よくあるすれ違いと王道のストーリー
特に特徴的なことはない
主人公の美羽は高校1年生。彼女に関してはよくある女の子のテーマを詰め込んだ感じになっていて、それがとっても庶民であるため魅力があまり感じられない。スーパーの特売が重要な美羽は、彼氏になんか興味がない…と言いながら、初恋の慶太との再会により恋心が再燃。恋に思い悩む女子高生へと変貌するのである。
美羽のスペックがあまり高くなくて、そんなにかわいい感じがしない。家事能力もおそらく並みで、お父さんと2人暮らしできるくらいにはやっている、といったところだ。それでも高校生で家計を考えて生きているのは実に偉いと思うし、実の母親が他に男をつくって出ていったエピソードもわりとそそる設定だと思う。美羽と慶太はモテ具合や見た目があまり似ているわけではないパターンのカップルであるため、当然横からとりに来る人はお互いによく似ているタイプの人なわけで…小林君といいアレックスといい、裏切りなく当て馬だった。幼なじみだけど、離れている間にお互いに変わったことがたくさんあって、それでもお互いの初恋だから、大切に歩み寄っていく。その行ったり来たりが切なく、微笑ましい物語になっている。
とはいえ、この漫画のすごく心ときめく名シーンって…あんまりないんだよね。全体として王道で、よくある要素で、お互いを好きな気持ちに変わりがないから、着実に歩みを進めている印象。何かあるたびにお互いが簡単に拗ねてしまい、拗ねたらご機嫌とりをして、ウザさも出てきて…特に美羽は顕著に女の子!って感じのウザさを炸裂させるので、ムカつくときもしばしば。慶太の家族問題は気にするほど重くなく、どうせ離れられないと思ったわ。
普通すぎるヒロイン
美羽のキャラクターの要素がとにかく普通なんだよね。家事をがんばる健気な子、恋愛というものに臆病な子、大切な人を傷つけてしまった過去のある悲しい子、明るく元気に一生懸命生きている子。そしてその要素の1つ1つ、どれも突出したものがないのが美羽だ。家事だって完璧なわけじゃない。失敗する時もあるし、悲しみが常に前面に押し出されているわけでもない。ただ、慶太の事は好きだし、諦めたくないからがんばるが、ウザさも際立ち応援できないときもある。典型的に女の子であり、独占欲も強いし、何かあれば涙を流し、そのくせ自信もないからいきなり離れていこうともする。頭の中でグルグル考えてないで、さっさと行動すればいいのに、動かず黙っている困った女である。
全体として、過去のトラウマにあまり深い考察やねちっこい恨み辛みを語らない漫画なので、お互いに大切だった幼なじみが3年間離れて、もう一度関係を再構築しようとする、という点に絞って描いている気がする。
麻里香との一件は、さほど危険も低そうだったし、なにより麻里香の極度のツンデレが楽しみで、ついつい楽しんでしまった感がある。しかしアレックスとの話では、堂々とライバル宣言されて、慶太のことわかってますアピールされて、見た目も中身もどこまでも大人なアレックスに対し、ジェラシーを燃やしまくった美羽がいた。そこで毅然と態度がとれるわけないってわかりつつも、やはりプレゼント払いのけるのって、相当おこちゃまじゃない?軽蔑されたといって泣き、あんたは私のものって泣けばいいの?っていう…慶太は美羽に惚れてるから許しちゃうけど、いい加減にして。
君の物語が好きだ
美羽と慶太の間に割って入れるほどの力は全然なかった小林君。だが君の事は読者がみな見ていたよ…!穏やかで、節約家で、優しく、鈍感で、天然で…マイペースな君が麻里香との恋をこじらせていることがかわいすぎた。麻里香との関係がこじれたのは何となく予想がつくけれど、どうせ登場するなら美羽のどのあたりに惚れたのかも語ってくれたら嬉しかった。遊園地での複雑なダブルデートではなく、実際に小林君と美羽が節約スーパー巡りでもやって、もっと慶太にやきもち焼かせてやるような展開にすればよかったのにね。そううすれば、麻里香ももっとかわいいこと言うキャラになったと思う。
「キミのとなりで青春中。」の中では、あまり次々美羽を誘惑するキャラクターが登場しない。もちろん、ちょい役とか外国人はいるのだが。ずっと諦めない小林君、強引な小林君も見てみたかったなーと思うのだよ。少しずつ加速するこの気持ち。どんどん大きくなって、歯止めがきかなくなる、それでも君は慶太くんのところへ走るんだね…僕にもそんなふうに追いかけてきてくれる人がいるのだろうか…?的なところで麻里香を登場させたいの。単純にぽろっと本心が飛び出てあれよあれよという間に見方が変わってしまうのではなく、大事なところで、確実に積み上げてきたものを発揮してお互いに向き合えるような…そんな展開の小林君が見たかった。
結局は、美羽と慶太のパターン、小林君と麻里香のパターンを描いていたことになるんだけど、もはや美羽たちはいいから小林君をトップにしてあげたいくらいだった。
幼なじみは自然体でいられるか
お互いを知っているから心置きなく過ごせるのか?それとも逆に気を遣って正直ではいられないのか?結局は幼なじみであろうとそれなかろうと、出会ってからの時間の共有が多い少ないにかかわらず、一緒にいて自分が自分らしく過ごすことができるかどうかが大事だ。そりゃー親しき中にも礼儀ありってやつで、自分以外の相手に対してはそれなりに気を遣った生き方ができたほうがいいのだと思う。何かあったら包み隠さずなんでも言うことが、そのまま幸せにつながるわけでもない。一緒に生きていく中で、重要なことはちゃんと伝え合わなくてはならないけどね。
この少女漫画では、“離れている時間”というものがネックになっているのであり、またそれを理解しあえた時に離れることを選択することもあるという…そういう話がしたかったんだろうと思う。死に別れることと、恨み別れることと、大切だからこそ尊重して距離を置くことは、どれも全然違うもの。物理的に離れれば、気持ちが離れていくこともあるだろう。でも慶太と美羽なら。3年離れていてもまた想いあえた2人なら、気持ちの通い合った後だからこそ、より強固に信じられるはず。
いろいろな別れがあることを伝える
特に特徴がある少女漫画ではないと思っているが、しいて表現するなら、“別れ”にもいろいろな形があるということだろう。美羽が実の母親と離れなくてはならなかったこと、慶太と気まずいまま離れてしまったこと、また再会したとしても一緒にい続けるために離れることを選択することもあるということ。いろいろな別れがあって、悲しいこともあれば、嬉しいこともあれば、決してそれ自体が悪い事ではないと教えてくれるのだ。
美羽と慶太がカレカノになれたのが早かったので、もう付き合ってるんだし良くない?って思うほど物語が停滞したこともあった。嫌なら嫌って言えよ!嫌われる前に!って思ってしまって、イライラしたこともしばしばあったと思う。慶太が親と血が繋がっていないっていう話に関しては個人的には引っ張った割にあっさりだったなと感じる。そこまで余裕がなかったのかもしれない。ぐっちとうえちんのこと、うえちんの実はカッコいいところをもっとふんだんに見たかったな…やはりサポート的人たちが充実しているほど物語は面白いと思うから。ハッピーエンドはもちろん嬉しい事であった。
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