結局どっちつかずな感じ
西日本最強の女
園田音色は高校生。西日本では言わずと知れた最強の女であり、彼女は恋もできずケンカばかりの毎日だった。さすがにこのままではまずいと、東日本へと転校。これからいざラブ満載のスクールライフを始めよう!っていう矢先、ケンカしているトキオを成敗してしまう…おかげさまで普通科ではなく、特殊科に通うこととなり、音色のスクールライフは迷走を始めるのだった。
物語の中で、音色は最強の女キャラクター。ケンカでは必ず勝利をおさめ、誰にも負けないボディの強さを持つ。カゲトラが音色に対して言う「全身武器なボディ」という言葉。これは表現がおもしろくて好きだなーって思う。…まぁ見た目からはそんなこと一切わからないのだが。ただ恋をしたい!という気持ちだけで自分を誰も知らない地方にまで行くというスタートが、もはやギャグだった。全体の構成的にも、ギャグ割合が多いように感じられ、恋愛に関してはとても子どもっぽいような印象。小中学生くらいでちょうどいいかなーという漫画である。
女が最強!という漫画は何となく楽しいなと個人的には思ってしまうのだが、音色はケンカ以外がからっきしダメ。芯の強さとか、もっと心理的な部分での強さが感じられればまた違った印象になったかもしれない。長所はまったく物怖じしないところ・すぐ友達が作れちゃうところだろうね。正直で、まっすぐなキャラクターは、男女両方からの愛されポイントが非常に高いと思う。お約束で、音色がケガをしちゃうくだりもあったが、どうせなら最後まで最強がよかったなー…
嫌よ嫌よも好きのうち
この漫画に出てくるのは全部そういう恋だと思う。
まずは深と音色。音色はめっちゃ深にベタ惚れだったけれど、深はトキオに復讐してやろうって気持ちしかなくて、嫌々音色と付き合っていた。でも音色に関わるたび、嫌だと思っていた相手を逆に好きになってしまう。音色にとっては願ってもないことだったけれど、トキオと流れで付き合いだしてしまったこともあって、トキオを裏切れない!って気持ちで深から離れてしまった。実に惜しかった…。
そしてトキオ。音色のことが嫌いでしょうがなかったのに、音色と関わっていく中でベタ惚れに。トキオらしくガッツで迫っていく。音色が流れでトキオを彼氏だと言ってから、その一生懸命さで音色をオとしたトキオ。最初がモブキャラ的扱いっぽかったので、彼にとってはハッピーすぎのストーリーだ。
そんなトキオを愛してやまないケンケン。ゲイとしてその道を貫いているケンケンはむしろ素敵で、トキオが音色一筋になってしまってからは、生徒会の絢斗に迫っている。絢斗は拒否っているけれど、そのうちケンケンのテクニックにオチてしまうのも時間の問題かもしれない。
このように、嫌だー!!って拒否している相手と恋をしてしまう点から言っても、みーんなバカだったのかなって思うね。そしてみんなバカなりに、一生懸命恋してるっていうのは伝わってきた。
ド直球にギャグ多め
音色の西日本最強もだけど、学校がバカクラスという特殊科をつくっているのもずいぶんとギャグだよね。そして先生はすぐ泣いちゃうし、恋ばかりで全然勉強してないし…さっぱり学校生活ってものが主軸にないお話だった。特殊科への差別もすごくて、お笑いにしちゃってなかったら相当ひどい。
はちゃめちゃなところは、「マイルノビッチ」よりは全然楽しい。正直で裏がないし、結局は男たちの音色の取り合い。逆ハーレムをにやにやと楽しむことができる。いちファンとしては、深に転ばないだろうかとずっと期待していたんだけどね。トキオのことを好きだってちゃんと思わないうちに付き合い始め、徐々にトキオの良さにほだされていった音色であった。嘘でいいから付き合っとけ!って言えてしまうトキオ。このシーンだけはイケメンだったと思っている。音色とのお泊り・ラブラブシーンはもはやおふざけで、似合ってないよなー…深だったらしっくりくるんだけどなー…。
サブローさんとの掛け合いや、担任のおーちゃんたちも含めて、もう少し音色たち以外の話も盛り上げてほしかったなーとは思う。おーちゃんなんて、巻末四コマ漫画とかあったら絶対おもしろそう。サブローさんもまさにそのポジションがよく似合うよね。その重い前髪の先の君の瞳はきっと…超紳士的なイケメンかもしれないじゃない。おーちゃんだってそのメガネの先に輝いている何かがあるかもしれないじゃない。
虹花ちゃんに期待してた
やはり虹花ちゃんがいなかったら、音色の恋はまったくもって想像だにしない方向へと進んでいたことだろう。彼女なしには音色の恋のお話は成立しない。だからこそ、西のヘッド・トサカ頭に惚れられた虹花ちゃんのエピソードがもっともっとほしかったなー…なんて。物語のつくりを考えると、トサカ頭を盛大に振って、ケンケンに夢中になって走ってくれないだろうかと思っていたんだけどね。虹花ちゃんの「~だお?」が顔によく似合っていて、けっこう好きだった。彼女の隠れファンはかなり多いと思う。作中で、不特定多数にちやほやされたいタイプだと自分で言っていたけれど、そんな虹花ちゃんがいつかはゲットする、たった一人ってのが誰なのか?これが気になっちゃって終わりが不満で仕方ないのである。
作者さんの他作品を見ていても、やはり虹花ちゃんがダントツかわいいし、女子を極めた感じがして好きだなーって思うね。男子なら「アナグラアメリ」の帝斗だが、女子なら断然虹花ちゃんである。すべて自分の顔がいかにかわいいかをわかった上での行動、そして努力を重ねた美貌。そういう女の子こそ、バカになって追いかけるような恋をいつかする。そのドキドキは、読者から見ても最高だと思うんだ。
作者さんの最新作は「アナグラアメリ」だが、女の子たちの絵のクオリティ的には、「おバカちゃん恋語りき」のほうがいいと思うんだよね。ちょっと男の子たちに気合い入れすぎているのではないだろうか。
青春のすべてをかける
深にいつかは戻ってくる。そう期待して読み進めていた読者も多い事だろう。結局そうはならなくて、深は留学を決め、飛行機の搭乗口へ…そこに聞きつけた音色やトキオがやってきて…
どっちも選べないという決断に。
は?ってなったよね。しかもそのままあやふやな関係のままに終了を迎えてしまった。トキオ、本当に、本当にどんまい。最初の初恋の相手の威力って、相当なものなんです。音色はこれからもずっと君を困らせると思うよ。さすがに、「青春のすべてをかけても」って言ってくれる深のことを考えたら、ここで終わりになっちゃうのは音色的には無理だろう。応援している身としては、どうにか首の皮一枚つながった!って気分。深をずっと宙ぶらりんにしたまま、音色はトキオとの関係を進行していくらしい…ひどい女。
悲しい思いをしないようにまとめすぎちゃったんだよね。深を応援するファンも多すぎたし、ここで区切りをつけたことは、逃げというかなんというか…。だから小中学生向けだよねってなる。
トキオと音色の初デート、ツンデレな深の照れたところ、虹花ちゃんの美貌などなど。おもしろいなーっていう要素はありつつ、紆余曲折の深みはあまりなし。どうせならカゲトラがもっと引っ掻き回してくれてもよかったかもね。かるーく読もうって気分で、電子書籍くらいで楽しめばいいんじゃないだろうか。
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