トルパネーション
深層心理
人は誰しも無意識の内に様々な行動や言動を選択しているもの。
こんな話はありきたりで聞いたことのある話だ。
主人公の名越はそんな無意識に苦しめられた被害者なのかもしれない。
この作品を読むにあたり重要なのは個性である。
個性はそれぞれかもしれないが、突き詰めていくと似たり寄ったり
なのかもしれない。現に占いなどは同じようなことを、
誰にでも当てはまることを言う。
主人公名越
この作品での主人公名越は無意識で嘘をつく人間である。
では、彼が何故嘘をつくか考察してみよう。
それは自分の過去に持つ、圧倒的なコンプレックスだ。
何もなかったと感じていた彼には、嘘で作った仮面は、
とても魅力的で過去を埋めるには都合が良かったのだろう。
仮面なんて誰でも被って生きているもので、その厚さや種類が
違うだけで、、、そんな主人公の脆さや人間味が読者に
感情移入しやすくさせている要因だ。
車
自分がこの作品で一番謎なのは名越が車上生活している、
車に対しての愛着がどこからきているかということです。
昔に使っていた車なら彼は捨て切りたい過去になると思うんですが、、、
たぶんこれは、ナナコの存在が大きいのかもしれない。
唯一自分を見てくれた彼女のことだけは心のどこかで
忘れきれなかったのかもしれない。
伊藤学
この作品では主人公に次ぐキーパーソン的存在。
彼、、、いや彼女は嘘をつくというよりは、自分の本質を
隠すのが上手である。誰だって本当の自分を知ると自分の
嫌なところが露骨に見えてくる。彼女は頭がいい。
あえて自分の内面を客観的に語ることで本質を隠し、
なおかつ相手に自分の奥深くに踏み込ませないようにしている。
攻撃は最大の防御である。
トルパネーション
この作品の見所はなんといっても最後らへんである。
物語が進む過程で彼は見返りを要求することを、
隠さなくなったのである。それが如実にあらわれるシーンに
ナナミをナナコに仕立て上げようとして鬼になるシーンだ。
彼にとって自分を見てくれるなら相手が誰でも良くなったのである。
この気持ちはなかなか難しい。人間なら相手は選びたいもので、
だれでも良いなんてことはない。しかし彼は違った、相手にも
トルパネーションを求め、穴をあける。ただ、ただ鬼になる。
最後に
この作品を私はレンタルで借りたんですが、10巻まで借りて読んで、
衝撃と設定の新鮮なアイディアに虜になり、その日に返してまた、
最後まで借りて読みました。主人公と自分を重ねて読んでしまう、
そのくらい人を魅了する作品でした。
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