ただただ中村倫也さんが良かった。
「風俗行ったら、人生変わったwww」を視聴した感想です。
面白かったといえば面白かったのですが、良くも悪くも「いつもの飯塚監督節」という感じがしました。
わたしは飯塚健監督の作品は、「REPLAY&DESTROY」と「茅ヶ崎コインランドリー」を視聴しているのですが、今回の「風俗行ったら、人生変わったWWW」も内容は、他の作品とほとんど変わらない気がしました。
登場人物は違うのですが、全体のテイストも、ノリもやっていることも、ほとんど同じように見えました。「REPLAY&DESTROY」の一編と言われても、違和感が無いように思いました。
そのように、ずっと同じような演出方法、同じような作品を撮り続けることに、単純に「どうしてだろう?」と疑問に思います。
また、ノリが変わらないということは、登場人物は違いますが、出てくるキャラクターは既視感があり、はっきり言ってしまうとカブっています。
それだけでも正直お腹一杯の感じはありました。このノリのこういうキャラクターは、前にもいっぱい出したでしょ、という感じです。
大事なシーンが短く、どうでもいいシーンが長かった印象
今回の「風俗行ったら、人生変わったwww」は原作のある作品だと思うのですが、飯塚監督のテイストが強すぎて、結局飯塚監督の作品になってしまっていると思います。
いや、監督の作品になる、というと変な感じですが、「原作の持ち味を生かしつつ演出してくださいよ」という範疇を大きく越えているように思えるのです。
例えば、堤幸彦監督は、ケイゾクやトリックなどで、かなり画面に凝った演出をしています。
しかし、原作作品の「明日の記憶」では、そのような特殊な撮り方は捨て、オーソドックスな映画作品に仕上げています。
しかしこの作品は、飯塚監督のオリジナル作品と、ほとんど内容が変わりません。
この作品は、29歳まで童貞で、ぱっとしない人生を生きてきた主人公の良太郎が、風俗嬢のカヨに恋をしたことをきっかけに、人生が明るくなっていく、というストーリーです。
一番の見所は、やはり良太郎がカヨに恋をしていく過程だと思います。
乞音もあり、緊張すると過呼吸にまでなる良太郎が、初めて女性に恋をして、不器用ながらも関係を深めていく。
ここが一番観客が感情移入できる所だと思うのです。
ところが、このあたりは全く丁寧に描かれていませんでした。
大事な心の機微は、ナレーションで解説してしまっているし、表情をアップで切り取ったり、言葉以外の演出で見せることはありませんでした。
作品の中でじっくり見せるべき部分が、かなり駆け足に語られてしまっていると感じました。
コミュニケーションが不得意な良太郎が、勇気を出して、段々と仲良くなる過程が面白いと思うのですが、あっさりカヨと仲良くなってしまっていると思いました。
これでは、「良太郎がコミュニケーションが苦手」、「良太郎が頑張っている」という印象が薄くなってしまい、主人公に感情移入することかできないと思いました。
良太郎は、カヨと長電話をするようになりますが、その辺りはすごくいいシーンだと思いました。
初めて女性と親しくなって、新しい世界が開けたんですね。
そういうシーンは感動的だったので、もっと丁寧に見せて欲しかったです。
また、好きになればなるほど、彼女が風俗嬢だという事実に、吐き気まで催す複雑な心境も、大事な部分だと思います。
そこをどう乗り越えたのか?も描かれていなかったのは、残念でした。
そうした作品の根幹の面白さ、大事な部分はおざなりなくせに、いらないシーンは長いと思いました。
終盤では、カヨの借用書を金融屋から奪還する作戦が、ネットの仲間も登場して繰り広げられます。
監督としては、この辺りを最大の見せ場としているようですが…。
いつものノリといってはあれですが、勢いだけで全然面白くなく、しかも長かったです。
コントのように描きたいのは分かるのですが、成立していないように見えました。
この辺りの展開は、「REPLAY&DESTROY」と全く同じノリで、正直「監督の得意な展開に持ち込んだな」という印象をもちました。
原作の面白さを見せ場にすればいいのに、自分の得意なオリジナルのシーンを見せ場にしていると思いました。
それは良いことなのか、悪いことなのかは分かりませんが、原作へのリスペクトには欠けていると思いました。
原作通りでは、勝負できないと思ったんですかね。しかし、オリジナルのシーン、やりすぎですよね…。
監督のやりたいこと、撮りたいものは伝わりますが、正直原作を軽視していると思いました。
監督のノリについてこられるか?が感想の分かれ目
この作品は、飯塚健監督の作品のノリが好きな人には面白いと思います。
しかし、タイトルにつられて「電車男」のような作品を期待するような、一般の観客に面白いと思われるかは分かりません。
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