タイトルだけのドラマ - Antique～西洋骨董洋菓子店～の感想

小野さん、ノーマル？

これが一番驚いた。小野さん、キャラ全く違いますよね？よしながふみさんによる原作バージョンでは、 小野さんはバリバリのゲイです。あらゆる男性が(ノーマルな人まで)が彼の虜となってしまうという設定で、学生時代から唯一なびかなかったのが橘だけ。という設定で、ドラマ化の時にはどうなるんだろう。と、ドキドキしてました。が、蓋を開けてみるとただ単におとなしいゲイっぽい男性。あれ？何か違いすぎません？原作を読んでいた方としてはかなりガッカリしました。いや、もちろんそういうシーンを期待していた訳ではありませんが、やっぱり比べてしまいますよね？よく原作ありきのドラマだと内容や設定の一部を変えられる事はよくあるのですが、あれって視聴者の事を考えての事なんでしょうか？それともベースだけが欲しかっただけなんでしょうか？小野さんだけではなく、橘さんや千景さんのキャラクターも微妙に違っていて残念です。何も原作通りとまでは行かなくても、ある程度の設定ぐらいは守って欲しかったです。何だかキャラクターの名前だけが同じで、全く別のドラマを見ているような気がしました。まぁ。このドラマが放映された2001年は今みたく寛容な時代ではなかったので、月9でゲイのキャラクターというのはかなり難しかったかもしれませんけど。

で、結局何だったの？

ストーリーは「天才」とまで言われた元プロボクサーのエイジが、選手生命をたたれて偶然「アンティーク」というケーキ店を見付ける所からスタートします。オーナーの橘は甘いのが苦手なくせしてケーキ店をオープンするという変わり者で、エイジは若き天才パティシエである小野が作ったケーキを一口食べただけで感動。彼に弟子入りしてしまうというサクセスストーリーになるはずなんですが、なかなかそうトントン拍子には行きません。修行のさなかに和菓子屋の息子である吉永や、失恋でダイエットに励んだ結果、大好きだったケーキが食べられなくなった珠美など様々な人と出会います。でも、この珠美の気持ちは女性だったら誰もが「分かる、分かる」と頷いた事でしょう。好きな人の為ならと何度ダイエットしたか。まぁ、私は珠美と違いすぐにケーキを食べてましたけどね。ですが、トラウマから抜け出す為に失恋相手に会った時に、相手は珠美に気が付きませんでした。と、同時に彼女のトラウマも消えていました。そういうものかもしれません。自分だけが気にしているだけで結局相手は何も気にしていないんだと思わせてくれたシーンです。更にスポーツ新聞の記者でエイジの事を追いかけている桃子や千景さんの娘まで現れて、あれ？メインはエイジの成長ドラマじゃないの？と思っている内に怒涛の展開です。何とエイジの父親もケーキ職人で、エイジが作るバタークリームは橘にある疑問を抱かせます。過去、自分を誘拐したのはエイジの父親？視聴者の興味は更にエイジから離れてしまいます。これで本当に良いのでしょうか？それにしても、この橘の謎ってちゃんと究明されましたっけ？何かウヤムヤで終わってしまった気がするんです。おまけにあの最終回は何だったのでしょう？何がどうなっているのかわからないままエンディングを迎えます。フランスに留学していたエイジが銀賞を受賞して帰って来ます。いやいや。これで最終回なんて、そりゃあないですよ。もっとドラマオリジナルストーリーでも違うエンディングがあったでしょう。何だか、気が付いたらもう終わっていたという感じのドラマでした。

キャラクターはピッタリなのに

主人公の神田エイジ役の滝沢秀明さんはエイジのイメージにピッタリでした。生意気なのに相手を不快にしない。人懐っこい笑顔が可愛くて、こんなパティシエさんがいるケーキ屋さんだったら繁盛間違いなしですよね。そして、「アンティーク」のオーナーである橘圭一郎役の椎名桔平さんは、あの何とも怪しい雰囲気が店のイメージとあっていました。ただ、御曹司という割には庶民的だった気がしますが(笑)。そして、若き天才パティシエの小野祐介役の藤木直人さんはパティシエの衣装がとても良く似合っていて、ケーキを作る時の真剣な横顔が素敵でした。ものすごく練習されたのでしょうが、本物のパティシエさんのようでした。そして、誰よりも原作通りだったのが小早川千景役の阿部寛さんです。実は千景役に阿部さんが良いと言ったのは椎名さんだったそうです。そして、驚く事によしながふみさんに意見を聞いた所、もともと千景のモデルは阿部さんだったそうです。どうりでピッタリのはずです。そして、吉永役のえなりかずきさんは和菓子屋の息子という設定があまりにもハマりすぎています。確かに、えなりさんと洋菓子ではイメージにあいませんものね。そして、もう一つの主役が劇中に登場する美味しそうなケーキ達です。辻調グループ校の方達が作ったらしいのですが、あまりにも美味しそうで、見終わった後、ケーキを食べたくなる誘惑との戦いが大変でした。