あえて言おう、「リアルじゃない」!でもそこにしびれる、憧れる。
このモヤモヤはなんなんだ。
モヤっとする!
西炯子の絵はデフォルメ強めのキレイな絵で見やすいし、
話がわかりづらいことは皆無。
西炯子独特の、心理的要素などもうまく絡まってキャラクターだってはっきりしてる。
でもモヤモヤするの!!
こんなに可憐な絵なのに描いてあるのはつまるところ不倫だ。真木のアプローチも正直、日の高いうちに話せるようなカラッと明るいもんじゃない。主人公は40歳だ。絵を描く人間が変わったら酷いことになる。例えば国友やすゆきとかが「幸せの時間」的に書いたらもう、自分のムスメにゃ見せられない!
しかし、いかにドロドロになろうとも、「姉の結婚」はキラキラした夢を語り続ける。
(例え変態チックであろうとも、)好意を寄せてくるのはイケメンで頭もいい精神科医。そして、ヨリは(40歳と言いつつ超細いしなんせ絵が可愛いから)当然美人。そんな二人が(真木が結婚してて不倫だから当たり前なんだけど)くっつきそうでくっつかない。
私はなんだ、どちらのスタンスでいればいいのだ。
少女として、美しい描画と演出を堪能していればいいの?
それとも大人として、このどギツイ人間関係を満喫すればいいの??
どっちにしたらいいもんですかいのう・・・?
身の置き場のないモヤモヤ・・・それが「姉の結婚」にはあった。
でもそれでも、読んじゃった。
それでも、「姉の結婚」は面白かった。
ブツブツ言った。そりゃあもう文句言いながら読みましたとも。
「髪にツヤはあるは鼻に毛穴もねえわ、こんな40歳いるか!!老眼鏡とかとってつけるんじゃねえ!」
「図書館仕事ってこんなキラキラチャンスあんの・・・!?」
「普段、妹からダメ出しされてるくらいダサいのに、自分で店行っていきなりきれいになれると思うなよ(「鮫肌男と桃尻女」じゃ大枚はたいて変身してたんやで!)」
もうクレームの嵐ですよ。
それはたぶん、自分がちょうどアラフォーの女性だから。我々は、自分の生活がどんなに地味かを知っている。実際の40歳があれだけ細くいるのは至難の業だということを心から理解しているのは、正にこのマンガの購読層なのだ。
夢見んな!不倫だの都落ちだのして、しょぼくれ加齢臭独女のハズだろ!!
幼馴染のイケメン精神科医にプロポーズされて仕事でもうまくいって華麗に変身して、まったくそんなことは大変けしからん!!
そんな奴いるか!
うらやましい!
夢みたい!
うん、
これ、少女マンガの醍醐味だわ。
主人公は「ソバカスメガネ」。設定では読んでる自分と同じイケてない感じ。しかし、絵はカワイイシし、いろんな設定がリアルじゃない。その上ちょっと笑っちゃうくらいのシンデレラストーリーを歩んでいく。当然カレシは超イケメンだ。
少女マンガとして見れば、ストーリー進行は極めて王道。そりゃ面白いに決まってる。
ただし、我々アラフォーの少女マンガです。
感じた違和感はすべて正しかったのです。アラフォー向けオトナな設定と、少女脳ドリーミングな演出。本来は相反する要素二つを同時進行しているので、そりゃあ簡単には咀嚼できませんとも。
しかし、そこを無理してでも両方とも同時に飲み下すことが「姉の結婚」の面白味なのです。リアルっぽいけどリアルじゃない、そして少女マンガってそういうものじゃん!
私たちは少女マンガが好きすぎなんだ。
今のアラフォーって、少女マンガを読んで読んで読みまくっていたと思う。
一昔前の40代であれば、その他さまざまな作業に忙殺されてマンガを読んでいる暇もなかったかもしれない。けれど世の中便利になってきて、マンガごとき通勤途中にスマホでちょいと読める。働いている女性ならなおさら、息抜きとしてマンガ読みたいなあってことはあるだろう。
少女マンガにはなにか変な脳内物質を出す作用がある気がする。本を閉じた瞬間、「はー、良かった~」としみじみ言っちゃうあの感じ。その満足感を得たいから、我々は少女マンガを読むのだ。
それでもねえ、この年にもなりますと・・・クラスの男子に告白されたり髪型変えてちょっとオシャレになったりしてる場合じゃないのよ。それじゃあ脳内麻薬出ないのよ。
不倫しても奥さんとキレイさっぱり離婚してもらえるとか
仕事で全国的に!かつ大々的に!注目されるとか
簡単に、更に一瞬で、整形レベルにキレイになるとか
そのくらいしてもらえないとねえ。
もちろん、エロ描写もある程度無いと納得はできない。まあなんだ、そんなにディープな内容だと困るけど、「そのくらい」ならまあやったことが無きにしも非ず、うーん、無いかもしれないけどどっかで読んだことはあるよ!くらいのさじ加減が良し。
「姉の結婚」は、そんなアラフォー女性の心をガッチリつかんだ作品と言えましょう。もとから少女マンガをあまり読まない私ですら、やっぱり楽しかったよ!夢見たよ!!
ところで、本当の意味での「少女マンガのヒロイン」だったのは、たぶん留意子の方だと思う。不遇な身の上と、最終的に受け入れてくれる家族、そしてハッピーエンド。本作のタイトルが「姉の結婚」なのも、留意子から見た世界・・・という意味であれば、ますます「少女のマンガ」で正しいと思う。レディースコミック・・・ではないと思うんだよなあ。
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