これからも大好きですっ！ - 今日からマ王! R OVAの感想

抜群の安定感

『今日からマ王！』が初めてテレビアニメ化されてからというものの、欠かさず見ていました。このOVAも、テレビアニメと同じスタッフの方なので安心して見る事が出来ました。時々、テレビが大ヒットすれと、映画やOVAでは全く違うスタッフになってしまう事があるのですが、この作品にはそういった部分がないので安心です。特にキャラクターデザインを担当されている工藤裕加さんの描く有利達は本当に生き生きとしていて、男女共に完璧です。小説の挿し絵をされている松本テマリさんが描くよりも、私は工藤さんの方が大好きです。そして、キャストの方も既に一体化しているかのようにピッタリです。普段はヘナチョコだけど、正義感が強く誰にでも優しい有利と、なぜか時代劇の口調で悪い奴らを「成敗」する魔王陛下としての有利を、櫻井孝宏さんが見事に演じ分けています。彼の声で聞く「成敗っ」は見ていてスッとします。そんな有利の婚約者であるヴォルフラム役の斎賀みつきさんは、その中世的な声でわがままプーなヴォルフラムそのものです。更に、有利の名付け親であるコンラッド役の森川さんと無口なグウェンダル役の大塚明夫さんは、さすがの落ち着きです。でも、私が一番驚いたのは、ギュンター役の井上和彦さんでした。だって、井上さんといえばあの美声から、演じるのはほとんどが二枚目です。その井上さんが「陛下ーっ」と叫ぶ度に思わず笑ってしまいます。そんな間抜けなシーンの多いギュンターですが、陛下が居ない所ではきちんと決めてくれる。そんな二面性を演じられるのも井上さんだからだと思います。そして、そんな彼らと違い参加の浅いサラレギー役の石田彰さんですが、「さすが」としか言いようがありません。途中参加とは思えないぐらい、自然にサラレギーでした。優秀なスタッフと、美しいキャラクターを描くデザイナーと、豊富な経験を持つベテラン声優達の手で作られているこの『今日からマ王！』は、数多くのシリーズ物の中でも、抜群の安定感がある作品なのです。

どっちかにしてっ

さて、そんな『今日からマ王！』のOVA作品ですが感想としてはやっぱり面白かったです。面白かったのですが、コメディで行くのか、シリアスで行くのかどっちかにして欲しいです。眞魔国で行なわれるドタバタを見せたいのか、それとも小シマロンの若き王であるサラレギーが有利の力を狙い近づいて来る話しを見せたいのか、どっちかにして欲しいです。何だかストーリーの順番がバラバラで、見ていてちょっと混乱します。眞魔国の話しでも、やたらと眞王の出番が多くて有利の活躍は目立たなかったのが物足りないし、小シマロンの話しでも、本当はコンラッドさんに注目が集まるべきではないでしょうか。どちらも物足りない気がして残念です。確かにこの作品の魅力はコメディとシリアスのうまい融合なんですが、出来れば小シマロンだけの話しで見て見たかったです。新しく現れた小シマロンの若き王であるサラレギーにも興味がありましたし、彼と有利の対決も興味がありました。ですが、短い話しの中ではサラレギーの本当の素顔もよく分からなかったし、有利にしても最後に彼を許しますが、なぜ許せるのかも曖昧です。あれでは、ただ単にお人よしなだけの魔王陛下じゃないですか。きっと有利ならサラレギーを許すだろうなと思いましたが、その許すだけの理由をきちんと説明して欲しかったです。どうしても、コメディとシリアス両方したいと思うなら、前半はコメディだけ。そして、後半はシリアスだけというのはどうでしょうか？これだったら、『今日からマ王！』の魅力を存分に伝える事が出来ると思うんだけどな。

彼にも愛を

私は、アーダルベルトと言う男が好きです。彼は、決してイケメンではありませんし、衣装も盗賊のようで近寄りがたいです。そして、なによりも彼はかなりのオッサンです。何もかも私のタイプではありませんが、彼の乱暴な言葉や態度の裏にある純粋な優しさが好きです。婚約者であるジュリアを失い、その魂を宿した有利を当初こそ憎んでいましたが、有利の中にジュリアの魂が入っていると確信した時、彼は全てを受け入れました。コンラッドの事を腹立たしいと思っているのも、実はポーズなんじゃないのかと思うんです。コンラッドとは、同じ女性を愛した者同士、分かり合える事もあるのでしょう。彼と決着を着けたいと言いながら、それは本心ではなかったのだと思います。そして、その気持ちはコンラッドにも充分伝わっていると思うんです。そして、私はそんなアーダルベルトの不器用な所が彼らしくて好きです。コンラッドのように優しい言葉を掛ける事が出来なくても、遠くからただ見守るだけの愛もあるのだと教えてくているようです。出来れば、彼にも幸せが訪れると良いのになと願わずにはいられません。それでも、やっぱりアーダルベルトのような男性はタイプではないのですけれど。