芸術性としてのアニメ作品
垣間見える芸術性
アニメ本編において、画風が切り替わるポイントがいつか存在します。通常は、一般的なアニメ作品を思わせる画風のアニメ作品ですが、デフォルメされた画風で描かれる場面があります。特に、不思議な絵の中の世界で展開される、感情の表現に特定されているように思われます。わざわざ画風を切り替え、人物の感情表現をするということは、それだけ強調していることの表れだと受け止めることができます。しかし、アニメ本編の物語としては、重要な位置付けの場面ではないように感じます。それなのに、敢えて強調した描写をする意図には考えさせられるものがあります。私が推測するに、一般的なアニメ作品とは位置付けが違うのではないでしょうか。一般的なアニメ作品は、物語とメッセージ性で構成されているものだと考えています。しかし、この「コゼットの肖像」というアニメ作品においては、一般的な作品とは別路線で、芸術性を求めて制作されているように感じられます。そう感じさせる要因は、必要以上に画風を切り替えデフォルメ描写される場面が多用されていることです。そして、デフォルメ描写されている場面が長いことが挙げられます。厳密に時間や場面数を計測したわけではありません。あくまで、私自身の体感的な感想に基づいて述べています。観る人によって、感じ方や受け取り方は違うと思いますので、ひとつの感想として受け止めてくれれば幸いです。また、アニメ本編から垣間見える芸術性として、挿入歌の存在を挙げます。アニメ本編の終盤で、1分弱に渡って、挿入歌が使用されている場面があります。この場面も必要以上に長いように感じられます。特にストーリー展開から、強調すべき場面には見受けられません。そこからもアニメーションの芸術性を高めるために、この場面を強調しているのではないでしょうか。
愛情が強すぎる
主人公、倉橋 永莉(くらはし えいり)のコゼットに対する想いの強さに驚かされます。肖像画に描かれたコゼットは生身の人間ではありません。そんなコゼットに、そこまで執着することに違和感を覚えます。また、一目惚れのようなプロセスで、 永莉は愛情を抱きます。ここまで想いが強いと、私自身は依存や執着という表現のほうが適しているように感じられます。永莉のこれだけの想いの強さがないと、アニメ本編の物語そのものが成り立ちません。ただ、実物の存在ではなく、肖像画であるコゼットにそこまで強い過ぎるのではないでしょうか。ただ、現実社会に当てはめて考えてみると、「二次元嫁」という言葉があります。アニメ作品の登場キャラクターに対して、愛情を抱く人が、そのキャラクターに対して用いる言葉です。少し違うのかもしれませんが、実物のない存在に対して、強い愛情をもてるというのは同じことだといえるのかもしれません。そして、生身の登場人物として描かれているヒロイン、真滝 翔子(またき しょうこ)の気持ちの強さも尋常ではないもののように思います。ただし、主人公の永莉とは違い、生身の永莉に対して片想いをしていますので、永莉よりは心情が理解はできる人物です。そして、 永莉と翔子の付き合いは長いようなので、 永莉に対して心配する気持ちも頷けるものがあります。ただし、片想いといえど、片想いの範疇を越えている気持ちの強さだと感じました。片想いの気持ちの強さだけで、コゼットがいる世界にまで足を踏み込めるのは、相当なことではないでしょうか。むしろ、想いの強さの度合いは、恋人や夫婦のものよりも強く、我が子を想う親の気持ちと同等のものすら感じさせます。永莉においても、翔子においても、行動から伺える想いの強さが印象的です。
アニメ本編における物語性
OVA作品で、3巻で構成されたアニメ作品です。アニメ本編は90分もあれば、全て観通すことができます。一般的なOVA作品としては普通のボリュームですが、物語の内容を考えると、90分という時間は使いすぎ、長すぎるように感じられます。無理なく60分以内にまとめられる内容だと思います。芸術性を意識した描写が多いことも、アニメ本編の時間を長くしていることは否めないでしょう。ただ、物語を見終えた後に残る印象は、これだけの時間を使って、これだけの内容なのか、というガッカリ感が強いです。時間に対しての内容があまりにも薄すぎるように感じさせてしまうのです。時間の無駄遣い感が否めないです。特に、1~2巻の内容の間延びしている印象は強いです。物語の展開させるスピードがもう少し早くないと、つまらなさを感じさせてしまうと思うのです。60分でまとめた方が、アニメ作品としての完成度も高くなったのではないでしょうか。ゴシックで暗い印象の強いOVA作品なので、間延びしてしまうことでのマイナス影響も強いものになるのだと思います。もし仮に、2巻よりも3巻構成のほうが儲かるという理由で引き伸ばされたのなら、悲しいことです。せめてそれなら、内容を充実させる方向で、脚本を考えてほしかったです。
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