嘘、ブラフ、欲望。勝つのは誰だ - サンブンノイチの感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

サンブンノイチ

4.504.50
映像
3.50
脚本
4.50
キャスト
3.50
音楽
4.50
演出
3.00
感想数
1
観た人
1

嘘、ブラフ、欲望。勝つのは誰だ

4.54.5
映像
3.5
脚本
4.5
キャスト
3.5
音楽
4.5
演出
3.0

目次

サンブンノイチの男たちと美女

新宿は歌舞伎町に店を構えるキャバクラ「ハニー・バニー」の雇われ店長・清原修造、通称シュウ(藤原竜也)は店の金400万円を競馬に使ってしまい、オーナーの破魔翔(窪塚洋介)の制裁を恐れ、キャバ嬢のまりあの提案により喧嘩っ早くヤンキー上がりのボーイ・小島一徳、通称コジ(田中聖)と「ハニー・バニー」の常連客で焼き肉チェーン店のオーナー・金森健、通称健さん(ブラックマヨネーズ・小杉竜一)とキャバ嬢で元女優のまりあ(中島美嘉)と共に人生の一発逆転を狙い銀行強盗を計画する、見事成功し大金を手にした三人だったが、その帰り警察からの追手を逃れる為に逃げ込んだ「ハニー・バニーで巻き起こる嘘と騙し合い。最後に大金を掴むのは誰だ…。

原作は木下半太氏の同小説を映画化、監督は自作の映画「ドロップ」「漫才ギャング」でメガホンを取った品川ヒロシさんの監督作品第三作目。脇を固める俳優はその他にも窪塚洋介さん、池畑慎之介☆さん、本人役で哀川翔さんから壇蜜、相方の庄司智春さんなどのお笑い芸人も出演。嘘と欲望が渦巻く怒涛の二時間。この映画の楽曲提供をしている「→Pia-no-jaC←」さんの「Triad」から始まるシーンが何ともかっこいい。初っ端から引き込まれていき開始早々に一気に世界観に見入ってしまう。大金を盗むということがテーマの映画ではブラッド・ピットやジョージ・クルーニ他、超豪華ハリウッド俳優が出演している洋画の「オーシャンズ11」などがありますが、この映画では盗んだ後の騙し合いを描く。ラスベガスの有名カジノと日本の小さな銀行とでは天と地ほどの差がありますが盗んだ後を描いているというのは珍しい気がする。

ハイリスクハイリターン?

勇気と度胸さえあれば簡単に大金を手にすることが出来そうで誰でも出来そうな犯罪である銀行強盗。過去には人質立てこもり事件なども発生し悲惨な結果ともなったケースもあり、最近では金塊を詰め込んだバッグを盗んだなんて事件も発生、建物に入らない途中強盗では1994年に兵庫県にて約5億4100千万円を積んだ現金輸送車から盗まれ指名手配されましたが時効が成立。1998年にはこれも兵庫県にて約3億2千万円を積んだ輸送車が乗り逃げされた。7年後に時効を迎えました。ですが日本では2017年には銀行や郵便局などに押し入って現金を狙う金融機関強盗が全国的にも激減し、ピーク時の約8分の1になっているらしい。因みにピーク時は2001年。未遂と既遂を含めれば事件件数はなんと240件。ですが現在では防犯対策も抜群に高く成功率も低いハイリスクな銀行強盗ではなくローリスクの振り込め詐欺などが横暴し、近年では手口などが更に巧妙となり複数人の仲間と共に騙し取るケースが増えている。アメリカでは1973年から29年間「フライデーナイト強盗」と呼ばれたカール・グゲイジャンという男はたった一人で「統計学」を利用し30年間で50件もの強盗に成功し2億円も強奪した鮮やかな強盗もいたらしい。本人の度胸と運が試される銀行強盗よりも高齢で一人暮らし、金と寂しさを持て余しているお年寄りに息子・孫のフリをして心配させ金を振り込ませる詐欺の方が悪質だ。

お前らは悪党だ

主役の藤原竜也さんは故・蜷川幸雄さんにその演技力を見出され、蜷川幸雄さん演出の舞台「身毒丸」主役オーディションに合格。ロンドンのバービカン・センターでの公演にて「15歳で初舞台とは思えぬ存在感で天才新人現る」と絶賛され、翌年の凱旋公演も行われた天性の演技力の持ち主。今では「クズ役といえばこの人以外ハマる人はいない」と定評され男女共に人気高い。この映画でも金に困り店の売上金に手をつけて競馬をしてしまったことが事件の発端。安定のクズ…過去からクズな人生を送っていたが暇なバイト中に観まくったタランティーノ監督の映画に魅せられて夢は映画監督に、大金を手にして人生をやり直すことを夢見るシュウはクズでもやっぱりここぞという時には類稀なる騙しと脚本の才能を見せ、「ハニー・バニー」のオーナーであり宿敵・破魔翔を出し抜く。そのシナリオには圧巻。男に掘られるという侮辱を受けるシーンもありシュウがこの銀行強盗という危険な橋に賭け人生を本気でリセットしようとしている本気が分かる。そしてその宿敵・破魔翔を演じるのは狂気的なキャラクターを演じることで有名な窪塚洋介さん、ハリウッド進出まで果たした彼は今回もぶっ飛んだキャラクターを演じている。もう一人の強烈なキャラはヤクザさえも彼女には頭の上がらない「ハニー・バニー」の常連客でありレズビアンの謎の金貸し・渋柿多見子を演じるのは池畑慎之介☆さん。脳みそを食べることを何よりの楽しみとし美味なものとうっとりした顔で語る様子は吐き気がするほど生々しく一体どんな女なのかと怖くても知りたくなるリアルな意味でも人を食った態度を取る女・渋柿と破魔、並外れた狂気を持った化け物のような人間二人の激突をもっと長く観たかった。

ただ純粋に人生逆転のきっかけを掴みたかった美女と男たち、華麗なる逆転劇は一縷の希望が差しただけで幕を引いた、悪党と成り下がった彼らのこの先にサンブンノイチでも可能性があることを願う。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

サンブンノイチを観た人はこんな映画も観ています

サンブンノイチが好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ