女子高生に戻りたい - 清々との感想

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清々と

4.504.50
画力
4.00
ストーリー
5.00
キャラクター
4.50
設定
4.00
演出
4.00
感想数
1
読んだ人
1

女子高生に戻りたい

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

とにかく清ちゃんがかわいくて

この漫画は、巨匠(私の中で)谷川史子さんが少年誌「ヤングキングアワーズ」で連載していた作品ということなので、ターゲットは少年なんでしょうけど、男の子だけが読むなんてもったいなさすぎる。おばさん(私)だって女子高生の世界に浸りたいんだよ。

主人公の田中清(たなかさや)ちゃんは受験勉強を頑張って憧れの鈴蘭女学院に入学します。そこで織りなす微笑ましい日常がこの漫画のなかで生き生きと弾むように描かれています。

全四巻の表紙は全てセーラー服姿の清ちゃんで、一言で表現するなら爽やかでしょうか。多分、現実に存在したら美人の部類には入らないな。クラスで一番かわいい子でもない。真ん中よりちょっと上、だけど何となく気になる…みたいなタイプかなーと思います。

百合って言われたくない

清ちゃんが入学して、一番はじめに友達になった九条雅ちゃん。「ごきげんよう」の挨拶が良く似合う優等生。雅ちゃんはきっと共学にいたら「ちょっと!男子ー、掃除さぼらないでよー」って言うタイプなんじゃないかな。

雅ちゃんが清ちゃんに対して抱いているほんのりとした恋心。私はそれを百合とかレズビアンだとかって思いたくないんです。決して、同性愛に対して偏見があるわけじゃないんですよ。きっとその思いは友情と人間愛と保護愛を足したり、引いたり、掛けたり、割ったりしたものでずーっと女子高育ちの雅ちゃんは、おっちょこちょいで天然な清ちゃんみたいな子に初めて会って、自分の気持ちがわからないいんです。恋もしたことないものだから、それを恋だと思っているんじゃないかしら。きっと、そのうち素晴らしい男性に巡り合うからね…とおばさんは教えてあげたいよ。お節介ですけど。

雅ちゃん、清ちゃんが平泉さんと仲良くしても、心配しなくていいんだよ。清ちゃんは友達に順番つけたりしないもの。みーんな大好きなんだから。でも、きっと本当の女子高ではそういうおっとりとした空気はないんでしょうね。男の子がいない分、わちゃわちゃしてるって聞いたことがあります。私も共学の高校から、女子大に行ったときすごく開放感があるって思いましたもの。ン年前の話ですけど。

家族が泣かせる

この「いい子」ばかりの日常を彩る家族の存在がまたグッとくる要素のひとつです。

「いい子」たちはやっぱりいい家庭で作られるのですよ。

四ノ宮くるみちゃんがパパに社交ダンスの部活動を反対される回。その理由が「異性とくるくるくっついて回るダンスは四ノ宮家にふさわしくない」らしいのですが、それに怒ったくるみちゃんが清ちゃんのお家にお泊りした時のこと。

清ちゃんのお家の何と庶民的なこと。おもてなしの料理はからあげ。それを取り合って弟とケンカする清ちゃん。清ちゃんのお部屋は、ベットの下にお布団を敷いたらもうキチキチ。くるみちゃんのお家は大豪邸で、パパは運転手つきのハイヤーで出勤です。実際ならすごく驚くはずです。きっとくるみちゃんはカップラーメンを食べたこともないでしょう。目の当たりにしたザ・庶民。私なら「せっかくですが、失礼いたしますわ」くらいのことを言って退散したいですよ。そこを「いいお家だわ」といえるくるみちゃん、偉いぞ。清ちゃんの提案のお手紙でコロッと態度を変えるくるみちゃんのパパは超単純。甘い甘い…と思いながら読んでいたけど、泣いてしまうんですよ。いや、泣かされてしまうんですよ。乙女たちの幼いまでの純朴さに。家族の優しさに。子どもたちを慈しんで育てた親という立場になったからでしょうか。

先生、好きです

この漫画には、悪い人が一人も出てきません。鈴蘭女学院の先生たちも私の涙腺を刺激します。これでもか!って具合に。

まず、英語の後城先生のありがちでベタベタなエピソードもほんわかしたいい話にまとまっているし、校長先生の若い時の秘められた恋愛話も全くの想定内で目新しいことがないにもかかわらず、どうして私は泣いてしまうのだろうか。それはひとえに谷川さんの画力によるところが大きいです。

この物語の最大の山場は、やはり清ちゃんの初恋の行方でしょう。なんとなくなんですけど、連載をはじめた頃は谷川さんもこういう展開にすることを考えていなかったような気がします。不定期の一話完結だったし。本八幡先生の登場も最初からではなかったし。

清ちゃんも、優しくて理解のある良い先生だなーくらいにしか思っていなかったと思います。告白も突然でした。告白してしまったことで自分の気持ちに気づいちゃったみたいなことってあるのかな。そんな心の流れを感じました。それにしても、女子高の先生って実際にはもっとモテるんじゃない?私が通っていた共学の高校でさえ若い先生はそれなりにキャーキャー言われてましたよ。

先生との恋愛を描いた漫画は星の数ほどあるけれど、先生は生徒に手を出してはいけません。当たり前のことじゃないですか。本八幡先生は立派です。素晴らしいです。清ちゃんを傷つけないように少し「君は特別だよ」って意味を持たせながら断る…全国の女子高の先生はぜひとも見習っていただきたいと思いますよ。

私は過去に一度も先生に恋愛感情を抱いたことはありません。それは幸運だったのでしょうか。うーん。

田中だから…

この漫画の舞台になっている鈴蘭女学院は、お嬢様学校だとお伝えしたとおり、通っているのはほとんどがいいお家のお嬢様です。一貫校であるため、お嬢様のほとんどが付属の中学校からの内部進学者です。

ここで、登場人物の苗字に注目してみましょう。

雅ちゃんは「九条」、くるみちゃんは「四ノ宮」、もうひとり同じ仲良しグループの千香子ちゃんは「勅使川原」、卒業生の英語の先生は「後城」です。お金持ちっぽい苗字のオンパレードじゃないですか。ちなみに、上にあげた苗字、私の長い人生でこれまで一度も出会ったことがありません。

それに引き換え、清ちゃんの苗字を思い出してください。そう「田中」です。同じ高校からの入学者、ちょっぴり最初はとっつきにくかったヤンキーでさえ「平泉」なのに。

クラスに一人はいた「田中」、ご近所の表札にありそうな「田中」、ギャグ漫画ですっかりお馴染みの「田中」…。これは決して田中さんを悪くいっているのではありません。

少女漫画のヒロインに普通「田中」を名乗らせませんよ。あ、これは少年誌連載ですが。でもね、私は「田中」だからこそ、清ちゃんのキャラクターが生きているのだと思います。清ちゃんをどこにでもいるような身近な存在として読者に親しみやすさを与えようとしたのではないかと考えました。

憧れのごきげんよう

私は、生まれてから今まで「ごきげんよう」という挨拶をしたことがありません。私にとって「ごきげんよう」は小堺一機のやっていたお昼のテレビ番組です。「なにがでるかな、なにがでるかな」っていうアレです。これからもきっと「ごきげんよう」は憧れの言葉で、日常で使うことはないかな。旦那に言ったらかえって心配されそう。

夜、寝付けない時に、本棚から『清清と」を抜き出すと、すぐに女子高生の時の気持ちに戻れます…なーんてことは全くありません。私のガサツな高校時代とはかけ離れた世界ですから。

これは、ある意味おとぎ話です。少年の理想を形にしたらこんな感じになるんじゃないかな。現実は「ウィーッス」って言ってる方が多いんじゃないかしら。それは、それで戻りたいけれど。若いっていうだけで、羨ましいんです。おばさんは。

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