ありそうで無かった 日本人と中国人の恋愛漫画 - 青みゆく雪の感想

中国人と日本人の交際への価値観はそれぞれどの様なものなのか

日本人と外国人の交際というと、アメリカやヨーロッパなんかの国の人とであれば、見た目にも国際的な雰囲気があって華やかだし、個人的に自分の人生では起こり得ないことだと思うので、多少の憧れはある。

しかし相手が中国人だとなると、見た目にも国籍の違いが分かりづらいし、華やかさも劣る。だが逆にいうと親近感が湧くし、現実的にも多い組み合わせでもある。

実際に私の周りにも中国人と日本人の夫婦が何組か居る。中国人の日本の滞在年数にもよるが、日本人と結婚した中国人は日本人に近い人格になっていると思う。

例えば、中国人の観光客が大きい声で喋っているのを目にするが、知人の中国人は「あいつら うるさいなあ」と言う。どうして中国人は声が大きいのかと聞いたところ、知人曰く、中国は車や人が多いから生活音が大きく、人と会話するときは大きい声で喋らないと聞こえないからどこへ行ってもそのボリュームで喋ってしまうらしい。

他にも、店の中など、どこでも気にせず食べ歩きするのを見て「あいつら きたない」と言ったり、知人の中国人は旅行客の中国人に対して同郷だからこそ厳しい部分があるようだ。

少し脱線しましたが、このように、自分の周りに日本で暮らす中国人が居る読者は、すんなり物語を読み始めることが出来ると思うが、居ない人はどうなのかな、嫌悪感を持つ人も結構いるのかな、と思った。

この点は正直、作品を読んでも分からない事ですが、他の読者の方々は、中国人と日本人の恋愛というこの作品の題材についてどう思っているのかとても気になった。

外国人に微妙なニュアンスまで言葉で伝える事はできるのか

これは国際結婚の夫婦をテレビなんかで見ると、よく思っていた。生まれ育った国が違えば、物事の良し悪しの違いも多いだろうし、おそらく細かい表現はせずに、割と大雑把な表現で成り立っているのかなーと思っていた。

作中では国の違いに加えて秋田弁まで出てきて、雪子と青くんはどういう答えを出すのか予想がつかなかった。

そんなときに答えのヒントになったのが、意外と悪い人では無かったチョビひげの奥さんと子供。奥さんが言うように、確かに子供は言葉がつたないけど、お母さんには言いたいことが伝わってたりする…と納得。

日本人同士でも意思疎通ができるかは、人によって違う。外国人との意思疎通もきっと、当人同士にしかわからない空気感があって、言葉を交わして分かり合えているんだなと思った。

なかなかこの問題の答えを言葉にするのは難しいと思うが、雪子が同じ方言を使う同郷の元カレに対して、同じ言葉を使っているのにわかりあえないなんて悲しい、と言ったときに、外国人とは言葉が違うし分かり合えるのは無理だよなぁと思っていたけど、確かに言葉同じでも分かり合えないときもあるじゃん！とハッとした。むしろなんで今まで気付かなかったんだろう、と思った。

相手の事を知り、考える事で、どんな事を伝えたいかがわかる、というのは人間として素晴らしい能力だと改めて感じた。

雪子と青くんが上手くいく理由は何なのか

ひとつは、雪子が中国人である青に対して、偏見が無い点だ。ものすごく良いイメージをもっているわけではないが、特に悪いイメージは持ってない。付き合う前は、中華料理が上手に作れて、まだまだ勉強中のつたない日本語のおかげで年下だと思っていたぐらいで、警戒心もあまり無かった様に思える。キレイな子なのに、派手な感じもしないし、キャピキャピした大学生っぽさもあまり無い。飲み会にも行かずにバイトをがんばっているなんて、なんでかなぁとは思っていたが、秋田育ちで、田舎の家族の負担にならない様にバイトを頑張っているなんて…。雪子の純粋で真面目な性格の理由が読み進めていくにつれてわかる。

偏見をもたずに、自己主張もそこまで無く、落ち着いて会話ができる雪子は、日本語で話すのがまだまだ下手な青くんからしたら、とても居心地の良い女性に思えたのだろう。

ふたつめは、青くんが頭のいい青年であった事だ。現実的にも、日本に留学してくる外国人は、頭のいい人が多い。そして勉強熱心だ。青くんもまさにそんな留学生だと思う。自分の伝えたいことは雪子にきちんと伝わっているのか？と自問自答する姿は感心してしまう。さらに秋田弁まで出てきて四苦八苦する姿も、彼が雪子とコミュニケーションを取るのに必死になっている様子がうかがえる。

今はまだつたない日本語で、幼い印象があるけれど、今後日本語が上手くなっていけば、頼りがあるし、勉強熱心で真面目だし、器用で料理も上手いし、すごくいい男性になりそうだと思う。今はまだ雪子の方が少しお姉さんっぽいけれど、彼を頼りにして寄り添う雪子の姿が想像できる。

ふたりは、全く違う性格で、お互い刺激しあっていくタイプではなく、どちらかというと似たもの同士。

お互いの気持ちを尊重しあえる素晴らしいカップルだと思う。