は英語学校を終え、お卯野はアメリカ人医師の診療所の手伝い就職し、万里子は女学校に進学、新太郎はアメリカに医学を勉強しに留学することになりました。三人の恋の行方は、将来は?男尊女卑の明治時代初期に女性が学校に行くのはなかなか認めてもらえないことであり、だからこそ二人が英語塾で生き生きと勉強に励む姿がすがすがしく見えます。読んでいて元気になる巻です。優等生の芸者の先輩、外国人...この感想を読む

5.05.0
  • ありょーしゃありょーしゃ
  • 264view
  • 618文字

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