胸糞でもついつい読んでしまう漫画
目次
(レイプ被害者)男と女の不平等、不公平
そもそも、この話、レイプ被害者という共通点をもつ二人が関わる事から展開していく。同じ共通点を持つ二人だが、絶対的な違いが、男に処女を奪われた女と女に童貞を奪われた男ということ。男女の違いというだけだが、ここまで違うか、と思った。実際に二人が、恐怖の対象としている異性に感情をぶつけ合うシーンは非常に印象的である。
それまで童貞捨てれて新妻君はラッキーだろ、くらいにしか思っていなかったのだが、新妻君の空気に飲まれる発言。なるほどと思った。男性側からしたら丸呑みにされるような、飲み込まれる恐怖心なのか、と。女側からしたら犯される、侵略されるという感覚だが、のみこまれる、それも怖い。実際にそれから新妻君はEDになってしまう。しかし、結局お互いに感情をぶつけ合った際、美鈴は教師である立場を忘れ、泣きながら訴えるが、その美鈴の姿をみて新妻の男性機能が回復。恐怖の対象であった女性から、女は男に対して抵抗し、逃れる事ができない事、屈服するしかないこと、そして男性はその気になれば屈服させる事ができること、その事実と対面して初めて、結局はレイプ被害を受けていていもなお体は女を求めているという事だろう。男と女における性に対する不平等さを感じた。
(抜群な画力とリアルな描写)直接的なエロ描写はないが、それが逆に生々しい
基本的にバッチリ裸体が描かれたりすることはないため、青年漫画特有のエロ描写は少ない。だが、それ意外で表現される描写がかなりリアルなため、私はその辺のエロ漫画よりも圧倒的に刺激が強い漫画だと感じた。あまり直視したくない現実的な描写が非常に多い。
実際に私はとことん顔を歪めながら読んでいた自信がある。早藤に犯された時の処女膜が破かれる描写のところとか、その後拭いて血が付いたティッシュとか...本当にトラウマになるかと思った。怖すぎ。笑 女性はきっと想像して痛がっていたはず。ちなみに私の彼氏はへーそうなんだ。くらいにしか思わなかったらしい。こんなところでも感じる男女の違い...初めては信じられないくらい痛いんだぞ...後々出てくる山本という女性に関しては、開通工事が立ちバック...考えたくもない。
(全員どこか狂っている)登場人物全員が闇を抱えている
この漫画において、胸糞で、でも読み進めてしまう理由がこれだ。
正常な判断ができるキャラがいない。笑
見事に全員狂っている。ある過去の出来事をさかいにいびつに歪みまくっている。正直なところ、この漫画読んだとき、今日の夜うなされるんじゃなかろうかと思うくらい衝撃的だった。グロいわけでもなく、エロいわけでもないのに、背中が冷たくなるような感覚が何度もあった。誰一人として好感を持てるキャラもいない。唯一新妻君、彼だけはこの登場人物のなかで人を傷つけようとしたり陥れようとしたりはしていない気がするので、救われてほしいと思う。(同級生の女の子若干傷つけてるけど)
早藤に関しては嫌悪しか抱けないので、あいつが救われて終わりでもしたら私は漫画を燃やすかもしれない。ただ、今のところ早藤の歪みの理由が明かされていないので、これからが楽しみではある。
(何でそうなる)全員悪い方向に猛ダッシュしていく
見事なまでに悪循環の連続で。それぞれがこの泥沼から這い上がろうとしない。というより闇が深すぎて這い上がれない。美鈴と新妻君がやっと変わり始めるかなと思いきや、誰かが(主に早藤)全力で引き戻そうとする。基本的に早藤がストーリーのなかで最悪な屑野郎なのだが、それを取り巻く女達が見事なまでな馬鹿女、そして馬鹿女なので、早藤がどんどんつけあがることになる。早藤から抜け出せないことには誰も幸せになれないと思う。そこが一番の胸糞ポイントだと思う。美鈴に関しては、親友である美奈子を見下す唯一のポジションを早藤という悪魔に用意してもらえたことが、少なからず優越感に浸る事ができていること。それを建前にしても快楽に溺れてしまう自分が嫌で、許す事ができないらしい。結局は女である事が許せないといいつつ、女であるからこそ得ることのできる快楽に溺れてしまっているのである。
(ミサカナと早藤)征服させたい願望の持ち主
この二人が、対照的で類似していると思った。それは男女のわかりやすい違いを表している。
ミサカナはすべての男をコントロールしようと復讐心を燃やしている。女としての立場ならではの発想だと思った。精神的な征服である。女は男に力で屈服させることはできないが、新妻君がレイプされたとき感じたような飲み込まれる感覚、あれは精神的に征服させられたのだ。また、ここが女ならではのポイントなのだが、女は責任を一人でかぶる事はほとんどない。覚悟や責任を背負わせるのだ。実際に新妻を逆レイプした人妻は、「連れ込んだ」責任を取るように言う。これは、力では男に敵わない女だからこそまかり通る。早藤と美奈子の間に子供ができたとき、怯えた早藤にも当てはまる。女は男に大きな精神的負担を負わせる事ができる。それは男性からすれば言いようのない恐怖対象になり得るだろう。
逆に早藤は、処女を暴力で屈服させようとする。そしてそれは女には当然できない圧倒的な男女の力の違いからできる事だ。もちろん女は抵抗する事ができないのである。そしてなぜか早藤の周りの女はみな、徐々に快楽に溺れていく。なるほど馬鹿で汚い生き物と思っても仕方がないのかもしれない。ただ、そんな女からすべての人間は生まれてくるし、早藤の悪意に満ちた行為から、新たな生命が誕生する。そこで早藤がどうしようもない恐怖にかられ、すがった相手は馬鹿にしている女であること。
(先生の白い嘘)読んでみて
結局のところ、男も女も自分にないものを補って生きていくものだと思う。男は女にはなれないし、女は男にはなれない。それはすべての人間が分かっているはずだが、本当に解っている人は少ないのだろう。男は女が怖いし、女は男が怖い。私は女だから、どうしても女性のキャラクターに向けられた早藤の悪意にひどい嫌悪を覚えたし、それに言いなりになる女キャラにも軽蔑してしまうけれど、実際、女だからと男に力を使う訳はなく、強要している点があることには納得せざるを得なかった。
よくある少女漫画なんかは、女の幻想や要望の塊で、それに出てくる男性キャラは優しく、守るためだけに男としての強さを使い、喜んで責任を背負ってくれる王子様ばかりだ。
色々ダラダラと述べていたが、男女の関わりにおいて必要なのは、女としての立場、男としての立場をお互い尊重することなのだろうと思った。単純に、胸糞漫画でここまで考えた漫画は初めてかも知れない。トラウマになりそうになるが、続きも読んでみようと思う。
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