闇金融を営む者、闇金融に借りる者!
闇金に堕ちるのには、それぞれのドラマがある!
「闇金ウシジマくん」を視聴した感想です。
闇金ウシジマくんは、タイトルの通り闇金融を営むウシジマと、闇金に手を出すまでに堕ちてしまった債権者達を描くストーリーです。
原作マンガは、取材から得た情報を元に、実際に裏社会で起こっている出来事をモチーフにしてストーリーが作られています。
その裏社会のリアルさと、衝撃的な貧困のエピソードで、怖いもの見たさのような人気のある作品ですが、ドラマではいくぶん見やすくなっている印象があります。
おおよそのストーリーは原作通りなのですが、わたしはドラマの方が好きです。
同じストーリーでも、マンガの方が読んでいて怖い印象があり、読んだ後に何とも言えない徒労感があります。
実写の方がマンガよりもえげつなくない、というのは意外なようですが、変に怖く見えるような演出がないので、ドラマの方が見やすいのかもしれません。
ドラマでは、闇金融の債権者という最底辺の人間をテーマにしながら、それを悲愴感たっぷりに描くのではなく、非常に淡々と描いている印象があります。
もちろんテレビで流れるので、あまりグロテスクには描けないということもあるかもしれません。
しかしそれ以上に、「この債権者達は、現実に普通に生きている人達」なので、変に怖い演出を付ける必要がないのかな、と思いました。
特別な人間ではなく、すぐ身近にいるような人達なんですよね。
しかし、やっぱりそこまで堕ちてしまうのには、彼らに人間的な問題があるからです。
社会に適応できない人達が、どうダメなのかをよく観察しているな、と思います。
その部分の演出が、非常にうまいと思いました。
例えば漫画家志望のフリーターの池田は、漫画家志望にも関わらず、一度もマンガを投稿したことがありません。
何も実績が無いのに態度だけは尊大で、周囲を見下しています。
よくいるタイプのダメな人を、さらっと描いていると思います。
また、自身も彼氏も借金を背負っている久美子もいいですね。
彼氏の森田に度々暴力を振るわれているのですが、殴られた直後に平然と二人でカップ麺をすすっているシーンが、いかにも頭の悪い二人組という感じで良かったと思います。
実際に暴力の介在するカップルも、このような軽さがあるんじゃないかなと思ってしまいました。
また、個人的には、風俗嬢の瑞希に延々とダメ出しのメールを送ってくる、中年コンビニフリーターがツボです。ダメ人間のプロトタイプをよく思いつくなあ、と思います。
オリジナルキャラクター、千秋と一緒に闇金を学ぼう
この作品ではドラマオリジナルの「千秋」というキャラクターが登場します。
片瀬那奈さん演じる千秋は、高田の代わりに新入社員という設定になっており、視聴者は闇金融のいろはを、千秋と一緒に学んでいくことになります。
千秋は正義感が強いキャラクターで、ウシジマにも正論で向かっていくなど、原作には無い役どころです。
初めてテレビシリーズを観たときには、正直千秋がちょっとうるさいので、いらないキャラクターなんじゃないかと思いました。
しかし改めて観ると、やっぱりダークなウシジマくんの世界観がマイルドになるので、これはこれでいいのかな、と思いました。
何よりシーズン1はチュートリアル的な要素もあるので、常識的なキャラクターも必要な気がしました。
ストーリー終盤には千秋は退職してしまいますが、それがこのシリーズの締めにもなっています。
シーズン2以降は千秋はいなくなり、代わりに戌亥や屑原が登場します。
その引き際も良かったのかな、と思います。
シーズン1のウシジマは、まだちょっと若いイメージ
主人公を演じた山田孝之さんも、さすがの貫禄でウシジマくんを演じていたと思います。
山田さんは役作りをする際に、原作のウシジマとの身長差をどうするか、を最初に懸念したそうです。
わたしは観ていてウシジマの威圧感も感じましたし、違和感は無かったです。
ただ、やっぱりシーズン1を見返すと「若いなあ」という印象があります。
シーズン2以降では、あまりないセリフ回しが見られます。
例えば、第1話で自殺をしようとする池田を助けるシーンです。
ここでは高圧的に、池田に対しては「なーにやっちゃってくれてんの?」、野次馬に対しては「何笑ってんの?」と一喝します。
シーズン2以降はウシジマくんはあまり声を荒げず、ボソボソと話す印象があるので、ちょっと意外でした。
シーズン2以降は、怒り役は柄崎でウシジマはおいしい所だけちょっと喋る、みたいな印象があります。
これは原作のウシジマくんが、初期には普通のチンピラ風だったり、まだ感情が表に出るような描き方だったので、ドラマもそれに合わせたのだろうと思います。
まだウシジマが、連載初期の若い感じがしますね。
しかし、原作マンガでは笑いながら言っていた「奪うンだよ」というセリフを、苦虫を噛み潰したような、どこか徒労感のある表現に変えたのは良い改変だったと思います。
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