母と娘とつながる縁
母が母になる前を知りたがる娘
自分が生まれる前、自分の父と出会う前の母について知りたいと思うのは娘ならではの考えなのかもしれない。
自分が生まれた時にはすでに母になり、父の妻である母にはいったいどんな青春時代があったのか、開けてはいけない扉のようにも思うけど、娘としては気になって仕方がない。
これが息子であったならきっと踏みこんではいかないと扉だと思う。だけど母と娘は親子であり親友であり、
時にはライバルや分身とも思える関係でお互いが特別な存在であり、それゆえ娘は母の母になる前を知りたがるのだと思う。
大変な時代の母の恋愛と現代の一見自由な娘の恋愛
一世代だけのなのに、一世代違えば本当にあらゆる事がすごいスピードで変わっていく世の中だと思う。
恋愛の仕方も出会いの仕方もまるで大違い。私も母の独身時代に着ていたモノや写真を見ると今とのギャップに驚く。ジヘのようにダッサ〜いと言いながらも心のどこかでほほえましく感じている···母の思い出に触れる時のそんな感情、分かる気がする。
国が違えど一世代前の恋愛は今と比べれば大変なことだらけ、1人に1台スマホをもっているわけでもなく、会う約束をとるだけでも一苦労。
家柄の格差や親の干渉が障害になる母の恋愛に対し、ジヘの恋愛は自由な環境ではあるのだが、その分現代人のコミュニケーションにおいての武器用さを表していると思う。
モノが豊富な時代、生活が便利な現代だけど、その分、誰かに自分の気持ちを伝えることがなかなか素直にできず、情熱を表すことも一筋縄ではいかない。
ジヘの憧れのサンミンも偶然の雨がキッカケで告白できたが、自分の気持ちをプレゼントのメッセージに隠してしまう運任せなところがあり、父のジュナと同じ詩を送ったところで積極性がまるで違う。
昔の方が誰もが自分の気持ちに素直になるシンプルさをもっていたのかもしれない。
雨から始まるそれぞれの恋は悲しい雨と幸せの雨に変わっていく
雨宿りしながらジュナの着ていたシャツをタオル替わりに借り、共にスイカを食べるジュヒとジュナ。サンミンのジャケットを傘代わりにかぶり、図書館を目指すサンミンとジヘ。
それぞれ雨によって盛り上がった恋心が一方で、別れを告げる悲しいシーンとなり一方では恋を実らせる最高の雨となる。同じ雨が悲しい結末を迎えていく母の恋模様と、ジヘの恋を実らせるキューピットとの両極端を表している。
雨の他にも川や蛍など母と娘のそれぞれの恋愛をリンクさせるためにでてくる自然の影像は素敵。
雨のイメージ効果を母と娘で全く逆に使ったのは、もしかすると顔はよく似た母と娘でも正確はまるで違う人間性である事を表現したかったのかと思う。
母役、娘役両方を女優ソン・イェジンが演じているにもかかわらず、またこの映画は過去と現代が行き来する事が多いのに、見ていて混乱しないのは母と娘の人物像がそれぞれはっきりしているからかと思う。
例えばジヒの前髪が浮くくらい勢いよく溜息を吐いたりする癖や、親友の為にひっそりと身をひく性格は父親のテスそのものである。
ジュヒとジュナの愛は形を変えて永遠に
ジュヒとジュナは結果的には別れてしまう。しかし別れてしまえば全てが終わるのか、
私はジュナの事を思うと泣けてくる。高校時代に友人の事を思い身を引いたジュナ、ベトナム戦争に出兵中も命をかけてでもジュヒのペンダントを拾いに行ったジュナ、帰還して再会したジュヒに数々の嘘をついたジュナ、自分の遺灰を川に流すよう友に頼んだジュナ、そんなジュナに対して私は涙を流さずにはいられない。
別れていようが側にいなかろうが、友やジュヒを思う愛にあふれているジュナ、その優しさに応えるために別れたジュヒ、そんな二人には何も残らなかっのか?
私は人生には色々な別れがあるかもしれないが人の思いや心は残る思う、誰かの記憶や心の中に。そして人と人、親と子にも見えない縁がまわりの人と張り巡らされているのではないかと思う。その張り巡らされた縁を介して人の思いはまた形を変えて受け継がれていくのだと思う。
思いのつまったペンダントは偶然にもジュナの息子のサンミンに受け継がれていた。けれど、それも偶然ではないのだと。
私は世にいう運命だとか、ソウルメイト、このような不思議な縁があるとは断定することはできないがあればいいなと願っている。
実際もしも自分がこどもの時にジヒが見つけたような母宛てのラブレターを見つけてしまったらとてもこんな風にほほえましく思ったり運命や縁を感じたりはできなかっと思う。ただそんな手紙を残しておいた母に対して憤りを感じたかもしれない。
しかし、大人になるに連れ色々な人との出会いと別れを経験をし、この映画を何度か見た今ならその手紙を書いた時の母や相手の気持ちを私の心の中にも大事に残してあげたいという気持ちになれると思う。
やはりそんな思いを共有できるのも、特別な関係の母と娘ならではなのかと、
もし旦那が昔の彼女の写真なんかを残していたらそれはそれでしっかりキレイさっぱり処分してやりたいと思うのだか···
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