現代の闇の部分を考えさせられる作品
いじめという戦いで変われた主人公
まず、主人公の椎葉歩は実は世の中の大半がこんな子なんじゃないかと思う人物。人との関わりが苦手で、周りの空気を読んで行動してしまう、いわば学校生活において安定された位置。一度この作品を読んだらどこかしら共感できる部分が出てくるのではないだろうか?
歩は上記のような性格だったが、それが皮肉にもいじめというきっかけで今までの性格が自分をしっかり持った芯の強い子に変わっていく。誰もができる簡単なことではないと思う。
気になったシーン、セリフ
歩とミキが不良集団に拉致監禁され、炎の中脱出しようとする際にミキが言った一言「この傷は生きる為に切ってるんじゃないのかよ」
その傷は歩が入学当初までたびたび絶望を感じては切っていたリストカットの痕なのだが、その一言で歩は我に返る。自分は死にたくて切っていたんじゃない、辛くても生きるために切っていたんだという歩の心中が伝わるシーンだと思った。
リストカットから考える時代背景、心の闇
リストカットは自傷行為の一つであり、一般的に若い女性に多い。
最近だと俗に言うコミュニケーション障害で人と関わることが得意ではなく、悩みを相談できる友達がいないのもリストカットに走ってしまう要因の一つと言えるかもしれない。
嫌なことがあった、日々の生活に苦痛に感じることがある、死にたいくらい絶望を感じる、理由は様々でつい切ってしまう。残念なことに、一度切ってしまうとそれが常習化してしまうケースが多い。歩も親友の自殺未遂をきっかけに切ることが癖になっていた。ここで歩の心の闇を紐解いてみる。
ちょっとやそっと手首を切ったくらいでは死ぬことはない。では何故そんなことをしてしまうのか?それはリストカットという行為が一つのストレス解消法になっているからではないだろうか。
生きることが苦痛で死にたくなれば、死ぬ方法はいくらでもある。しかし、そうではなく日常の中で嫌なことや苦痛なことを感じた際のストレスをどうにかしたくてリストカットに走ってしまう。要は一時の衝動で切ってしまうのだ。
歩はいじめというストレスを抱え駄目だと分かっていても衝動的に切ってしまう。そうすることで落ち着くからだ。
リストカットなどしたことがない人から見れば、気持ち悪いなど偏見を持ってしまう人がほとんどだと思う。切ってしまう本人も他人に見られたくない人がほとんどだと思う。歩もその一人だった。自分でおかしいことをしていると分かっているからだ。
もし、リストカットをした人を見たとしても、それだけ辛いことがあったんだとミキのように理解してあげれば、心の中で辛い思いをしている人が少しでも救われると思う。
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