見どころが多いテレビスペシャル版
原作との対比が興味深い
この作品は銀河鉄道999のアニメがテレビ放送される中、3回放送されたスペシャル版のうちの1作である。
その後映画やOVAで大活躍し、後にメーテルの双子の姉であったという事実が発覚するエメラルダスが特集になったスペシャル版としては、貴重な作品だと言えよう。
この作品の面白さは、原作との対比である。原作とこのスペシャルアニメでは、大筋のストーリーは同じなのだが、加わっているエピソードや割愛されたエピソードの関係で、観る側の印象がまるっきり異なるのだ。
原作から感じる印象は以下の通りである。
・メーテルにライバルがいるという過去が発覚。
・メーテルの旅の目的がどうも怪しい。何か鉄郎に口外できぬ隠し事があるらしい。
・機械の体をもらうために鉄郎は列車に乗ったのだが、確実にもらえるわけではないという事実がメーテルにより発覚。(正直これはかなりの衝撃だと思うのだが、原作の鉄郎はあっさり受け止めている)
・偽エメラルダス(アンドロイドの部下)は、愚かだけどかなりメーテルの秘密に詳しい。
・エメラルダスは恐れられているが、何がどう怖いのかよくわからずじまい。
一方、スペシャル版で感じる印象は以下の通りである。
・メーテルにライバルがいただけではなく、なにやら機械島を守る任務を負わされている組織の人間だったらしいという過去の発覚。(機械帝国との関連を示唆?)
・エメラルダスとメーテルの友情がいかに深いかがわかる
・エメラルダスが残虐な海賊なのはわかるが、狙うのが宝石など、意外にスケールが小さい。
・ライバル二人の剣の腕が見事であること
などがある。原作がメーテルの過去をあぶりだすための手段としてエメラルダスが登場している風なのに対し、スペシャル版はエメラルダスとメーテルが互いに命をかけるほど懇意であったことが明確に描かれていて、主体はエメラルダスになっている。
アニメ版で旅の目的に言えない事情がある点に触れていないのは、メーテルのライバルの魅力を引き出すことに主眼を置いたためと思われる。
余りいやらしさを感じない全裸シーン
とても不思議なのだが、メーテルのサービスカットとも言うべき全裸や下着などのシーンがこのアニメには散見され、スペシャル版も例外ではない。
アンドロイドに生身の体を狙われるという、999では定番パターンの事件がここでも起きるが、手術台に乗ったメーテルは全裸であるにもかかわらず、卑猥な感じが全くしない。
当時、不良を扱った作品や、性的描写がきわどい物は、すぐにPTAが子供の視聴に耐えないと突っかかったものだが、この作品にクレームが来たという話は聞いたことがない。
スペシャル版の化石の戦士編でも、化石化した女性が全裸であったが、松本アニメの女性の全裸は、いやらしいというよりヨーロッパなどの女性の彫刻のような、美しいものの象徴であるように感じるのが不思議なところである。女性キャラの体格が妖精の様だからという理由もあるが、小学生も見ていたアニメにしては今思うと「全裸なのにいやらしくない」というのは不思議な表現で、後にも先にもこういった表現ができるアニメは出てこないだろう。
女性の秘密にツッコミを入れるな
原作とアニメで共通している点がある。それは、物語の最後にメーテルが鉄郎に、自分は当分死ねないと、妙なセリフを言う点である。自分がどういう人間なのか、どんな秘密があるのか、すごく中途半端な匂わせだと思うのだが、これを言ったメーテルの意図が分からない。
突っ込んでほしいのか、そっとしておいてほしいのか。100%自分のことを秘密にしたいのであれば、別に黙っていても良いような事なのだ。エメラルダスと姉妹であることが定着した今となっては、自由な姉がうらやましいとうっかりぼやいてしまったとも取れるが、当時はそういう設定がなかったため、このセリフだけはメーテルの謎を小出しにしたようになっている。
ここで思うのは、自分が鉄郎なら、「それってどういう意味?当分死ねないってどういうこと?」と間違いなく聞くであろうということだ。しかし鉄郎は、そうすることが無粋だとか、どうもメーテルにはアンタッチャブルな点があるらしいということを察知していて、あえてミステリアスな部分には触れないでいるのかもしれない。
そう思うと、鉄郎はメーテルにとって、非常に空気を読んでくれるいいパートナーなのかもしれないが、見る側としては若干「聞けばいいのに・・」というストレスも感じる。
トチローの持ち物に気づかないエメラルダス
鉄郎のマントや帽子は、エメラルダスの恋人トチローの母親から偶然にも鉄郎がもらったものだが、部屋に入ってきた鉄郎を見てもエメラルダスは全く突っ込まない。
眼鏡以外は容姿も似ているし、原作もアニメもトチローに言及する尺の余裕がなかったのかもしれないが、マントや帽子の持ち主に心当たりがあるというエピソードが入っていると、のちの劇場版がもっと面白くなったのにという惜しさを感じる。スペシャル版発表当時は、トチローの恋人設定はまだなかったのかもしれない。
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