20年前の作品ですけど、「火輪」が一番好きな漫画です
大好きな神話を設定とした漫画
私は、ジャンルを問わず色々な漫画を見てきましたが、河惣益巳さんの「火輪」が一番好きな漫画です。
「火輪」は、「花とゆめ」で1992年~1997年の5年間連載されていました。1997年というと、今から20年前になるのですね。かなり前の作品ですけど一番好きな漫画なので、それほど魅力があって面白い作品だったなと感じます。
「火輪」はリアルタイムで読んでいた訳ではなくて、妻が単行本を全巻持っていたので、試しに読んでみたらはまってしまった感じです。
「花とゆめ」を本格的に読むきっかけとなった作品なので、私が読む漫画のジャンルが広がったありがたい作品ですね。
物語は、主人公のラン・リーアンの養い親で白真珠の化身である白玲(パイリン)が管理する竜王剣が盗まれ、パイリンに竜王剣を探し出すよう頼まれたリーアンが人界に降り立ったところからストーリーが展開されていきます。天界、人界で周囲の人の思惑や過去の因縁で起きる数々の出来事にリーアンが巻き込まれながらも成長していくというのが、メインストーリーです。まあ、リーアンが自分から関わっていくこともありますけどね。
舞台背景は道教神話の神々を元にしているので、四方将神や西王母などの神々が登場します。人界は中国が元になっていて時代は漢王朝かな。昔の中国を元にした程度で書いている感じがします。豪華絢爛で壮大な舞台背景ですけど、神話のことが違和感なく描けていると思います。オリジナルの解釈はあったと思いますけど、河惣さんの知識はすごいですね。中国の神話が好きなので、ワクワク感満載で読み始めることが出来ました。
主人公以外の登場人物も個性があって面白さ倍増
リーアンに起きる出来事がメインになっているけれど、主人公以外の登場人物のストーリーも複数展開されていて、登場人物の性格や背景が分かるので親しみがもてますね。登場人物のキャラが個性的で濃いなって感じです。
物語が色々と同時展開されていくと、メインストーリーがどれなのかわからなくなることがあるし、メインストーリーが段々横道にそれちゃって、どんなストーリーの漫画なの?って破綻することが多いけど、そういうことはなくてちゃんとメインストーリーに繋がっていて収まっているところがいいですね。「ああ、あの時の伏線がここに繋がっているのか」ってメインストーリーで疑問に思ったことを解決してくれていますね。
個々のストーリーが作りこまれているので、スピンオフ的な漫画を描いても楽しく読むことができるかなって思いますね。でも、過去の話は暗い部分が根っこにあるから読んでいて自分が沈んじゃうかも。
周りに翻弄されて辛い思いをしたのは、三真珠の精のパイリンと黒韶(ヘイシャオ)ですね。パイリンは子供が豎眼持ちだったので、次の天帝にすると言われて引き離されるし、竜王位を巡った争いで祐を殺されたなど悲劇を味わいます。漫画ではほとんど真珠に戻っていたし、人型にも戻っても正気を失っていましたけど。
でもなんだろう?パイリンは繊細な性格だけど、結構自分勝手だなって印象を持ってしまいました。祐に惹かれたのは真珠性の特性だとしても自分で選んだわけだし、謀反を起こした祐が殺されるのは当然で、いくら好きな人を殺されたからといって広をあそこまで憎む必要があったのかなと。まあ私は男なのでそういうのはいまいち理解できないですけど。
正気を失っていたとはいえ、あんなに可愛がっていたリーアンを気にしない、ほぼ無視なのも嫌でしたね。リーアンも拗ねてもいいと思うんですけど、パイリンを想う優しい子で片付けられた気がします。個人的には、幼少期以外のパイリンとリーアンの仲睦まじいやり取りが見たかったです。
ヘイシャオは、竜族や開を想っての行動だったのに、天界の人々だけでなく、信頼する竜族の広や昱花(ユイホウ)にも誤解されたまま展開を追放されたのは可哀そうだし同情しちゃいます。天界に復讐したいと思うのも仕方がないですね。ただ開がヘイシャオにハマり過ぎたのが誤算だったかも。私的にはヘイシャオには悪い印象はないですね。
パイリンが永遠の眠りについて、ヘイシャオが自分の命を自分のクローンの律(リュイ)の復活に差し出したのも、周りに振り回されて生きていくことに疲れたからなんでしょうね。ユイホウは長い間、珠玉の状態だったけど、環境や出会った人々が良かったお陰で幸せに生きていたから人型のまま生きていくことになったんでしょうね。
3真珠精は人の願いやイメージで性格や容姿が形成されるけど、私たちも周りの目や期待で自分を演じることがありますよね。これを読んでなんか嫌だなって、自分で自分の生き方やあり方を作りたいし、周りに振り回されたくないって思いましたね。
ストーリーが進むと登場人物が増えてきますけど、性格などキャラ作りがしっかりとできているので、混乱することはなかったですね。容姿も個性がありました。キャラ作りがしっかりとできていなかったり容姿が似ていたりすると、「誰だっけ?」って振り返ることがあるけども、「火輪」ではそれがなかったです。名前が少し紛らわしいかなくらいです。
なんだかんだ言っても河惣益巳さんの「火輪」は傑作!
リーアンが女体化した場面や戴望が子供のリーアンを可愛がる場面、リーアンとシンシアの結婚を祖父の戴洋すごく喜ぶ場面など微笑ましいエピソードも多くてほっこりしましたね。あと、ロンチーがユイホウを姉のように慕っているなどの設定も微笑ましかったです。
リーアンは実は凄かったっていう流れは、まあ今の漫画でもあるし、最近流行っている異世界系漫画の主人公の設定と同じなので違和感はなかったです。
ただ、四方将神の扱いが青龍・竜族の扱いが別格だったのが残念です。ほかの3つはほとんど絶滅状態だし、大した活躍もないので、バランスが悪いな~って思いました。もう少し3つの扱いをなんとかしてほしかったです。そうすると、話しが長くなるし書きたい内容とは変わってくるからああいう扱いなのかな?でも白虎なんて、竜族の眷属と言える金真珠のユイホウに拾われて育てられていますからね。扱いと権威の差が激し過ぎますね。
それと、あれほど貴重な豎眼持ちが最後には、ゴロゴロ出てきて4人になったのは豎眼の大安売りって感じで、あれほど豎眼持ちの開を恐れていた最初の設定はなんだったのって突っ込みたいです。
開と広のBL要素も入っているので、私は趣味ではないので「そこはごめんなさい」と正直思います。河惣さんの「ツーリングエクスプレス」はもろBLですので、それよりは全然大したことはないですけどね。少女漫画だからなのか、河惣さんの趣味なのか分かりませんけど、河惣さんの作品はBL要素が多いですね。
「火輪」の終わり方は早急だった感も否めなかったですが、落ち着くところに落ち着いたかなという印象です。ストーリーとしての切りもよかったし、ハッピーエンドで終わったので読み終わった時は幸せな気持ちになりました。全体的に読み応えがあって面白かったって満足感がありました。おかげで何回も読み返しています。
特別編でいいので、その後のリーアンとシンシアの物語を読みたいなって勝手に思っています。
色々と言いたいことを言ってしまいましたが、設定が壮大でストーリーの進め方も次が気になるって感じて期待感が持てます。登場人物の個々のストーリーがリーアンのメインストーリーを厚くしているので面白いですね。間違いなく河惣益巳さんの中で一番の傑作です。
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