クンちゃん必見! - いろはにこんぺいとの感想

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いろはにこんぺいと

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画力
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キャラクター
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クンちゃん必見!

5.05.0
画力
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ストーリー
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キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

ごく日常の生活を、最高に面白く描く。

ここまで面白くする!?という位、もう最高に面白い作品です。くらもちふさこ先生の大ファンで、なおかつ殆どの作品を読破してますが、その中でも中学生の頃から一番好きな作品であり続けています。この作品は1982年、連載時私は中学生で、当時、友人の間でもこの漫画は大人気でした。あれから25年という月日が経ちましたが、文庫版を一年に一回は今も読み返しますが、本当に何度読んでも全く色あせない作品です。この物語は、幼馴染のチャコと達ちゃん、そして同じ社宅の色んな住人達と、その目の前にある彼女達の高校が舞台のお話。凄いのは、特にセンセーショナルな事とか、事件が起こったりとか、登場人物の過去に影があったり、謎があったり、そういうのがある訳ではなく、全編通して、何というか、読みながら穏やかな笑みが顔に張り付く感じの作品なんです。それなのに、本当に夢中で読ませるのです。どうしてだろう?と、今回これを書くにあたり、考えてみました。

とても難しい幼馴染同士の恋愛。

物語の主人公チャコは、幼い頃、達ちゃんが社宅に引っ越してきた時からずーっと好きなのですが、全く素直になれず、反対に意地悪ばかりしてしまう。でも、その意地悪は本当は好きな裏返しなのです。これって、実生活では反対パターンが多いのではないかな。男子が好きな女子に意地悪をするというやつです。このお話がものすごーく切ないのは、男子が好きな女子をいじめるのは分かりやすいんですが、女子が好きな男子をいじめるのは物凄く分かりにくいという点です。しかも、達ちゃんはハンサムで、頭が良くて、運動神経も良くて、女の子にモテモテの生徒会長へと成長していき、小学校でも、中学校でも、すっごく可愛い女の子と付き合います。チャコ自身はごくごく普通の女の子。とても意思表示なんてできませんし、しかも、達ちゃんはチャコに幼少期に意地悪されているもんですから、達ちゃんもチャコも、お互いが嫌い合ってると思いながらお互い言葉をかわす事なく、10年近くの歳月を過ごすのです。でも、この時点では、恋愛感情があるのはチャコだけです。達ちゃんにはありません。しかし、高校生になって、同じクラスになり、席が隣同士になり、大きな進展があるのです。

達ちゃんの心の推移。

何と言っても、これです。この物語の核はこの達ちゃんの心の推移の描かれ方です。それが実にゆーっくり、ゆーっくり、少しずつ、チャコを単なる幼馴染から、”女”の部分を感じていく。その推移がもう絶妙なんです。達ちゃんはカッコいいわ、頭が良いわ、運動神経はいいわ、リーダーシップはあるわの、スーパーマン調なんです。でも、全く嫌味が無いのです。その最高にカッコイイ奴の達ちゃんが長年の幼馴染だった、ごくごく普通の女の子のチャコを好きになっていく。その心の針のほんの少しずつの揺れの表現が、もうドキドキするのです。もっとチャコを好きになってあげて!と思わずにはいられないのです。チャコが意外にも女ですね・・・と始めて告白する相手が、同じ社宅に住むオジサンだったりして、そういう場面もまた、凄く良くて、年齢問わず、こうして年長者とこういう会話ができるって素晴らしいじゃないですか?

そして、クンちゃんです。

そう、クンちゃんです。この物語の最も重要な存在と言っても過言ではない、クンちゃこと、長崎君子の絡みがこの物語において凄く大きい。実はクンちゃんも達ちゃんが大好きなんですが、好きというか、達ちゃんになりたい願望が大きいんです。笑。もうめちゃくちゃ可愛いのです。何でも達ちゃんの真似をするのがもう面白いわ、いじらしいわで、チャコとの10歳以上年の差のある友達関係!達ちゃんとの絡みがもう最高なんです。彼女がページに出てくると、それだけで、彼女に注目してしまう。話の推移にもかなりカン違いで絡み、笑、それで随所随所で大きく話が動くんですよ。影の主人公と言っても過言ではありません。笑。

最後の砦の大きな岩がゴロンと・・・。

実は作品の冒頭でチャコの親友、おリョーちゃんが達ちゃんと付き合うのです。おリョーちゃんは全くチャコの気持ちを知りません。ちなみに、このおリョーちゃん、達ちゃんと別れる作品の最後で泣かせてくれます。チャコを全く恨まないのです。その辺りの描写が良い子ぶりとかそんなのが全く無くて、不自然ではなく、もう上手すぎます。もう一つ絡んでくるのが、チャコを好きな達ちゃんの友達のパーマ屋の高橋くん。笑。彼も結局友達に好きな人を取られてしまうんですが、「うらぎりもの~」って怒るんですが、笑、その後もチャコとも達ちゃんとも普通に接していて、それがまたおリョーちゃん同様、ちっとも不自然ではなく描かれている。こうして書くと、ドロドロの要素もあったんだな・・・と書いてて思う位、不自然ではないドロドロ関係でした。笑。で!ここが最も切ないのですが、チャコは達ちゃんに彼の引っ越しの前日になって、達ちゃんに告白するのですが、今まで、どうして達ちゃんが色んな女の子と付き合っても嫉妬しななかったか?それは、誰と付き合ってもこの社宅に、自分がいるこの社宅に達ちゃんは帰ってくる。私のところに帰ってくる。そのことで優越感にひたっていたのだと。でも、達ちゃんが引っ越してしまったらもうダメだと、何も望まないからそばにいて欲しいと感情を露わに泣く姿を見て、達ちゃんの心は大きく、最後の大きな岩がごろんと大きく動くのです。その瞬間、特に達ちゃんに反応があった訳ではないのですが、もの凄く印象的でした。

ラストが・・・。涙。

ラスト、チャコと達ちゃんがくっついてめでたし、めでたし・・・と終わりたいところですが、そうはいきません。達ちゃんに続いて、チャコも社宅を引っ越しする事が決まり、クンちゃんは、最愛の達ちゃんも、大事な友達のチャコも、失ってしまう事になるのです。しかも、クンちゃんは病気でお母さんを失ったばかり。最後、クンちゃんはチャコの家の子になって、チャコの引っ越し先についていくと言い、チャコの引っ越しの前夜もしっかり引っ越しの準備をして寝床につくんですが、お父さんに「もう一緒にお風呂に入れないんだなぁ・・・。」という言葉で、クンちゃんは思いとどまり、朝迎えに来たチャコに「ねむい」と言って布団から出ないんですが、チャコが去った後、玄関まで走って、額に手を当てて、チャコの去った方角を見つめるシーンがもう圧巻!!!もう、今思い出しても泣けます。涙。他にもクンちゃんの名場面は沢山あって、このラストシーンと、もう一つがチャコとお風呂に入るシーンです。クンちゃんのお母さんはクンちゃんに、ドレミ・・・ではなく、イロハ・・・で音名を教えていて、ハニホの歌を作ったです。お母さんの死後にハニホの歌でお母さんを思い出させるのが可哀想だから、ハニホの替え歌をチャコはクンちゃんに「好きなもの」に置き換えようと言います。いろはにほへまでは全部クンちゃんの好きな食べ物ばかりなんですが、ト。トは真っ先にもう決めてある「とおる」。それにチャコが「あったまいー。」というシーン。達ちゃんを一番大好きな10歳以上離れた友達同士のこのシーンも本当に印象的でした。ああ、これからもこの作品は私の中で絶対、一生色褪せる事はないな・・・と再確認しました。

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