個人的には大好きなのですが……
鬼才・新房昭之の手によるゴシックホラー
まどか☆マギカ他独特の演出によって根強いファン層を獲得している新房監督が手掛けた、あまり日の目を浴びなかった作品です。
主人公の美大生、倉橋永莉は古物商でアルバイトをしており、売り物であるヴェネチアングラスに魅せられます。
永莉はそのヴェネチアングラスのなかに『コゼット』という少女の姿を見出しており、儚く、可憐な姿に陶酔していきます。
やがて永莉は『コゼット』に魅入られるあまりにガールフレンドよりもヴェネチアングラスを優先し、彼女を傷つけてしまうような行動に出るようになります。
果たして、人間よりも器物を尊ぶ永莉はどのようになってしまうのか……? というのが1巻前半の内容です。
全体的にふわふわとした感じが批判点
抽象的。この作品の良い点も、悪い点もその言葉に尽きるでしょう。
何が、どこで、どうなっているのか。物質的な見解は全然分かりません。
ただし誰が、なにをしようとしている、という点は明確だったりします。
いい意味で悪夢を見ているような作品、かもしれません。
淡々と、落ち着いた配色の中でバイオレンスなシーンがたびたび登場し、主人公がコゼットに近づけば近づくほどそれらのシーンが明確になっていく、というのが主人公の役割になっています。
果たして、コゼットを殺したのは誰なのか、何故殺されねばならなかったのか、そして、殺人犯の考えは如何なものだったのか……?
コゼットの肖像は、それらを巡る物語となっています。
映像よし、音楽よし
この作品は『見る』作品ではなく、『観る』作品になっています。
静かな画面に張り巡らされた奇怪な演出を目と感覚で味わうのです。
そして、音楽と技巧派声優による演技を感じるのです。
脳がそれらを許容した時、この上ない快楽が味わえる、というのが私個人の感想です。
ある意味電子ドラッグ的な作品かもしれませんね。
幻想的で浮足立っている……ながらもなかなか味わい深いです
他のアニメで似ている作品をあえて探すならば、少女革命ウテナやローゼンメイデンでしょうか。
それらの作品にヨーロッパの陰鬱な映画をプラスすれば似た印象になるのではないかと思います。
まどマギの原点、などと言われることもありますが音楽担当が梶浦由記女史という以外はあまり関係ありません。
ただ、梶浦女史の音楽は今作に異様なほどマッチしています。
自分のイメージとしては、格好いい曲を書かれる作曲家さんなのですが、陰鬱な作品も得意なのかもしれませんね。
新房監督作品特有の意味深な演出を観たい方は、ご覧になるのも一興かと思います。
どこまでが現実で、どこからが幻影なのか……それがこの作品の持ち味だと思います。
とりあえず、意味深な作品を観たい方は見てみるのもよろしいかと。
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