すれ違いもすべては好きだからこそ生じる出来事
王道少女漫画でイベント静かめ
スーパーの特売しか興味のない高校1年生の美羽…よくあるわねー…めっちゃ家事能力高い、苦労人の主人公設定。実の母親は、美羽が小さなときによそに男をつくって出ていった。恋愛なんて壊れてしまうことのほうが多いんだって思い込んでいる。弱いところを持っていながら、それを周りに見せずに一生懸命に家事や学校にと取り組む女の子。そして、好きになるのは王子系で、主婦みたいに生活している人を「ババくさい」とバカにしそうな相手。だいたい横恋慕になるのは自分とよく似ている・価値観の似ている相手ですよね?そこもまた裏切りなく小林くんが登場しました。そこに幼なじみという要素が入って、安定の恋愛模様が勃発。幼なじみはずなのに知らないことばかりの2人。不器用ながらも歩み寄り、お付き合いが始まっていきます。王子系男子はアメリカからの帰国子女。うん、これもよくあるよね。よくあるものの組み合わせなので、これといって特徴的なイベントがないんですよね。それでも絵はかわいい系だし、お互いがすごく好きだという気持ちがよく伝わってくるので、優しい気持ちにはさせてくれます。
何かあるたび、すぐ拗ねちゃって怒ることが多い美羽と慶太。正直、ウザいなーと思うこともありましたね。あらゆるトラブルがそこから始まっているような気がしていましたから。慶太には自分と親が血のつながりがないとか、そういう暗―い話題もあったんですけど、不吉な序盤の導入のわりには割とあっさりとしていて、進路問題のほうがむしろ大きかったように思います。
美羽が究極庶民
確かに美羽は、家事をがんばりながらも学校へ通う健気なところがあります。でも、完璧ではないので、少し身近に感じられますね。料理はすごいうまいみたいですが、庶民!っていう内容だと思うし、休日に掃除を頑張っている様子もうかがえるけど、完璧な家事遂行ってほどでもない気がする。テンパっているときのほうがむしろ多く、失敗するときもある感じがごく普通の女の子な気がしていいなって思います。
物語の視点も、美羽の身の上話にあまり深々とは焦点を当てていません。3年間離れて暮らしていた幼なじみが、お互いをどう知り、どう歩み寄っていくのかを中心としているので、ベタな少女漫画展開です。
美羽の性格は、典型的な女の子で、独占欲もお見事。すぐ泣くし、それでいて自分に自信がないからちょっとウザさもある気がします。一生懸命なのはいいんですけど、グダグダ考えるよりも早く言ってしまえ!と思うんですけどね…一度目撃しまったものを浮気だ!と決めつけてしまうのがとても早い。若いね~…気持ちはわかるんですけどね。麻里香ちゃんとのバトルはとてもよかったです。麻里香ちゃんのツンデレがかわいくてね。ただ、アレックスさんとのくだりは嫌だった…プレゼントを手で払いのけるとか、ウブな女の子の反応じゃないような気がするのよね。いくら「あたしが彼女なのに…!」って思ったって、そういう女の子なら好きになれないよ…そう思ってしまったのは私だけではないのでは…。そこで慶太が軽蔑の目をしたのは当たり前ですね。
小林くん推し
小林くんがね、個人的には一番好きですよ。残念だけど、横恋慕の相手としては全然脅威にはならない雰囲気がしてました。穏やかで、優しくて、麻里香ちゃんの想いに全然気づかずにマイペースに過ごしている姿が何ともかわいらしい。美羽のことをどのあたりで知ったのかとか、そのあたりももっと語ってもらいたかったですね~…麻里香ちゃんとの親交だけでなく、ね。あんな序盤で引いたりしないで、焦らしてくれてもよかったのになー。美羽が小林くんと一緒にショッピングに行くとかさ~見たかったなーもっともっとシンクロ率あげて、麻里香ちゃんの惑う姿も見たかった…ただ、自分に好意のある相手とわかっていて出かけるのは小悪魔すぎるから、難しいんですけど。遊園地だけじゃまだ生ぬるい!もっと楽しくなってもいいのに!
新しいイケメンが次々出てきてハーレム状態になるよりも、行ったり来たりしながらでも関係性が深まっていってくれるほうが楽しいと思うんですよね。揺れ動きながら、少しずつ心が成長していく姿のほうが共感できる気がするので。簡単だと、大人が読むには物足りないものになってしまう。たくさんの男に好かれることなんて、そんなめったに起こることじゃない。というかはっきり言ってほとんど起こるわけがない。憧れよりも嫉妬がよぎるよ…美羽にどんな魅力があるんだよ!って思ってしまうわけです。がんばらずに自然体でいるだけで好かれるほど人生甘くないんだよ!それが通用するのは幼なじみってやつくらいなんだ!
素でいられる相手を選ぶこと
飾り立てるよりも、自然体でいること。正直な気持ちで気持ちを伝えられること。素でいられるって難しいです。すべてをさらけ出しすぎることも、関係がうまくいくとは限らないじゃないですか。「分かり合って、すべてを出し合って、なんでも言いあっていこうね」みたいなこと、そんな簡単に言えないんですよ。でも、何も語れないまま気を遣いあって生きていくことも息苦しい。どこまでが許容でき、どこまでが話し合いで解決できることで、どこまでが分かり合えないけれどそのまま残していけることなのか。まあいいかって考えられるのがどこまでかっていうのが大事なわけですよね~お付き合いをするということに限らず、何においても人間関係においてはそれが当たり前ですね。
慶太と美羽みたいに、幼なじみでいたとしても、見ていた姿が全部じゃない。しかも2人は3年間会っていない間に見た目もその他も成長したからね。知っているようで知らない人。それでもずっと忘れられない人。2人ともおちゃらけキャラが強かったので、あんまりシリアスにはならなかったけれど、幼なじみのカップルはどんな漫画でも楽しいですよ。慣れているから気づけることもあれば、慣れているから気づけないこともあって…できれば嫉妬がどうとかそういうことより、心の変遷をもっと丁寧にしてもらいたかったですね。そして、立てたフラグをあっさりめに仕上げられるとつまらなくなるので、もう少し複雑さがあってほしかったですよね。慶太の過去もなんか薄い。
悲しい別れじゃない別れもある
最終的に、やきもちを何度も炸裂させ、すれ違いながらも、慶太と美羽は絆を深め、慶太がアメリカのUCLAへの進学を考えていると知ってからも、心よく送り出すことを決めました。二度目の別れは寂しくなんかない。前向きに離れる時だってある。そういうことが言いたいのでしょう。美羽の母親が家から出ていってしまったこと、3年前の慶太が出ていってしまったこと。その別れとまた別の別れもあるということが示されたわけですね。そして結婚して…おめでとう!まさに王道の少女漫画だったわー。
なんとなく、くっつくのが早かったこともあり、ぐだった感もちらりと見えました。最近、少女漫画よりも少年漫画とか女性誌とか、大人の漫画を多く読んでいたこともあり、王道すぎる少女漫画は深い思考があまりないなと思いました。とても感情的なんですよね。ストレートで、思いのたけをそのままぶつける。わかりやすくて助かります。ぐっち&うえちんの話はもっとしてほしかったし、うえちんのワイルドなところももっと見たかった。きっとシリアスなときはもっとイケメン…だよね?
すれ違っても、好きであり続けるなら、まっすぐそらさず向き合えるなら、一緒に居続けることができるはず。サッとハッピーエンドで逆に良かったなーと思います。
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