誰もが夢見る憧れのSF代表作品 - 銀河鉄道999の感想

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銀河鉄道999

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.00
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誰もが夢見る憧れのSF代表作品

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

漫画媒体にふさわしい夢溢れるストーリー

宮沢賢治氏の銀河鉄道の夜のオマージュとも言える、鉄道で宇宙を旅するという夢のような展開のみでなく、その旅には謎の美女が同伴していて、旅先で色々な出来事に遭遇する。

まさしく連載漫画にふさわしい一話完結型のSFだと言える。この作品が古い作品なのにも関わらず、メーテルや鉄郎のキャラクターが愛され、現在でも食品やイベント、各種企業とのコラボレーションがされるほど人気があるのは、老若男女を超えた憧れや夢を、こんなに漫画という媒体で叶えた作品が珍しいからだと言える。

これだけ人気があるのに実写化されないのは、いくらCG技術が優れた現代といえ、この作品は漫画という媒体だからこそ「夢」が息づいているからだろう。

人間が演じることは不可能と言われているメーテルという存在が、何よりそれを証明している。

あり得ないことが起こる楽しさ

一話完結物の作品でも、ある程度現実世界というカテゴリーの中で話を進めていく以上、逃げられない背景や枠組みというのがあって、ある程度どういう展開になるか段々わかってしまう作品もある。おそらく著者自体もネタ詰まりになってしまう事もあるだろう。

例外的に国民的人気漫画のサザエさんやちびまる子ちゃん、こちら葛飾区亀有公園前派出所などは、ある程度世界観が「人間社会」と限定されているのに長丁場で愛されているのは、例外的事例と言える。

銀河鉄道999の飽きのこない底なしな面白さは、地球を離れることで、まず地球での価値観が全く通用しない星に着くこともあるし、人間の形を成していない生物に出くわすこともある。つまり、何が起こるか全くわからない点にある。

本来小学4年生の鉄郎が、銃を持っていること自体無法地帯だという証拠であるし、誘拐あり、窃盗あり、殺されかけたり、いきなり好かれて一緒に住もうと言われたり、本当に何が起こるかわからないし、何が起こっても許されてしまうのだ。それが宇宙を旅するストーリーの面白さでもある。

著者も手探りだったのでは?

連載物というのは、どうしても読者のリアクションに左右されやすく、著者の意向ばかりで好きなことが描けない側面もあるらしい。雑誌の方針などにもよるかもしれないが、999にも若干迷いのようなものを感じる時がある。例えば地球を離れる時など、メーテルが象徴ともいえる黒いコート以外のコートを着用していたり、タイタンでメーテルが拉致された際は、下着姿のメーテルの関節に怪しい線が入っていて、もしかしたら機械体?と思わせるようなコマもあるのだ。

著者も大筋で結末を決めて描かれていたと思うが、キャプテン翼の高橋陽一先生も試合の勝敗を読者の意見で変えたこともあるそうだし、一話完結型だからこそ、終着駅までの調整はいくらでもできたのだと思う。謎解きなどを楽しませるためにも、松本先生も趣向を凝らし、設定を検討、時に変更しながら描かれていたのではないかと察する。(事実、本作ではメーテルのライバルの扱いだったエメラルダスが、OVAメーテルレジェンドでは姉になっているのである)見ると相手が恐れおののく裸のメーテルの正体も結局読者にはわからずじまいだったが、松本先生ご自身もはっきり決めておられない可能性もあり、それもありではないかと思う。

成長しているようで何も変わってない

旅を通じ、数えきれないくらい様々な経験をした鉄郎だが、彼はそれで成長しているのかというと、連載初期から大して性格が変わってないことに気づく。

むしろ、鉄郎が自分の価値観で行く先々の星に影響を与えており、鉄郎本人は自分の信念は全く曲げていないように思う。彼には郷に入りては郷に従えという考えは基本的にないし、星の決まりだけではなく大人の恋愛事情にまでお節介を焼くのを見ていると、恐ろしい自己中心的性格だとも言える。

そもそもこの旅は、鉄郎を成長させる旅というより、元々ある彼の資質や信念を、確かなものにし、自信を与える旅だったのではないだろうか。

言い方を変えると、機械の体という目標を叶えるのではなく、諦めるための旅だったとも言える。鉄郎は、無意識に母が殺害された時点で、機械化人に嫌悪感があったのだから、なおさらである。

これだけいろんな経験をして、最初から最後まで自分であり続けた鉄郎の意志の強さには驚愕するが、それが鉄郎の魅力だと言えるだろう。

ナレーションの説得力

999は、巻物風のナレーションが特徴的で、松本零士先生の解説であると同時に、手法としては999より後の作品になるが、宮下あきら先生の魁!男塾の民明書房刊の書籍の引用に似たような現実味を帯びている。本当にこういう吟遊詩人が、こんな言葉を残していたのかと、子供心に信じていた読者も多いのではないだろうか。それが、メーテルと鉄郎の旅の軌跡を、まるで現実に確実に起こりうる未来として、信じてしまえる効果がある。そういう意味では、銀河鉄道999を読み慣れている読者は、魁!男塾も読みやすい作品なのではと察する

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