20代ってまだまだ子どもだ - 今日も明日も。の感想

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今日も明日も。

4.254.25
画力
3.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.50
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20代ってまだまだ子どもだ

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

純真無垢な言葉に心洗われる稜

ちかは15歳。高校1年生で、そろそろ16歳というお年頃だ。家族がみんな教師になることを強要されている複雑な家庭環境にあり、漫画家になりたいちかは家出を敢行した。姉のはるかも自分の好きなことをやりたくて家を出ており、そこに身を寄せていたっていうのもすごい。他の男兄弟たちは母親の言いなり・姉妹は自由奔放…やはり母親が強すぎる家系だと、女は強くなるのかもしれない。

ちかの将来の夢は漫画家になること。そこで、すでに漫画家として活動している稜のもとにアシスタント・雑用係として居候することになる。稜は性別を偽って、女性として少女漫画を描いているという人。ものぐさな人だけれど、今まで何とかアシスタントさんたちや弟の洸の協力もあり、何とか締め切りに間に合わせるというぎりぎりの生活を送ってきた。そこに稜の感性のそっくりなちかが転がり込んできて、漫画家になるための修業をさせてもらうかわりに、アシスタントの仕事を手伝うという状況へ。元カノのはるかの頼みでもあるし、もともとご近所さんで知り合いだったこともあって断れない稜。しかも、ちょっと意地悪してやろうってわざとめんどくさい課題を与えても、一生懸命取り組んでそのままぶつかってきてくれるちかに罪悪感と後悔でいっぱいに。次第に、彼女の無垢な言葉に感化されて、稜は自分の漫画家としての仕事も充実させていこうと決めるのである。

しかもちかには、少女らしからぬ肝のすわったところがあり、稜やアシスタントさんたちの心配をよそに、なんでも自分で解決してしまう、強さ・潔さがあった。大人たちは、ちかの人間的に尊敬できる部分に惹かれていく。

周りがどんどん歳の差なんて気にするなって言う

ちかは育ちざかりの女の子。しかも恋を知らないような女の子。それでも、稜への気持ちは恋だと自分で自覚した。若いからこそ、ぶつかっていくだけだし、友達のよっちゃんだって、稜と同級生の典と付き合っているから、どんどん迫るちか。それを、周りの体裁とか、自分自身の問題、ちかの家族を気にするあまり、稜はすぐにその手を取ることができなかった。この辺が一番もどかしいところだったね。学校の新米教師と生徒、くらいな距離感で、別に付き合っちゃっていいような気がするんだけど、ちかの姉と付き合ってたこととか、家族事情が複雑なこととか、大人ぶっていろいろ考えこんでしまった稜だった。

典はよっちゃんをちゃんと女として愛している様子で、稜はちかに対する感情が保護者のような気持ちなのか、恋愛の気持ちなのかでも悩んでいたね。作者さんの画風的にも、ラブラブな雰囲気はちょっと作りづらいところがあって、ドキッ…!というシーンすらほとんどない。それは降り積もって、いつの間にかどうしようもなくそこにある、といった感じの感情。手放すことは無理なのに、その形にどんな名前をつけたらいいんだろう。

稜がごちゃごちゃ考えまくって振り払っても、やっぱりちかは何度だってやってきてくれる。ほんと、ちかじゃなかったら無理だった。最初から最後まで、ちかが引っ張ってくれて、いつも稜を引き上げてくれていたなーと思う。周囲も、そんな稜にはちかがぴったりすぎるって言いまくったからね。もう本能に逆らうのをやめろってことよ。たった一人を幸せにできるなら、全部捨ててやれ。

漫画家の知識もふんだんに

漫画家の漫画だからね。どういうところが大変かとか、締め切り前のリアルな状況、どういう段階を踏んで漫画家への道を歩むのかなどなど、物語の中に自然と馴染んでいて上手だった。漫画家として気を付けるところって、ネームがどうとかっていうのもそうだけど、トーンやベタなどの細かなところもこだわっていかないと、読み手に優しい漫画にはならないんだなーと思った。確かに、絵がきれいじゃないとそれだけで一歩引いて見てしまうよね。絵がゆるくてもいいのは、相当ストーリーがいいか、ギャグメインかだろうから。少女漫画などのストーリーや背景・効果音・登場人物一人一人に気を抜けない漫画の種類では、より注意して描いていかなくちゃならないんだろう。

ちかが高校生として、漫画家として、稜のそばにいられる存在として…どれを選んでいくのか、どう歩んでいくのか、割と悩むと思っていたんだけど、ちかは常に揺るがず、稜の近くで、漫画を描いていることを選んでいた。それがまた健気だし、世の中汚れてるもんねって思い始めている20代にはストレートに響いたのだろうね。何となく、才能があって、漫画って描けるもののようなイメージがあったから、堅実に描いていく姿を見ていて、作者の絵夢羅さんがそういうタイプの漫画家なのかなと勝手に想像してしまった。

稜の感性で漫画が決まっていくわけで、そこを的確に判断できるちかがいれば、そりゃ百人力。ただちかがなりたいのは漫画家で、稜のアシスタントでもない。二人三脚というよりかは、お互いが高めあえる存在に近い。

どこまでもチカに振り回される稜

最終話では、18歳になったちかが登場。いつものツインテールをやめて髪をおろせばこれくらい美人さんになるのだ!編集社の新年会に登場したちかと稜。いつもより大人びたちかをどうにか守ろうと必死だった稜だったけれど、ちかからのキスにたじたじ…どこまでもちかが優位なんだよね、この関係。何歳になっても、稜はちかには逆らえない気がする。

そのうえ、ちかがバイトと漫画家としての仕事を掛け持ちしてひーひー言ってるときに、稜が思い切って永久就職の結婚を提示してみたっていうのに…独り立ちする!って…ちか、君は一人でも生きていける人間だわ。稜はそんなちかだから、ここまで自分もがんばってこれたと思っているし、2人が離れることはないだろうと思うけれども、やっぱりここまで振り回されていると、どこかで自然と消滅してしまうんじゃないだろうか…やはり、はるかとちかは姉妹だと思う。自立心が旺盛すぎるんだよね。

稜には申し訳ないけれど、ちからしいというか、いい終わりだったなーとは思うよ。作者さん的に、ラブラブシーンを楽しむ漫画ではないからね。心を通わせて、自分の道を歩いていく、強い主人公たちのお話になることが多いので、こんな感じでちょうどいいと思う。

アシさんが最後までアシさん

できればね、アシスタントさんたちの話がもう少し掘り下げられていたら、おもしろいかなーって思った。ずっと同じアシスタントさんが出ているわけだし、途中変なのを雇ってめちゃくちゃになっちゃった話もおもしろかったし、そういうリアルな事情も交えつつ、彼らの将来も詳しく知りたかったよ。だってアシスタントさんたちだって、漫画家になろうとしているわけで、いろいろな想いがあって稜のお手伝いをしていたわけだし、そこをラフにしてしまわずに、いろいろなパターンの気持ちを表現してくれていたほうが、答えが1つじゃないって思えてよかったのになーと思う。たとえそれが漫画から離れる道でも、貫き通す道でも、そこで一緒に働いたことが必ずどこかで役に立つ。それくらい一生懸命に、仕事をしている人たちだったんじゃないのかなって勝手に考えている。輝かしい成果を残す人の陰には、教えてくれた師匠がいて、支えてくれたスタッフがいて、家族がいて。一人で達成してきたわけじゃないのだし、周囲の人のエピソードこそ大事なところだ。洸に関しては、もはや見えていたからいいけどね。

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漫画家になる人に求められるものがよくわかる

違和感なく少しのシーンでその人の人柄を魅せる工夫1巻の表紙が細やか!人気漫画家、桃瀬稜のシスターコンボの本を持ったちかがいます。どんな話か読みたい。稜もかっこいいだけではなく、漫画家として仕事するときは、前髪をちょこんと大きな飾りがついた髪留めでとめているのがちょっとくせがある感じでいいです。その髪留めをやってきた幼なじみのはるかが奪い取り、自分の長い髪を留めるのに使っています。どれだけ稜と気心が知れているのかわかるシーンです。しかも元彼女だから、こんな風に気兼ねなくできるのだなと思います。みんなが勉強していた机を、洸が台ふきで拭いているシーン。洸の手にかつんと何かが当たって、返却するタッパの袋の中に落ちる。テストの朝、いろいろなハプニングに巻き込まれながら、やっとで学校に到着したちかがいつものシャープペンシルがないことに気がつく。ちかが自分の将来を左右するかもしれない大事なテストの日...この感想を読む

4.54.5
  • ひろひろ
  • 168view
  • 2687文字
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