彼らの旅はまだ始まったばかり - ダブルアーツの感想

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ダブルアーツ

4.004.00
画力
4.17
ストーリー
3.67
キャラクター
3.50
設定
4.00
演出
3.50
感想数
3
読んだ人
5

彼らの旅はまだ始まったばかり

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
3.0

目次

手つなぎデートをやめたら死亡

主人公はエルーとキリ。どちらもキレのある顔をしていてなかなか好み。そんな2人が立ち向かうのは、なんと「トロイ」という病気…かと思いきや、トロイを使って何かをたくらむ悪い組織がいるらしく、そいつらと戦う…んだろうね。続きが出るんだったら。

「トロイ」はこの世界に蔓延しまくっている致死率100%の病気。治療法はなく、今のところの救いは、シスターというトロイにある程度耐性がある女性。みんな女性…だけなのかな。シスターはトロイ感染者の手に触れることで、トロイ自体を自分の体の中に取り込む(ドレイン)らしい。治すことはできないが、少しの間だが延命することができる。で、許容量オーバーするとシスターは死ぬんだと。病と闘うためにできることって、特効薬の開発くらいしかないじゃん…いったいこの冒険はどのように進むんだろうかと心配になった。

そうこうしているうちにエルーは許容量オーバーの発作を起こす。それを助けてくれたのがキリだった。そうだ、病気には特効薬か耐性を持つ人間の存在がキーになるのが定番。キリはトロイが感染しない、初めての人間。シスターたちの探し求めた、人間。キリはエルーとともにトロイをなくすための旅に出ることを案外ラフに決定。まぁ、エルーがキリから手を離すとトロイによって死んでしまうから、仕方ないんだけどね。誰にでも分け隔てなく優しいキリなのである。

はじめは、手をつなぎながらどうやって旅をするんだよ…て思ったが、割とラフに接触があればなんとかなるらしい。手を離した瞬間に死ぬわけでもなさそうだし。なかなか考えられた設定だ。

キリの能力の幅が広すぎる

とりあえず、キリとエルーの体の接触は大丈夫。どうにかうまいことやっている。キリはとにかく性格が良く正直者。自分に触れた人の免疫力を高めて風邪を治しちゃったり、手をつなげばつないだ人数分だけ倍の力で物を持ち上げることもできてしまう。ちょっと能力の幅が広すぎる…なのに最強には思えないんだよね。強さが表在化してないからだと思う。

世のため人のため、自分の手の届く範囲でできることを一生懸命やっている彼は、なんていい人!とは思う。エルー含め、シスターたちのお願いに答えるために、自分の今の生活置いといて旅に出てしまえるんだからね。

俺のこの力はこのためにあったのかもしれない

とか、そんなことすぐ言えないもんなのにね。キリも、自分の能力の由来を知りたいと思ったのかも。で、そこで即答したはいいものの、なんか旅の目的がすぐに明らかにならないから、読者には飽きられちゃったのかもしれない。

一方、エルーも十分すごかったはずなんだよ。戦闘能力は低くたって、最年少シスター・抜きんでたトロイ耐性と救済人数。すげー精神力と心の強さを持った人間がエルーなのだ。なのに、物語的にはすぐに上限値に達してしまった形なので、全然目立ってない…ダブルアーツのすごさは、2人の能力を生かすというより、キリの能力を主に活かす戦い方になっているので、エルーがもっとレベルアップしてかないとなー…と思う。シスター狩りの連中と渡り合えるくらいの力を身につけなければならないし、トロイの恐怖ともずっと闘わなくてはならないのだから。

トロイの秘密を考える

トロイの木馬っていうのは、巨大な木馬の中に兵を忍ばせて攻撃を成功させた、という神話だ。コンピュータウイルスでも、小さなファイルサイズのくせに、侵入したら一気に拡散するのがトロイだ。ダブルアーツの中でのトロイも、感染したら最後、死ぬまでそれは侵食をやめることがないウイルス。でも、正確には「死ぬ」のでなく、「消える」のであって、その病気自体を広めようとする悪そうな奴らがいる。

そう考えると、2つの説を思いつく。1つは、トロイは人がつくったもの・そして人を殺すのではなくてどこかへ導くものなのかもしれない、という考えだ。深く考えすぎかもしれないけど、一刻も早く広めたい理由が、単に人を消すことにあるのなら、ずいぶんと浅はかだ。人は数があるほど、利用価値もあると思うし。もう一つの世界みたいなものがありそうだなーって気がしている。

もう1つは、単純に人間が邪魔である、というパターン。人造人間でもつくって、世界征服でもやりたいってことかもしれない。結局は支配したいのは人間だし、そういうの、全然つまんないんだけど…

自分の中では1つ目が有力なんだけどね。そうじゃなきゃ、「消える」ことの意味がないじゃない。ウイルスで体爆発させたほうがまだわかりやすい。そして、シスター教会が実はすげー悪いとか、そういうのを期待する。いい漫画は大どんでん返しが最高だもの。妄想だけはどこまででも膨らむね。

打ち切りするなんてもったいなさすぎる

こんな序盤で妄想しまくったというのに、連載はすぐに打ち切られてしまった。理由は定かではないが、連載時期のタイミングが悪かったらしいということと、展開がゆっくりで飽きられたということをよく言われているようだった。続きも全然音沙汰なし。これだけ気持ちだけ盛り上がらせといて、がっくりきている。

無理矢理つじつま合わせをしているわけではなく、本当に「旅はこれから!」と言って終わっていく、一番唖然とするパターンだ。スイというキャラクターも出ておきながら、敵はいきなり強いし、キリの本領発揮も少なすぎるし、それぞれの正体がまったく明かされないまま不完全燃焼の終了。まったくもって残念。

トロイの病気の正体、シスターを狙う者たちの正体、そしてシスター自体の全容も含め、たくさん伏線はったのに、かわいそうに。展開が遅い…っていやいや、もっと遅いやつがあるって。ぽっと出でも、人気作に負けないくらいのクオリティが必要なんだろうね。単行本だったら全然まだイケる内容だったのにな。復刻とかどうでもいいので、続編を描いてほしくてしょうがない。こっそり連載再開とかできないんだろうか?

できればこんな風に進んだら最高

別世界へ乗り込むパターンになり、シスターの正体が何らかのキーになっていて、許容量の多いシスターほど必要。だからエルーが狙われるパターンで、キリは古来より最強の名を想いのままにしてきた戦闘民族の末裔…2人は時を経てようやく出会えた姫と家臣的なポジションにあり…って中二病すぎるかな…。中盤は過去と向き合うこと、そして1人で戦わなければならない試練も与えられながら、それを乗り越えての最終決戦はもちろんダブルダーツ。仲間はスイを含めて個性的なキャラを34人くらいで仕上がってたらちょうど良さそう。最終的に、トロイをなくす未来になっていけばベストだけど、そもそもトロイはあるようでないもののような気がしている。

いろいろ妄想したところで続きは出ないんだが。

だってさ、ダブルアーツという2人の舞曲なんて新しいじゃん。2人じゃなきゃ絶対戦えないとかなかなかないじゃん。もったいない。しかも1つそれっぽい闘いを出しておきながら、はい終わりってせつなすぎるでしょ。絵も好みだったし、これはおもしろい!ってなるときがもう2巻くらい続いたら絶対来る!と感じたお話だったんだよね。もはやいくら語ったところで無理な話ではあるが…いい漫画っぽいから、考察需要があるわけで。続編を望んでいる人はたくさんいらっしゃるのである。悔やまれる、の一言に尽きる漫画だ。

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続きをどうか教えてほしい

エルーとキリの物語世界に蔓延する病気、「トロイ」。感染してしまえば致死率100%であり、治療法も一つもなし。唯一の救いはシスターと呼ばれる、トロイに耐性のある女性たち。彼女たちはトロイを治すことはできないが、トロイ感染者の手に触れることによってトロイを自分の体に取り込み、延命することができる。「延命」ができるのであって治療はできないというこの残酷な病気に立ち向かい、シスターとして多くの人を救ってきたエルレイン(以下エルー)。彼女はまた今日も、病に伏す患者のもとへと足を運ぶ。ここまでは、病と闘うってどんな話にするんだろう…?ってよくわからなかったのですが、なんと1話目にしてエルーは許容量を超えるトロイを取り込んだということで、発作が起きます。それを救ってくれたのがキリ。彼はどうやらトロイが感染しない人間…!シスターたちがずっと探し求めてきた人間でした。キリに触れている間は発作が起きないことが...この感想を読む

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