一番の作品 - クジラの子らは砂上に歌うの感想

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クジラの子らは砂上に歌う

5.005.00
画力
4.75
ストーリー
4.75
キャラクター
4.75
設定
4.50
演出
5.00
感想数
2
読んだ人
3

一番の作品

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

  • 目を惹く美しい表紙とそれに負けない内容

私はよくジャケ買いというものをします。単行本を買おうと思った際に表紙や帯部分、作品名などでこれは綺麗だな、かっこいいなと思ったものをよく手にとります。ですがよくあるのは表紙は好みで買ってみても中を読んでみたら自分の好み、自分が想像していたものと違うということがよくあります。実際今まで何個もそういったことがありました。ですが、この作品は表紙も美しいことながら、背景など全てにこだわったイラスト、他にない凝った内容、キャラクターの個性など、全てが表紙に負けてしまわないものでした。細かすぎる絵は綺麗ではありますがたまに漫画としては読みづらいことがあります。ですがこの作品に関しては違うように感じました。背景、服やキャラクターの表情、全て細かに描かれているにも関わらず、読みづらいと感じたことがありませんでした。ここまで綺麗で読みやすく、私の好みにあったファンタジー物はないなと思いました。

  • 似た話のない個性のある内容

今まで読んだ漫画では、これはあの作品に似ているなとかこういった感じは他にもあったなとか、少し個性に欠けるようなものが多くありました。ですがこの作品には他にない個性があると私は思いました。泥の舟で生活する人々、サイミアという能力、能力を使える印、無印。今までにも短命の種族の話などはあったと思いますが、その短命の理由、その短命によって民がどのような生き方をしているのか、などは他には真似できない内容だなと思います。短命の理由になっているヌースファレナ、その舟に乗せられてしまった理由が感情を捨てなかったことであるなど、これもまた他には真似できないものだと思います。この作品は主人公チャクロの日記の内容を読んでいるかのように、語りの部分が結構多いです。私的には語りが多すぎると説明文を読んでいるように感じて物語が少しつまらなく思えてしまうことが多いのですが、この作品はその語りがあるからこそ面白く出来上がっているのだと思いました。他にはなかなかない面白さです。

  • 現実に当てはまる内容

感情を捨てた人形兵士アパトイアが泥クジラの民を醜い生き物だと思っている。けれどクチバが醜くて何が悪いと言ったシーン。これを現実に当てはめ考えてみて確かにそうだと思いました。皆が感情を持たず、ロボットのように仕事をこなし、家事をこなし、育児をこなす。そんな世界だったらきっとなにもかも退屈でつまらない人生になるのだろうと思いました。人々に感情があって、ぶつかり合ったり手を取り合ったり、これをやってみたいあれをやりたくはないなど思ったり、そういった感情があるからこそ楽しいと思える瞬間があるんだろう、とこの漫画を通して改めて思うことが出来ました。感情のない人形兵士アパトイアがオルカ達司令人の言うことに従い動き、危険な所へ飛び込んでいく。これも現実に当てはまることなのかなと思います。会社の上司からやれと言われたことはやらなければならない。それが自分に不利益になる事柄かもしれない。それでもやらなければいけないの仕事、会社というもの。無感情に人を殺していくアパトイアとオルカ達に立ち向かうチャクロたち泥クジラの民は勇敢で、それを私達は見習うべきなのでは思います。自分の意思をぶつける、上司という圧に負けない心を持つことが重要なのか思います。

  • 各キャラクターの個性

チャクロはハイパーグラフィアで書くことが止まらなくなる。サイミアの能力はイマイチでデストロイヤーとすら呼ばれてしまう。主人公なのに抜けているところが多く、強くはないというのがまた面白いところだなと思います。そんなチャクロに想いを寄せているサミ。まさかあんなにも早くサミが殺されてしまうことになろうとは予想していませんでした。また私が好きなのは、オウニとニビの関係性です。気づいたらそこにいたオウニ。周りは怪訝に思っていたのにそれを気にすることなく近付いていくニビ。ニビのような人間がこの現実にも沢山いたならばきっといじめなんていうものもなくなってくれるのではないかと思いました。サミがチャクロへ、ニビがオウニへ想いを託したシーンはこの物語の重要な部分だと思います。想いを託されたチャクロとオウニがこの先の大きな壁をどのように突破していくのかが楽しみです。アモロンギアの舟が来たあとの話では、マソオが亡くなってしまったことが一番の衝撃でした。ギリギリのところで間にあわずというのが特に辛いところです。マソオ関連ですとやはりマソオとクチバの関係性が好きです。マソオがクチバをおっさんと呼んでいるのが私的には面白いです。正直はじめはマソオのほうが歳上だと思っていました。重要な人物が亡くなっていくのはどの作品も悲しいものですが、この作品はそういった人たちがこれから先も生きていく仲間に自分の想いを托していくというところがなければ成り立たない、人の死という残酷なものが重要になっている、そんな不思議な作品だと思いました。

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圧倒される世界の中でも動機はシンプル

砂の海の上を漂う泥クジラこの漫画のすごいところは、なんといってもこの練りに練られた世界観。泥クジラの存在が何とも異質で、外の世界に何があるのかに恋い焦がれながら、隔絶された場所の中で彼らは彼らなりの“幸せの時間”をつむいできた。物語が進行するにつれ、それがわかるから…苦しいんだよね。知らなければよかったかもしれない。でも、真実を知ったからこそつかむものもあるかもしれない…。ヌースに支配されることなく、人が強く生きていくことのできる道が…。小さな島で暮らす住人はたったの500人ほど。それでも、100年近くもの時間孤立し漂流してきた中で、確実に子孫を増やしてきたんだよね。本当はもっと少ない人数だったかもしれない。印の者たちは若くして死ぬけれど、早いうちに子を設けたりしたんだろう。無印の者たちもまた、島の人々のささやかな日々を、ずっと見守ってきたんだと思う。島の外には何が広がっているんだろう。違う...この感想を読む

5.05.0
  • kiokutokiokuto
  • 202view
  • 3028文字
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