落ちこぼれだから最後まで諦めない
個性は誰もが持っている
正義のヒーローに憧れる少年・緑谷出久(デク)。世の誰もが何らかの“個性”と呼ばれる能力を持ち、正義の味方・スーパーヒーローになることに憧れて学校に通っている。スーパーヒーローはいわば最高の就職先。彼もまたスーパーヒーローに憧れている人間の1人であった。
しかし、デクには生まれつき個性がなく、特殊な能力を一切持たない子どもだった。みんなにバカにされ、いじめもされ、天然パーマにそばかすというフォルムがますますダメキャラを演出する。デクに何ができるのか?って。デクには困っている人を助けたいという気持ちがしっかりと信念としてあり、考えるよりも先に体が動いてしまうくらい、心の優しい人だってこと、みんなわかっているよ!ひたむきなデクを見ていると、とても元気をもらえるね。
困っている人をほっておけず、自分は何の力も持たないのに、気づいたらもう助けに走っている。その心意気に心打たれて、伝説のヒーロー・オールマイトは自分の力をデクへ継承させることを決める。ここで、すぐにヒーローになれるのかと思いきや、そうじゃないのがまた…どんだけデクに試練を与えれば気が済むんだろう。オールマイトの能力に耐えきれるだけの体の強さがデクには一切なく、骨を折るは、血が出るは、毎回ズタボロ…。それでも着実に、一歩ずつ進んでいることは確か。どれだけ嘲笑にさらされようと、“諦めない”。デクの個性は、そういう心の強さであると思うね。
ヒーロー学校に入学を果たし、数々の経験をしていく中で、デクは自分とオールマイトの差、クラスメイト達との差に打ちひしがれてきた。でも、デクの培ってきたヒーローの知識、思考力の高さは、大事な場面でしっかり働いている。君は誰よりヒーローだ。
君の存在がいつも僕を奮い立たせる
ヒーローだって一人じゃない。仲間がいて、助けてもらうことがほとんどだろう。でも爆豪とデクの関係性は全然違う。絶対に最後まで分かり合うことはないんだろうなって思う。たいてい、相手のどこかは認めてあげて、ライバルだと言うもの。でも爆豪にとってのデクは、常に見下す対象なんだよね。デクがいるから、自分は常に高い位置にいる。俺は誰にも負けないし、常に頂点に君臨する…それが爆豪の心を支えている支柱らしい。今まで個性なんて一つも発動しなかったデクに、突如として備わったオールマイトのヒーローの力。なんであいつが俺の前に立つんだよ…!!この悔しさはもはや悪役レベルで高く、才能の塊である爆豪の唯一のウィークポイントでもある。その悪役的な思考を狙われて、幾度となく爆豪は悪にさらわれる羽目になる。
でも簡単に悪に染まらないのもまた爆豪のプライドのすごさ。デクの上に君臨し続けるためには、同じフィールドでなくてはならない。だから、俺は決して悪にはならない…その信念一つで数々の苦難を乗り越える爆豪には、もはや称賛を贈るしかないくらいだ。その自尊心の高さには恐れ入る。
デクにとっては、いじめっこの首謀者であり、誰よりも怖い存在が爆豪だ。だけど、君がいたから僕がある。いつでも君を追いかけて、僕は強くなっていきたいんだ…純粋なデクだって、爆豪が自分にしてきたことを許しているわけじゃない。決して爆豪とお友達になりたいってことではなくて、常に離れていても高めあえるような、切磋琢磨する存在として見ているんだよね。それがわかるから、胸が熱くなるというか。久々に少年誌で心躍る。
恵まれている1年A組の学生たち
オールマイトが弱っている…その噂を聞きつけて、悪の組織が何度も襲撃に学校へ訪れる。そのタイミングで、なぜかデクや爆豪たちの1年A組危険にさらされることが多く、実践訓練以上の経験をしていくことになる。
どんな仕事、学びにおいても当たり前だけれど、やはり自分にとってハイリスクなことをたくさん経験し、修羅場をくぐり抜けていくことほど、自分を成長させてくれることってないよね。命の危険の意味を知り、人を助けること、自分たちが傷つくこと、生きて帰らなくてはならないこと…いろいろなことを肌で感じて、学んでいく生徒たち。その辛い経験が、駆らなず自分たちのためになるし、辛さも知らずに同じ学びをした人間なんかと比べ物にならないくらい、分厚い人間になれるはず。
さすがにいつも危険にさらされているわけではなく、ヒーローになるための学校が舞台だから、学校イベントもしっかりストーリーに組み込まれている。何気ない日常、学校らしいイベント、1つ1つがヒーローとしての素質が試されるものであり、仲間をつくる大事さを伝える学びでもある。決して一人で達成できるものなんてのはなくて、誰かと競って、時に助け合って、手に入れていくものなんだよね。
永遠に存在するものはない
ヒーローが当たり前の世界で、ヒーローやってるのは人間なわけで。それは決して永遠に続くものではない。だからこそ、世界が平和っぽいときもあれば、若干怪しいときもあり、それを繰り返しながら、本当にちょっとずつ人は成長していってるんだよね。
ヒーローだって歳をとり、病気になってみたり、ケガをしてなかなか治らなかったり。最強なのではないからこそ、常に次の世代を育てて、仲間をつくっていくんだ。まだまだデクは覚醒しきってなくて、オールマイトの助言がなければ厳しいと思う。早くデクには強くなってもらいたいけれど、そんなに簡単に手に入るものじゃないからこそ、がんばれって応援したくなるものだと思う。
序盤の悪の襲来が早すぎて、その辺の展開もすごかった。ヒーローの卵たちを早くたたくことによって、早いうちから一人一人の意識が高まったことがいいことだった。そこから自分だけのことじゃなくて、仲間の事、うららかさん、飯田くん、轟くんと、スポットライトが細かくあてられていって、クラスメイトたちに愛着が湧いた。彼らはこれからもデクの仲間として、いい働きをしてくれるはず。一方の爆豪も、デクのライバルとしてだけじゃなくて、クラスの一員として輝いている。これから先の時代のヒーローを背負うのは自分たちだ!ってことがみんなわかっているから、意識高い系のヒーロー集団になることだろう。
どこかで歯車は狂うかもしれない
一生懸命がんばるほど、それが些細なきっかけで悪になってしまうことってあるよね。いつか、誰かが、大事なクラスメイトたちを傷つけることになるかもしれない。爆豪は有力候補だけど、他のメンツだったら泣いちゃいそう。ずっと仲良しでいられたら嬉しいけれどね。どこかで裏切りが出てくる気がしてならない。それに、途中でヒーローへの道を挫折する人だっているかも。…そう考えると、ヒーローアカデミアの日々はまだまだネタの宝庫。いくらでも続きは書けそうだ。
正義と悪は紙一重のものであり、簡単に決めれるものじゃない。ヒーローだって、悪があるから稼いでいるのだし、なくてはならない存在であるとも言えるよね。ヒーローの形が、最終回を迎えるころには何か変化を起こしているかも…そんな展開も楽しみだ。どんな形であれ、デクにはそのままでいてほしいし、何かが起きてしまっても、うららかさん、飯田くん、クラスの人たちに支えられて、解決していってくれるとありがたい。ラストまでには、爆豪がもう少し素直になっていてくれるとかわいいのだが…。デクがオールマイトの力を完全に使いこなしたとき、見た目までおかしくならないでくれればいいなーと思う。立派に卒業を迎えるときまで、じっくりと見守りたい。
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