漫画家になる人に求められるものがよくわかる
違和感なく少しのシーンでその人の人柄を魅せる工夫
1巻の表紙が細やか!人気漫画家、桃瀬稜のシスターコンボの本を持ったちかがいます。どんな話か読みたい。稜もかっこいいだけではなく、漫画家として仕事するときは、前髪をちょこんと大きな飾りがついた髪留めでとめているのがちょっとくせがある感じでいいです。その髪留めをやってきた幼なじみのはるかが奪い取り、自分の長い髪を留めるのに使っています。どれだけ稜と気心が知れているのかわかるシーンです。しかも元彼女だから、こんな風に気兼ねなくできるのだなと思います。
みんなが勉強していた机を、洸が台ふきで拭いているシーン。洸の手にかつんと何かが当たって、返却するタッパの袋の中に落ちる。テストの朝、いろいろなハプニングに巻き込まれながら、やっとで学校に到着したちかがいつものシャープペンシルがないことに気がつく。ちかが自分の将来を左右するかもしれない大事なテストの日。読者もそれは稜からもらった赤のシャーペンだとその時になって気がつきます。稜が朝一で家に持って行ったけど、ちかが出た後だったので学校まで持ってきてくれたというシーンです。稜も普通の日だったら、きっと持っていかなかった。テストの大事なとき+ちかが大事にしているのがわかっていたから持ってきてくれた。普段から彼女を観察していないとわからないですね。さすが少女漫画を描いている稜は目の付け所が違います。せっかく稜が持ってきてくれたシャープペンシルですが、ちかはこれを使わないでお守りがわりのようにして、目の前に置いて別のシャーペンを使ってテストを受けます。心の問題なのだということがわかり、落ち着いてテストを受けるちか。稜がこんな細やかな配慮ができるということと、ずっと前にあげたシャープペンシルがこんな形で活かされる設定を考えつくというのもすごいです。こういう細やかなシーンが漫画には必要不可欠なんだなと思います。この漫画には人柄がわかるようなシーンが少しずつ出てきます。それを上手に違和感なく入れられるのがプロなんだなと感じました。
これから漫画家を目指す人のためのバイブル
漫画家になりたい人には、今日も明日もはうってつけの教材です。漫画の描き方、漫画家さんの知られざる生活、デビューまでの道のりなどが描いてあります。こんな大変な生活なんだなと思います。受賞してもデビューするまでがまた大変な道のりだと知ります。受賞者が15人いると過程して、漫画枠が2~3本ということは、ネームを描いて描いて描きまくっても没になる可能性の方が高い。それからデビューしても6回なおしても没になったり、これは想像していたよりも厳しい世界。1回でへこんでいては漫画家になれないのだなと思いました。デビュー=漫画家になれたのではなく、そこからがまたスタートラインにやっとで立てたという位置づけ。とにかく結果を出して安定した地位を築かなければならない。漫画家って好きが最初にあって、それを継続するということが大事になってきます。好きだけど、継続できないこともあります。継続できる人が漫画家として成功を収めているのだなと思います。当たり前のことなんだけど、継続という言葉は、本当に難しい。継続できるかできないか、自分ひとりにかかってきます。仕事をする上ではどうしてもついてまわります。それをどんな風に活かしていくのかは自分次第。みんなの元に届くまでがどういった過程を経ているのかがよくわかります。編集さんの世界も覗いてみたいですね。漫画家さんから、原稿を受け取ってそれから先の世界を見てみたいです。新人のネームによる弊害とか知らない世界が出てくるとワクワクします。1冊1冊がそんな厳しい審査の目を通って、本になっているのだから、どの本も大切にしたいと思います。
親の言うことが正しいときもあるが、正しくないときもある
「親の言う事は全部正しいとなんにも不思議に思わなかった あの頃」という言葉にどきっとさせられます。私もそうだった。何にも疑わなかった。でも、自分の頭でしっかりと考えられるようになると、それがおかしいと気がつく。今日も明日もを開くと、そんな言葉から始まります。小学生時代は、親の言うことが絶対に正しいと思ってしまう。おかしいと気がつき始めるのは、中学生頃からです。早熟な子だと小学校の高学年で気がつくのかもしれません。話していることに矛盾が発生することに気がつくのです。稜が中学生15歳だったときに、7歳のちか。親の言うことが正しいと思えなくなったのが、小学1年生のときだったとすると、かなり早熟。でも、稜の言うことがちゃんと正しいと判断して、よっちゃんとつきあってきたというのがえらいです。ちかが親の言うことを丸のみにしないと判断して、ずっとやってきたのであったら、今日のちかができたといってもいいです。親にとっては扱いづらい子だったろうなと思います。それで洗脳しようとして失敗。はああ、怖い世界。でも、世の中には、たくさんこういうことがあるのかなと思います。親の影響は、何かしら今の自分に出ている。ちかは、稜ちゃんの影響が強く出ていた。あのときに稜に会っていなければ、あの兄ちゃんたちのようになっていたでしょう。そんなちかには、会いたくないです。素直なまっすぐな子、強い子であるから、周りの男性は、ちかの魅力にノックダウンされたのだろうなと思います。ちかが強い、折れない心というものは、毎日のお兄さんたちとのバトルによって形成されていったのではないでしょうか。恋愛に対しても夢に対しても強い。稜がちかに手を出してしまったら、問答無用でちかを連れ去られる。稜に冷たくされても、自分が彼の理想どおりではないと知っても、稜のことを思っていられるというのがすごい。今までどおりで家族のような存在でいいのでは?という稜に、家族的な好きではなく、ひとりの男性として好きだと告白しています。突き放されても彼のやさしさ、言ってくれた言葉の数々、それがわかっているからだと思います。稜はあっさりと諦める体質の持ち主。小さい頃からの境遇を考えればそうかもしれません。だからこそ、諦めずにずっと思ってくれる相手が必要だったのかもしれません。過去が現在の性格に影響している。それが少しずつわかってくる。その設定力にやられてしまいました。1巻を読んだら、やめられない!袋を開けてしまったら、食べきってしまうまでは、やめられないとまらないえびせん状態です。最後の最後まで読み切ってしまわないと続きの禁断症状がでる漫画です。
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