続きをどうか教えてほしい
エルーとキリの物語
世界に蔓延する病気、「トロイ」。感染してしまえば致死率100%であり、治療法も一つもなし。唯一の救いはシスターと呼ばれる、トロイに耐性のある女性たち。彼女たちはトロイを治すことはできないが、トロイ感染者の手に触れることによってトロイを自分の体に取り込み、延命することができる。「延命」ができるのであって治療はできないというこの残酷な病気に立ち向かい、シスターとして多くの人を救ってきたエルレイン(以下エルー)。彼女はまた今日も、病に伏す患者のもとへと足を運ぶ。
ここまでは、病と闘うってどんな話にするんだろう…?ってよくわからなかったのですが、なんと1話目にしてエルーは許容量を超えるトロイを取り込んだということで、発作が起きます。それを救ってくれたのがキリ。彼はどうやらトロイが感染しない人間…!シスターたちがずっと探し求めてきた人間でした。キリに触れている間は発作が起きないことが分かったエルー。彼女は彼をシスターたちの中枢に連れていき、研究することによって、トロイに苦しむ人々を救うことができるのではないかと考え、2人で旅に出ることを決めます。このままでいけば、手をつないで旅をするっていいね~ってぐらいで、特に魅力もなかったんですけど、トロイを取り込むシスターたちを狙ったシスター狩りが世には横行していて、その組織の手から逃げ延びながら目的地を目指さなくてはならないというスリルが加わっています。なかなかいい感じ。殺されるかもしれないっていう恐怖、キリがいなければトロイによって消え失せてしまう恐怖、敵と戦いながら進むドキドキ感、男女で手を四六時中つないでいなければならない緊張感。いろんなドキドキが詰まっているので、楽しいんです。
世界観の魅力
手をつないだまま(正確には、キリの体に接触さえしていれば発作が起こることはない)日々の生活、旅、闘いを続けなくてはなりませんが、それほど窮屈感がないんですよね。うまくお風呂もトイレも済ませていますし、それほど恥ずかしい感じはありません。また、キリとエルーの性格がすごく良くて。応援したくなるんですよね。キリはとても正直でまっすぐで優しい。自分に触れると触れた人の風邪が治ったり、免疫力が高まったりするし、みんなで手をつなげば、繋いだ人数分の倍の力で物を運んだりできる。それを悪用することなく町の人のために使っている姿に好感が持てます。また、まさかトロイにまで効果がある能力だったとは思っていなかったキリに対して、エルーやその他のシスターが、勝手に期待をしまくり、穏やかだったキリの生活を一変させたにも関わらず、彼はまっすぐに前を見据え、「俺のこの力はこのためにあったのかもしれない」って言える…なんていい人…自分の力が何のためにあるのかわからなかったけれど、これからはそれを活かすことができる。キリにとっても、目標を見つけたということなのかもしれません。それにしたってポジティブすぎて心打たれます。
一方のエルーも、弱っちいのであまり能力は高くないと思っていたのに、実は最年少でシスターとしての活動を始め、抜きんでたトロイ耐性を持っていました。そして普通数百人程度でもドレインをしていれば多い方なのに、1000人を超える患者のトロイを取り込んできた…というところを読んだとたん、もう彼女の見方が一変しましたよ。なんて強い人間なんだろうと。そんな二人が手をつないだまま繰り広げるアクション、「ダブルアーツ」。ダブル主人公で、いったいどんな旅を始めるのか。ワクワク必至でした。
トロイについて考えてみる
ふと、なんでトロイっていう名前にしたのかなーって考えてみました。トロイというのは、十中八九、トロイの木馬というところから名前をいただいているんだと思います。ギリシア戦争の中での、トロイア軍を攻略するために巨大な木馬に兵を忍ばせて侵攻を成功させたというのが「トロイの木馬」と呼ばれているもの。多くの映画でたびたび登場するものですね。これはコンピュータウイルスの名としてもよくつかわれています。ウイルスとしてはファイルサイズが小さく、正体を偽って侵入してくるものだそうです。ひとたび実行されたなら被害者の同意を得ずにハードディスクやメモリの中にどんどんウイルスを複製させたり壊したり…やりたい放題やるわけですね。
このダブルアーツの世界の中でも、トロイはひとたび感染したらどんどん体を侵食し、死をむかえる病気として描かれています。正確には、死ぬというより消えてしまう。ただトロイを多く取り込むことができるシスター、そしてトロイがまったく感染しないキリ、いろいろな人がいるわけです。そうすると、トロイは自然に生まれた病気なのではなく、誰かがつくって感染を拡大させた可能性があるのかもしれない…という考えが浮かんできます。トロイを取り込んでくれるシスターも、結局いつかはキャパオーバーになれば消えてしまう。なのに、シスター狩りが行われる。トロイをもっと早く、もっと多くの人に広めるために、シスターみたいな人間は邪魔ってこと…?実は消えた人間は、消えていないとか…?妄想が膨らみます。
これからってときに終了
妄想が膨らみまくって楽しいときに、いきなり連載は打ち切りとなりました。諸説ありますが、ちょうど連載していたのが人気作ひしめき合う激戦の時期だったという話や、ダブルアーツの展開があまりにゆっくりすぎて飽きられてしまったという話が聞かれますね。いずれにせよ、ダブルアーツのファンだった人はけっこういたらしく、確かに自分もこの先いったいどんな展開が待っているのだろうってワクワクしていたので、残念でしかたありませんでした。
何しろ謎が謎のまま終わってしまったので、不完全燃焼よりも気持ちの悪い状況です。スイが闘うところだってもっと見たかったし、キリの正体についても明らかにされず、トロイという病気の正体や、シスターを狙う組織の目的など、あらゆる伏線をそのまま置いて去ってしまったのでね。展開は確かに遅かったかもしれないけど、出だしの入りって大事じゃないですか。どういう物語で、どのへんを主軸に、どのあたりでオチをつくるかっていうのが決まるから、作者の方が練りに練ったんじゃないのかなーって思うんですけど…人気がなかったから終わったのではないと信じたい…でも続きは全然描いてもらえない…ニセコイが流行っちゃったのが悔やまれる…復刻版がどうのこうの言ってましたけど、いや、続きを描いてくださいよ!!!と言いたい。
こうだったらいいなという考察
個人的には、トロイは人工的なものであってほしいんですよ。そうじゃないと、自然に作り出されたものだとしたら、対処のしようがないというのと、悪の組織・ゼズウたちがなぜシスターを狩るのかなど、そのあたりの理由と結びつけるには、すんなり行く気がするんですよね。また、キリだけが突然変異というのも嫌なので、キリの一族的なのがあると嬉しいかなと。スイも戦闘部族らしいし、こちらも過去編があったら超楽しくなりそうです。最終的には、トロイをなくす何かができてくれたらと思っています。対症療法的にキリが何かやらなくてはならない・エルーが何かやらなくてはならないのだとすれば、ちょっとかわいそうだから…個人的な希望ですけどね。
ダブルアーツの闘い方も、これからやっと二人の舞曲が見れる…!と思ってまったく見れなかったので、ここは想像しようがないのが悔やまれますね…あー続きでないかな~…
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