悪の世界に足を踏み入れてしまった新人刑事の壮絶な1日 - トレーニング デイの感想

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悪の世界に足を踏み入れてしまった新人刑事の壮絶な1日

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
4.0

目次

ベテラン麻薬捜査官アロンゾの狙い

新人刑事が麻薬取締課に配属され、そこでベテランの刑事と組むことになるが、一緒に仕事をするうちに少しずつ本物の悪の世界に引きずり込まれてしまう。新人刑事のホイト役はイーサン・ホーク、ベテラン刑事のアロンゾ役はデンゼル・ワシントンが演じている。
最初のシーンでアロンゾとホイトが朝のレストランで会話するところでもうこの映画は絶対面白いという雰囲気が出ていた。このレストランのシーンだけで2人のキャラクターが完全にわかるようなセリフ、演技、演出になっているのだ。アロンゾは肝が据わった悪をも恐れぬベテラン刑事だということがわかるし、ホイトは正義感があって真面目な新人刑事だという事がわかる。
この映画の最初にびっくりしたのは、アロンゾ役のデンゼル・ワシントンが今まで見たことのない悪役を演じていたことだ。私はアロンゾが悪を倒すためにはなんでもするが根は正義感のある人間なのだろうと思って観ていたので、旧友を銃で撃ち殺したときはびっくりしたし、その時一緒にいたホイトはものすごく驚いていた。この映画のみどころの1つは、アロンゾが本当の悪党であることが映画の後半までわからないところだと思う。旧友を撃った時のアロンゾは完全に冷酷で「息をしろ、息を」と自分が撃った相手に言っていた。完全な悪人であったことがここではっきりとわかるようになっている。アロンゾはロシアのマフィアに狙われていて金が必要だった。それでなりふり構わず金をかき集めて旧友を殺して金を奪ったのだ。

アロンゾに騙されたホイトの危機

この映画で好きなところは悪党の演出で、アロンゾだけでなく黒人のギャングが住む町での打ち合いや警察のお偉いさん方の昼食会などの悪党ぶりがリアルだった。アロンゾの旧友の金を山分けしたアロンゾの部下の警官たちも一様に悪そうだったし中身も悪党だった。アロンゾはあの旧友が実は10年間も泳がせた薬の売人の大物で、友達でもなんでもなかったんだとか、汚いこともやらないと悪人を捕まえることはできないんだとかもっともらしいことを並べ立てたが、殺人を見たホイトが不正な金を与えようとしても受け取らないし仲間になろうとしないことから、アロンゾはギャングに金を渡してホイトを始末しようとする。ムショに入っている薬の売人の家族に差し入れすると嘘をついてギャングの家にホイトを連れて行くのだが、その家には普通の女の子がいるかと思えば入れ墨だらけのギャングがポーカーしてたり家の内装も普通の家だったりして、それが逆にリアルだった。トイレに行ったアロンゾがなかなか戻らず、執拗に誘われたホイトはギャング3人とポーカーをするが、そこでギャングからお前はアロンゾにはめられたと告げられるシーンがあるが、この映画の中で一番ハラハラした。ホイトも疲れているのか冗談で拳銃を見せてほしいとギャングに言われて拳銃を渡してしまうなど、どう考えても絶体絶命な状況だからだ。ここで最初の方のシーンでホイトがレイプされかけていた女子高生を助けたときのシーンとつながる。その女子高生が落とした生徒手帳をホイトが持っていて、その家のギャングが偶然にも女子高生のいとこだったのだ。それでホイトは偶然にも助かることになる。その時ホイトは浴室に逆さまに入れられて銃を顔に向けられ、まさに殺される寸前に生徒手帳がポケットから出てきたときに必死に自分がいとこの女子高生を助けたことを訴え、ギャングが殺すかどうかをためらっているシーンは本当にドキドキした。

復讐に燃えるホイトとアロンゾの最後

終盤は復習に燃えるホイトがアロンゾを追い詰める。アロンゾの家での撃ちあいと格闘シーンとなるが、ホイトがギャングに殺されかけたところがあまりにドキドキするシーンだったためかこの終盤のシーンは少し間が抜けて感じられた。ホイトはどうしようもないやつだったがアロンゾの子供はとてもかわいかった。奥さんも人のよさそうな人で、ひょっとしたらアロンゾも昔はそれほど悪くないやつだったのかもしれないと少し観る側に思わせる狙いもあるのかもしれない。ホイトがアロンゾの金と警察バッジを奪って警察署に戻るとき、2人を囲んでいたギャングや住人がホイト側についたときは気分爽快だった。誰もがアロンゾを心の中では嫌っていたことがここで伺える。アロンゾは見物している人全員に悪態をつき、皆あきれて帰ってしまう。そして最後アロンゾはロシアンマフィアにハチの巣にされて殺される。最後はロシアンマフィアの恐ろしさがもっと感じられる演出でもよかったのではないかと思った。
映画では描かれていないが一つ気になるのは、警察のお偉いさんたちも悪人だったわけで、そうなるとホイトが真実を話にいく相手によってはまた不正な扱いを受けるのではないかという考えがよぎってしまった。
とにかくこの映画で出てくるのはほとんどが悪者の中、唯一ホイトが悪に染まることなく正義感を貫くところがこの映画の見どころだと思う。

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